技術者コーナー2006年12月までの記録


技術士は立場を明確にする(2006-12-3)
 肩書きは、その人の立場がある程度わかるようになっていますが、技術士に限っては、わかりません。従って、その都度、自分の立場を明確に説明することが必要です。
 理事と監事は兼任できない、取締役と監査役は兼任できない、試験機関は受験講座はできない、とかいうのが立場の問題です。
 米国ではカウンセラーは一種の資格ですが、コンサルタントをする場合には、カウンセラー資格を返上することになっています。複数の資格を持つことはできても、立場の異なる資格を使うことはできません。
 日本には、「二足の草鞋を穿く」という言葉があり、複数の立場を持つことがありそうなイメージですが、博徒が十手を預かることが語源で、あってはならないという意味です。


自由と自分勝手とは違う(2006-11-22)
 今月は海外に行っていました。外国に行ってはじめてわかることがいくつかあります。
そのひとつに自由の主張があります。外国では、何事につけても個人の自由を強く主張していると聞いていましたが、むしろ日本より控え目に見えました。
子供を厳しくしつけている外国では、「お互いに他人の自由を尊重しなければ自分の自由はない」ことが自然に身についているからだと思います。
 ところで、日本では、自分勝手な人が目立ちます。
本人は自分勝手だとは思わず、個人の自由だと思っています。
ただ、明確にわかることがあります。自分勝手な人は必ず子供を甘やかしています。


 技術問題講義スタイルのポイント(2006-10-1)
 話の仕方は、講演、講義、座談等があります。人によって得意不得意があります。私は人数(1人でも)、また場所(海外でも)を問わず、講義スタイルが多いのです。そのポイントは、3つあります。
 その第一は、言葉遣いを丁寧にすることです。女子学生がいるとよくわかります。
 その第二は、易しく言うことです。通訳するとよくわかります。
 その第三は、秘密を口外しないことです。軍事機密を知るとよくわかります。
 私の話は、具体的な技術問題だけです。技術問題を説明するには、A社のX製品、B社のY製品と言うのがわかり易いのですが、秘密保持で、日本製品と言うことにしました。私が世界最高水準と言っている日本製品は、このような具体製品のことです。世界最高水準の日本製品は、他にも多数ありますから、言っても間違いにはなりません。
 一言付け加えると、世界最高水準の日本製品の重要部分は中小企業(家内工業も多数ある)で作られています。日本製品が粗悪品であった時代(昔の人は知っている)には、技術は大企業が高く中小企業は低いということがありましたが、今では、企業の規模に関係ありません。ただし、工場の場所は関係あります(製品の性能は工場の性能というコマーシャルもある)。


人種差別や階級差別をしなくて済む(2006-9-10)
 最近外国に行く機会が増え、世界の人種差別や階級差別の事情がよくわかりました。
 工場現場の改善活動など、人種差別や階級差別を優先したら、成功するはずがありません。カイゼンは世界に通じる日本語ですが、日本しかできないと確信しました。
 外国に行ってはじめてわかる日本技術の特徴は小さな改善です。小さな改善だからこそ成功し、次にまた小さな改善ができるのです。あまり進んでいないようで、いつの間にか進んでいます。このようにして日本の技術は世界最高水準になりましたが、何でも外国が「進んでいる」と考えている人が今でも大勢います。
 「進んでいる」外国の人種差別や階級差別の話を聞いて、日本では人種差別は無理としても、階級差別ならできるのではないかと考える人もいます。はっきりそうとは言わなくても、差別用語を使う人がいました。しかし、その必要はもうないのです。日本の技術は、人種差別や階級差別をしなくても、あるいは、しなかったことで、世界最高水準になったからです。


技術士の独立自営者は尊敬されていることを自覚すべき(2006-7-26)
 技術士同士では、独立自営者は、理屈抜きに、尊敬されていると言ってまず間違いありません。ただ、技術士でない人(その中には技術士になれない人もかなりいる)に対してはそうはいかないこともあります。技術士は世間に知られていないという議論がありますが、それは文系関係者の話で、55年の実績により、理系関係者には浸透しています。技術士でない人が知らないふりをしているだけのことがよくあります。
 本日のテーマ「技術士の独立自営者は尊敬されている」は、技術士同士では、いつも正しく必ず意義深い議論である、と主張できます。ただ、技術士でない人にとっては、この議論そのものが、理屈抜きに、腹が立つことでもあると思い及ばなければなりません。日本技術士会の事例では、独立自営者の技術士がリーダーシップを取ることに、会社員の技術士が反対ないし非協力であることは、ありえないことなのですが、しかし、技術士でない上司から、難色を示されれば、ありえないことがおきます。上司の指揮命令に従うことで会社組織が成り立っているためで、技術士は個人の資格だからと言って、そこまで技術士の責任にするのは、少なくても日本の社会では酷です。


技術士は世界最高水準の技術力を持っている(2006-5-15)
 最近、外国に行って実感することは、日本の技術力が世界最高水準になったことです。新しく技術士になるような人は、世界最高水準の技術力を持っているに違いありません。これを利用しようとする人達が世界中に大勢います。
 まず、わかりやすい話をします。外国の諜報機関や、目的が非合法な組織に協力してはなりません。そうとは認識しなくても、結果的にそうなれば同じです。尊敬すべき人からの問い合わせでも、目的不明の場合は、答えてはなりません。
 これほどでなくても、技術士を利用しようとする人は非常に多く、尊敬すべき人からの話でも、結局は利用されるだけのことがあります。
 さて、世間には独立したいと本気で思っている人が大勢います。技術士も大きな関心を持っています。しかし、技術士を取り込もうとする人達の働きかけはそれ以上に強力です。
 定年問題については別の考察が必要です。一般会社の定年は、55歳(役職)、60歳(非役職)で、会社全体として、「老害を防ぐ」のが目的です。
 各個人が「まだ働ける」「まだお金が要る」という次元で、再就職や独立を議論することは、国家全体として、労害のおそれを生じます。例えば、同じことを三度言うほど老化が進んだ人は、この議論に参加すべきでありません。
 日本の技術力が世界最高水準になったことについて、会社の規模に関係ないことを補足します。現在の日本では、大企業が高い技術、町工場が低い技術ということではありません。


 技術コンサルタントは普通名詞で技術士は固有名詞 (2006-5-5)
 技術士の特権の殆どは、試験合格者に対するもので、技術士(登録者)に独占業務は原則なく、コンサルタントやエンジニアの仕事は、技術士と言わなくてもできます。
 ここで、わざわざ技術士と言うのは何のためか、を明確に説明する必要があります。もちろん、技術士倫理を主張するためと言うべきです。
 技術士についての議論の中には、技術士と言わなくてもできるものがあります。趣旨からして、技術士であることを要しない会合もあります。会合などの参加者は、例えば、今、技術コンサルタント(普通名詞)の話をしているのか、技術士(固有名詞)の話をしているのか、その都度、自分で認識する必要があります。


技術士とPEとCEの説明(2006-4-10)
(この解説は試験には使えません)
1.はじめに
 技術士の仕事のかたちは大別して3つあります。その第一は会社員、その第二は会社経営者、その第三は個人の技術コンサルタントです。独立自営と言っても、第二の場合はベンチャー企業の実業家、官庁や大企業の外注業者などです。第三の場合は中立の立場の個人です。
 ここで、会社員はPE、その他はCEという説明は、世間に誤解を与えます。
 技術士をPE、あるいは、技術士をCEと言うとき、PE、CEを普通名詞に使っているからです。しかし、米国PEがライセンスで、米国CEはライセンスでないことなど世間一般は知りません。技術士の倫理として、まずこれを知らせます。
 なお、技術者の国際化を議論するとき、いつの間にか、日本の国力と技術力が事実上世界最高水準になったことを意識して議論する必要があります。わかりやすく言うと、現実の仕事をするために、日本の技術者を外国に認めさせる実用性はなくなったと思います。そこで、資格名を名刺に書くレベルの話になってしまうことにもなります。
2.PEとは何か
 Professional Engineer(以下PE)は、100年の伝統がある、超大国アメリカ合衆国(以下米国)の国家資格(各州に登録)のライセンス(固有名詞)です。米国では、PE以外の者はPEを表示することができません。ただし、表示するとは名刺の肩書きレベルの話ではなく、図面や文書に責任を示すサインをすることです。
 日本の法律は日本語だけが有効で、民間での英語表記は自由です。しかし、PEと言ったとき、世間一般はともかく、技術士の倫理として、米国PEを意識しないわけにはいきません。
 米国PEは、PEを職業とすることで成り立っている制度です。米国PEは、勤務していようと(いまいと)、自営していようと(いまいと)、PEが職業なのです。この当たり前のことが日本では殆ど理解されていません。
 外国で、個人的な知り合いになったとき、職業を聞くことがあります。まずエンジニアと言い、専門を聞くと機械と言い、さらに詳しくは工作機械と言いますが、会社の名前はなかなか出てきません。
 日本ではまず会社の名前を言います。日本では、組織に所属することを就職と言いますが、外国では個人が文字通り仕事に就くことを就職と言います。外国では職業が階級になっていること、例えば、エンジニアとテクノロジストが別の階級で、階級を上がるのには学校に行き直さなければならないことなど、日本人は殆ど知りません。日本の社会制度が良いとか良くないとかの議論をする前に、世界と日本の現実を知らなければなりません。
 米国PEの説明を詳しくすればする程、日本と外国の職業や資格に関する考え方の違いが出て、具体的な議論がますます困難になります。
 一言補足します。日本では、「会社員が職業」の場合、一般に会社は兼業禁止ですから、「PEは職業でなく資格」という議論があります。米国PEは誰も言いません。
3.CEとは何か
 Consulting Engineer(以下CE)は、「技術を有償で公開し流通させることによって得られる社会的な利益は、これを秘密裡に閉鎖的に利用するよりもはるかに大きい」という視点から生じた「自由かつ中立」のエンジニアです。
 世界のCEは歴史と実績がある職業ですが、どこの国でも国家の保護は原則ありません。CEは国家からも自由であるということ、それが自分達の存在意義であると主張しています。
 米国CEは、国家の保護はなく、資格は不要です。ただし、実際には、米国PEの中からとくに優れた者がCEになると言います。つまり、米国ではCEは必ずPEです。従って米国では、CEかPEかという議論は成り立ちません。
 日本は、世界で唯一、CEを保護しようとした国です。技術士はCEと称して50年の実績があり、今でも続いています。ただ、国家の保護は、技術士の名称独占に限定されています。
(添付資料)技術士の歴史
 1945年、戦争の焼け跡に立って、我々の先輩は、日本の復興と世界の平和のため、民間技術者によるCEの必要性を論じた。
 国家の方針より個人の倫理を重視する誇り高いCEがいれば戦争は防げたという、悲痛な思いがあった。技術士の原点は、世界平和への切なる祈りである。
 1950年12月14日、政府の経済安定本部主催で、CE協会準備委員会が開催され、CEに相当する日本語として技術士という新語が作られた。このときの趣旨は、技術を有償で公開し流通させることによって得られる社会的な利益は、これを秘密裡に閉鎖的に利用するよりもはるかに大きいということであった。
 1957年3月、政府提案で国会に上程され、自由かつ中立のCEの育成が目的と説明して、同年5月20日、技術士法が制定された。
 技術士法では、技術士でない者は技術士又はこれに類似する名称を使用してはならないとしているが、技術士でない者は技術士の業務をしてはならないとはしていない。これが重要なポイントである。つまり、技術士に対する国家の保護は原則ない。
 世界のCEは歴史と実績がある職業であるが、どこの国でも国家の保護は原則ない。CEは国家からさえも自由である。それが自分達の存在意義と強く主張している。


新人技術士へのコメント2006年1月版(2006-1-8)

 資格の意義をあらためて考える

 技術の資格者は、優れた能力で社会に役立つ人ですが、その能力で社会に危険をもたらすこともあります。多少人格に問題があったとしても、能力に優れた者を利用しなければならないのが世間の現実ですから、資格者の利用者は、資格者だからと言って無条件に信用せず、十分に注意する必要があります。例えば、何でも自慢しなければ気が済まない人がおり、他人の業績を自分のもののように言ったりします。
 資格者が集まってする議論は、その多くが、自慢話(自分だけの世界)、あるいはもっと小さく、食うため(何でもする)、金を稼ぐ(小金を貯める)、偉くなる(社長になる)、税金を減らす(経費にする)、などの話でした。もし金を稼ぐと言うなら100億円位は言ってもらいたいところです。
 しかし、先進国には、資格そのものを不要とする世論があります。それは、技術の進歩と普及により、資格者の利用者が、技術の内容を相当に理解できるようになったため、資格者の仕事とされてきたものも、利用者の責任で「誰にでも」させた方が、社会にとって、より安全だという考え方があるからです。若干の補足をします。技術が複雑化した結果、特別の人(資格者)しか理解できない技術になり、その特別の人の単純ミスで、超重大事故がおきています。これは社会にとって非常に危険で、普通の人(資格者でない)が理解できる技術が安全です。
 資格者が自分に有利(面白い、儲かる、威張れる)な話をすることは、発展途上国(日本も最近迄同じ)では、「資格普及」に効果的ですが、先進国では、「資格不要」に効果的になるかもしれません。最近、資格の倫理を強調するのには、このような背景があります。

 技術士も倫理(プロフェッショナルエシックス)を強調する

 技術士と言った場合の倫理は、技術士法に明記されています。例えば、他の資格では、秘密保持義務は当該案件についてですが、日本の技術士は全てで、懲役1年の罰則付きです。技術士にとくに厳しい罰則が設けられたのには、はっきりした理由があります。技術士制度創設当時、日本には既に技術者の資格は多数あり、それらとどこが違うのかを明確にしなければ、国会を通らなかったのです。色々と説明されてはいますが、決め手は倫理でした。若干の補足説明が要ります。先の戦争の焼け野原で、先輩たち(あとで技術士となる)は、「国家の方針より個人の倫理を優先する誇り高いエンジニアが日本にいれば、戦争は防げたはずだ」と悲痛な思いで語り合った、と伝えられています。技術士の倫理には、これほど重大な背景があること(戦争を防ぐ)を決して忘れてはなりません。
 技術士と言わなければ、正直に何でも話す人は評価されますが、技術士と言った以上は、秘密保持が優先します。独立者の場合、クライエントの都合で、社名も言えないことがあり、その結果、何も仕事をしていないように見えることもあります。また、倫理には、ピアー(仲間)の仕事を妨害しないというのもあります。善意であっても、仲間うちの内幕を明らかにしようとしてはなりません。技術士と言うのは不利なこともあります。
 ところで、資格の最大の利点は、同じ資格というだけで、優れた資格者と同等の可能性があると見られることです。技術士の場合は、倫理観の高い人が目立つように、そうでない人が目立たないようにと、技術士資格を持つ者なら、だれしも思います。

 定職に就くことの重要性

 外国に行ってはじめてわかる日本の実情は、定職に就かなくても、食える(生活できる)ことです。また、それでも、格好つく(社会人になれる)ことです。今は良くても日本の将来が不安になります。
 定職に就くには、定職に就くという強い意志が要ります。定職は、その仕事の技術・技能があってできるものですから、何年も辛抱しなければなりません。それができないということは、何事にも辛抱できないということになります。
 定職に就かなくても、格好はつきます。小さな会社を作って社長になる方法があります。
 しかし、定職に就かない者、さらに格好をつける者は、自分では意識しないうちに、黒組織に取り込まるおそれがあります。善人でさえいれば大丈夫とは言えません。
 技術士のように高度な技術を持つに至った者が、定職に就かないということはありえません。技術士の仕事のかたちは大別して3つあり、何れも責任ある定職です。その第一は、会社員(正社員、契約社員、非常勤顧問等)、その第二は、会社経営者(ベンチャー実業家、設計業者、調査業者、請負業者等)、その第三は、個人の技術コンサルタント(中立の個人等)です。この3つを自由に使い分け、あるいは自由に移動できるわけではありません。自分ではできても、世間が認めない(雇ってくれない)ことがあるからです。
 なお、技術士でも失業することはあり、引退することもあります。技術士とは技術士業務を行う者という定義ですから、必ず責任ある定職に就いています。失業中あるいは引退した者は、技術士業務を行うことができませんので、技術士と称すること自体が不適当になるのです。米国の技術者が60歳でCPD不要になるのは一種の定年です。技術士も60歳以上は事実上引退している人(定職に就かない人)が多数います。
 約30年前、技術士を分類する審査があったことがあり、会社員、会社経営者、個人(技術コンサルタント)に分類しようとして、深刻な内部対立を招きました。善意でしたが、「職業選択の自由」に抵触する重大問題になったのです。名目とは異なり定職に就いていない者が多数いることもわかってしまいました。技術士は職業名ですが、特定の職業を指してはいません。何をしても(しなくても)個人の自由です。しかし、技術士をガス抜き(会社を辞めたい)や失業対策(第2の人生)の手段のように言うことは、お互いに不利になるばかりです。

 おわりに

 日本製品は故障が少ないという世界の評価です。そこには、品質のばらつきが少ない、という基本的な物造り技術があります。
 物造り技術は、三つの要素から成ります。その第一は物造りへの情熱、第二は精密加工を実現する技術的技能的能力、第三は生産した製品への愛情と責任感です。
 その基盤は細かい気配りです。弱点を突いて自分だけが利を得ることよりも、弱点に気配りして共存共栄をはかります。
 次の工程には良品だけを送ります。しかし、これには有利不利あるは損得よりも、責任感を重視するという人間の良心が根幹です。
 外国と比較してはじめてわかる日本技術の特徴は、小さな改善です。小さな改善だからこそ必ず成功し、次にまた小さな改善が可能になります。外国は結果を急ぎますが、ある程度時間が経過してみると日本の方が早くできています。外国は過激な革命をよしとしますが、日本は過激をさけて穏便に小さな改善を進めます。
 技術士の仕事も、外国の事例に学ぶよりも、穏便な方法が日本に合っています。


技術の資格者の意義をあらためて考える(2006-1-1)

 新年おめでとうございます。
 さて、昨年は、技術の資格者(技術士ではない)が社会に大きな危険をもたらす極めて重大な事件が発生しました。
 資格者は、優れた能力で社会に役立つ人ですが、その能力で社会に危険をもたらすこともあります。それは、能力が優れていることと、人格が優れていることとは別問題だからです。たとえ人格に問題があったとしても、とくに技術の問題では、能力に優れた者を利用しなければならないのが世間の現実ですから、利用者側で十分な注意が必要です。例えば、何でも自慢しなければ気が済まない人がいます。
 これまでの資格者の議論は、このような自慢話が多かったのです。あるいはもっと小さく、とにかく食うため(仕事あさり)、金を稼ぐ(小金を貯める)、偉くなる(会社で勤まらなかったので自分で社長を名乗る)、税金を減らす、などの話でした。金を稼ぐと言うなら100億円位は言ってもらいたいところですが、今は、そんなことは言っていられない緊急事態です。
 世界の資格の事例では、米国PEは、「生命・健康・財産を守り、公共の福祉を推進する」ために、資格者を設けるとしています。世界の技術の資格者は、中世ヨーロッパのギルドの伝統によっています。ギルドは、メンバーがその特別な能力で社会に危険をもたすことがないように、徒弟教育とピアーズレビュー(同僚審査)によって、後継者の育成をしました。やがて、徒弟教育は大学教育(同等)、ピアーズレビューは国家試験(同等)になりました。
 しかし、資格者の意義は世界的に大きく変化しています。それは、技術の進歩と普及により、資格者の利用者が、技術の内容を相当に理解できるようになったため、これまで国家(または同等)の権威で、資格者の仕事とされてきたものも、利用者の責任で「誰にでも」させた方が、社会にとって、より安全だという考え方です。昨年の事件でも、もし資格者でなかったら、利用者が用心して、安全だったかもしれません。
 今まで良く言われたこと、「資格がもの言う時代」「国際的に認められる」「資格をとって独立」「定年後も充実」などと言ってはいられない時代が来たと思います。今後世界的に、資格そのものを不要とする世論がおきる可能性があります。これは、資格者が本当に社会に役に立ち、決して社会に危険をもたらすことがないということを、世論に訴えられるかどうかです。少なくても、資格者が自分の都合(面白い、儲かる、威張れる)を言うことは、世論に対し不利に働くと思います。
 技術士の場合は、高い倫理を要求されていること、とくに厳しい秘密保持義務があることで、他の資格者と差別化できます。秘密保持義務により、自慢することにも制約があります。


定職に就くことの重要性(2005-12-27)

 学校で、定職に就くことの重要性を講義しました。
 外国に行ってはじめてわかる日本の実情は、定職に就かなくても、食える(生活できる)ことです。また、それでも、格好つく(社会人になれる)ことです。今は良くても日本の将来が不安になります。
 定職に就くには、定職に就くという強い意志が要ります。定職は、その仕事の技術・技能があってできるものですから、何年も辛抱しなければなりません。それができないということは、何事にも辛抱できないということになります。自分に合った仕事を見つけるマニュル本が多数あり、辛抱しない環境があります。
 定職に就かなくても、格好はつきます。小さな会社を作って社長になるマニュアル本が多数あり、格好をつける環境があります。
 世間には黒組織が多数あります。定職に就かない者、さらに格好をつける者は、自分では意識しないうちに、黒組織に取り込まるおそれがあります。善人でさえいれば大丈夫とは言えません。全くの誤解であっても、黒組織と噂になっただけで、事実上、健全な社会人とは見なされなくなってしまいます。世間からそのような疑いを受けることがないよう、日常の言動には十分な注意を払わなければなりません。
 定職に就かない、さらに格好をつける者を生じる背景には、子供を甘やかす親の存在があります。この方が、もっと日本の将来にとって重大です。
 以上は若者に対するコメントですが、技術士についても一言あります。
 技術士のように高度な技術を持つに至った者が、定職に就かないということはありえません。技術士の仕事のかたちは大別して3つあり、何れも責任ある定職です。その第一は、会社員(正社員、契約社員、非常勤顧問等)、その第二は、会社経営者(ベンチャー実業家、設計業者、調査業者、請負業者等)、その第三は、個人の技術コンサルタント(中立の個人等)です。
 技術士の前例は全くありませんが、資格者が黒組織に取り込まれ、社会に非常に大きな悪影響を及ぼすことはあります。技術士は、少なくても、世間からそのような疑いを受けることがないよう、日常の言動には十分な注意を払う必要があります(李下に冠を正さずの例え)。
 なお、技術士でも失業することはあり、引退することもあります。技術士とは技術士業務を行う者という定義ですから、必ず責任ある定職に就いています。失業中あるいは引退した者は、技術士業務を行うことができませんので、技術士と称すること自体が不適当になるのです。


日本の物造り技術APPEAL(11/6)

 日韓技術士会議(2005-10-24韓国全州市)

 下記文章を、ポスターセッションに出したところ、色々な席で、韓国側(多数)
から声をかけられました。

 日本製品は故障が少ないという世界の評価です。そこには、品質のばらつきが少ない、という基本的な物造り技術があります。
 物造り技術は、三つの要素から成ります。その第一は物造りへの情熱、第二は精密加工を実現する技術的技能的能力、第三は生産した製品への愛情と責任感です。
 その基盤は細かい気配りです。弱点を突いて自分だけが利を得ることよりも、弱点に気配りして共存共栄をはかります。
 次の工程には良品だけを送ります。しかし、これには有利不利あるは損得よりも、責任感を重視するという人間の良心が根幹です。
 外国と比較してはじめてわかる日本技術の特徴は、小さな改善です。小さな改善だからこそ必ず成功し、次にまた小さな改善が可能になります。外国は結果を急ぎますが、ある程度時間が経過してみると日本の方が早くできています。外国は過激な革命をよしとしますが、日本は過激をさけて穏便に小さな改善を進めます。


新規開業技術士へのコメント(2005-10-8)

・世界史に希な日本の奇跡は、日本製品が「故障しない」からおきた。「ばらつきのないものづくり」の日本技術は、小さな改善である。外国は革命を好むが、日本は穏便な改善を進め、いつの間にか外国を抜いた。独立自営も、外国の事例に学ぶよりも、穏便な方法が日本に合っている。例えば、勤めた会社には逆らわない。

・技術士の名称を使用するなら、その目的を説明することが必要である。独立自営も、技術士の名称を使用する場合と、しない場合では全く違う。目的は個人差が大きいので、他人を真似るわけにはいかない。

・詐欺や黒組織関係は世間では非常に多い。「必要がないのに」立派な事務所を構えたりすれば、世間は誤解する。善意であっても誤解を招くこと、例えば、必要がない介在をしたり、実務がないお金をもらったりしないことである。日常の言葉にも気を遣わないと、詐欺や脅迫と間違われる。

・他人がどう思うかは現実には非常に重要である。とくに個人では、自画自賛すればするほど、他人は、「会社を勤まらなかった」「経営者になれなかった」などと見る。能力の高い者は謙虚な態度をとることが大切である。

・会社の作り方や税務署への届けの方法などの質問が多いが、これは実際に仕事をしてからのことである。また、実際に仕事に必要になったとき、それぞれの専門職に依頼する。自分が専門職なら、他の専門職も尊重すべきである。

・技術士の仕事のかたちは、主に、「会社員」「経営者」「個人」である。会社員は、最近複雑になった。「個人」のつもりでも、会社の役員になれば「会社員」だろう。独立自営とは、「経営者」になることを目指すことが多い。「個人」の場合は、非常に厳格な秘密保持が要る。顧客の存在そのものが、顧客の都合で秘密になり、仕事をしていないようにさえ見える。世間一般では正直に話す人が評価されるが、技術士はそうはいかない。

・会社には上司が居る。上司にゴマをするのは当然のことである。会社員でなくなると、上司は居なくなり、お客が居る。上司はいやな存在だが、お客様はありがたい神様である。

・名刺では自分のアピールはできない。別にアピールする冊子を常時携帯すべきである。自分のお金を使って本にする。ただし、論文集は読んでもらえない。基礎技術の解説書などが適していると思う。


技術者国際化の新しい傾向(2005-8-20 青葉堯)

 韓国では、学者階級、技術者階級、技能者階級を区分し、それぞれの最高資格を、博士、技術士、技能士としています。
 これは実にわかりやすい説明です。諸外国の社会は、階級制度で成り立っているのでしょう。階級と言えば家柄ですが、家柄不足でも学歴で、学歴不足でも資格で、資格不足でも資金(高額)で、階級に参入可能のようです。
 日本だけは、事実上階級がありません。日本では、技術と技能は同じ意味を持つ言葉で、学者も、学問と技術が一体化しています。

 さて、諸外国の技術は、「技術者の能力」にあり、従って、技術者の基礎教育が非常に重視されます。
 日本の技術は、「故障しない製品」にあり、製品が良ければ、それで十分で、技術者の能力が表面に出ることは希です。従って、日本の産業界には、学校教育には、知力・体力・忍耐力(ものづくりに必要な忍耐力)の育成を期待し、「技術者の能力」育成は、企業自らが行う、という考えが非常に強いのです。

  教育は必ず結果論ですから、日本は「故障しない製品」で、世界の高い評価を得たという結果で、日本の教育は成功したと言えます。
 日本が、貧乏国(アジア辺境の貧困弱小国)から、非常に短い年月で、富裕国(世界の富を事実上独占する一角を占める)に至ったのは、人類の歴史における奇跡です。その奇跡は、日本製品に「当たり外れがない」(故障しない)ことでおきたことは明らかです。
 しかし、外国は、日本の成功を黙認しているわけではありません。日本のやり方は国際基準にない、などの主張は外国の圧力です。

 日本のものづくりの技術は、基礎科学由来の創造的能力よりも、「次の工程に良品だけを送る」というような、細かいところに気が付く実務的技能能力と損得より品質を優先する責任感に重点があります。

 国際化の議論では、日本の技術者が外国に認められるにはという話でしたが、日本の技術者は、実力は世界最高、給料もまた世界最高となり、事実上、外国で働く者がいなくなりました。ただし、この議論では、日本資金や日本企業の仕事、また、短期の出張を除きます。また、外国の技術が遅れていると言っているのでは決してありません。例えば、日本で通用しなくなった技術は、外国でも通用しません。

 一方、国家は、外国の侵略から民族を守る究極の組織だということを理由に、これからの日本国は、技術者の資格問題も、国防問題として、国際化に対抗することはあると思います。あれほど「技術導入」「外資導入」と言っていた日本が、「技術防衛」「資本防衛」と言うようになるとは、夢にも思わなかったことです。


 技術士の特権を活用する開業              2005-8-6 青葉堯

1 はじめに

  日本語の資格は、英語のデグリー(degree)、サーテファイ(certify)、ライセンス(licence)を混同していますので、少なくてもこれを明確に区別することが必要です。一般大衆は、重要な専門的な仕事を初対面の他人に依頼しなければならないことがおきますが、そのときに能力を見分けることができる目印がデグリー(学校修了証明)とサーテファイ(試験合格証明)です。法人においても、職員が目印を持つことで、法人の目印になります。
 これに対し、ライセンス(免許)はローカル(local)(各国)の議会が「この地域では他の者はしてはならない」と決めたもの(法律)です。ライセンスは他の人にとっては自由な人権の制限なので、ローカルの政治問題になります。
 法人においても、職員がライセンスを持つことで事実上あるいは実際に法人のライセンス(建設業とか)が得られます。なお、法人自体のライセンスは議論対象にしていません。

2 技術士称号を使用する目的の追求

 技術士を受験するには、「技術士資格を取得する目的」を説明しなければなりません。
 技術士を開業するには、「技術士称号を使用する目的」を説明しなければなりません。
 まず、技術士称号を使用する目的を1つだけ紙に書き出してみて下さい。さらにそれは何のためか、それはまた何のためか、書き出して行くと、自分の本当の目的がはっきりします。目的を1つにすることが重要です。
 目的と手段を混同しない注意が必要です。世間では、会社を設立するのは、社長の名刺を作るのが目的という人もいます。
 技術士は技術士事務所を開設できます。技術士でない者から見ると大変な特権です。この特権を最大限に利用しましょう。見栄を張る程度の利用では不十分です。
 見栄を張ることで他人に不快感を与えることがないように、気配りすることも必要です。技術士資格は、技術の世界では良く知られていて、ねたましく思っている人が多数いるからです。また、世間では、何事も見栄を張らなければ気が済まない人もいます。カラオケが見栄の1種と考えれば分かり易いでしょう。見栄を張る人はお金を払うべきです。

3 技術士資格の利点

 資格の最大の利点は、同じ資格というだけで、優れた実績を持つ資格者と同等の可能性があると見られることです。
 資格の一つに学校のデグリーがあります。評価の高い学校に行けば決定的に有利です。それは、評価の高い卒業生と同等(可能性だけでも)であると世間が見るからです。
 学校は、何十年の卒業生の実績、それも、少数の傑出した卒業生の実績で、学校全体が高く評価されています。学校も、卒業生が目立つように、日常努力しているのです。
 技術士も同様で、優れた実績を持つ技術士には、大いに目立って欲しい、しかし、もし、そうでない技術士がいたとしたら、なるべく目立たないようにして欲しい、というのが、技術士資格を持つ者なら、だれしも思うことだと思います。
 プロフェッショナルエシックスは「ひとの道」の倫理とは意味が違います。その集団の看板であり、申し合わせです。その中に必ず次のような項目があります。「技術士は、相互に信頼し合い、相手の立場を尊重し、いやしくも他の技術士の名誉を傷つけ、あるいは業務を妨げるようなことはしない」。これは、資本主義の自由競争の原理にはない根本的な問題ですから、他人からはこの姿勢を批判されることもあります。それでも技術士は仲間を見下したりしません。

4 技術士の仕事のかたち

 技術士の仕事のかたち(責任ある定職)は大別して3つあります。その第一は、会社員(正社員、契約社員、非常勤顧問等)、その第二は、会社経営者(ベンチャー実業家、設計業者、調査業者、請負業者等)、その第三は、個人の技術コンサルタント(中立の個人)です。
 技術士は殆どが大企業の出身者であるため、独立自営者でも、その客先が官庁や大企業と思われがちですが、それは、第二の場合(会社経営者)です。第三の場合(個人の技術コンサルタント)では、客先は、殆どが家族経営の中小企業です。
 仕事をするときは、わざわざ不利にしない注意も必要です。例えば、年金が減らない範囲の金額にする、他に収入があるから安くする、逆に収入がないのに税務署に開業届を出す、等々は不利です。うまく立ち回ったと思っても、世間はそうは見ません。
 技術士の仕事は、形は何であっても、責任ある定職です。独立した形式を作っても、責任ある定職でない場合には技術士の名称は使用できません。技術士は現役の資格です。
 最近、定職に就かない若者の存在が問題になっています。独立して自由に生きるのだそうです。しかし、その自由とは、自分勝手なだけです。ここで、親の重大な責任に気付きます。子は親の生活態度を長年にわたって実によく見ています。親は、定職に就いていることをはっきり見せる必要があります。親の生活態度がいい加減だと子が見れば、子もそうなります。世間の新聞には、中高年会社員が妻や娘を役員にして自分が社長になって独立した、などと書いてあります。仕事に妻や娘は役立たないでしょう。会社を作ったことを独立と言っただけのことで、責任ある定職にはなりません。
 さて、日本の産業の主力が家族経営の中小企業であることは言うまでもありませんが、大企業でなければできないものもあります。その重要な一つが公私のけじめです。中小ないし個人の企業は、家族経営(親分子分も一種の家族)ですから、会社(公)の形態をとっていても、実態は一家(私)です。中小ないし個人の企業では、会社の社長は一家の家長だからこそ、顧客は信用します。ただし、家長に事故があったときは、顧客にとっても危機となります。大企業では、会社の社長は組織の一部で、社長に事故があったときでも組織で対応し、顧客の危機とはなりません。家族関係(私)がないからこそ可能になる組織(公)の力です。
 大企業の会社員は上司の指示に従うばかりだとマスコミは面白おかしく言います。大企業の会社員はゴマすりの術には長けていますから、見かけ上はそう見えるかもしれませんが、本当は真面目であることが、故障しない日本製品で証明されています。
 ところで、世間では、具体的な仕事が終了した後もお金が動くことがあり、そのような場合、名目の如何にかわらず、他人は、ゆすりたかりや詐欺と思うことがあります。技術士は非合法の可能性があるところに巻き込まれることはできません。

5 技術士と技能士の違い

 技術士は技能士の一部だと思う人が世間には多数います。
 日本では技術と技能とは同じ意味で使われています。技術・技能の検定は多数あり、技術士はその一つと思われやすいのです。技能士は、3級から特級まであり、下級者は作業者ですが、上級者には独立して技術コンサルタントを行う者がいます。外国は、技術者と技能者とは別の階級ですが、日本は階級そのものがなく、技術士が技能士より上位ということにはなりません。
 しかしながら、技術士は、他の検定とは非常に異なり、技術部門についての専門的学識及び高等な専門的応用能力を有するかどうかの試験です。技術・技能そのものは検定されませんので、技術・技能に優れていることにはならないのです。このように、技術士は、技能士あるいは博士の類似資格ではありません。
 それでも技術士は、特定の専門事項については事実上誰にも負けない技術的能力がありますから、その専門事項を狭く明確に言うのが現実的です。範囲を広げて言うのは、かえって不利になります。
 さらに、技術士には、技能士あるいは博士には全くないものがあります。それは秘密保持です。秘密保持契約をしなくても、技術士というだけで、秘密保持が保証されるのです。 従って技術士は、自分では役に立つと思っても、他社で得た情報は、些細なことでも口外することがありません。正直に何でも話すことは難しく、仕事の実績が少ないように見えますが、それが技術士の存在意義です。威張りたがる人や内幕を言いたがる人は技術士の仕事には就けません。
 ところで、外国、例えば韓国では、技能者階級で技能に最も優れた人を技能士、技術者階級で技術に最も優れた人を技術士、学者階級で学問に最も優れた人を博士としています。国際化の観点で、実にわかりやすい説明です。
 しかし、日本は非常に特殊で、技能と技術と学問を区別する前提になる階級そのものが、はじめから存在しません。日本の主力は中小企業(家族経営)です。従って、上記の説明は不適切です。さらに、日本語では技能と技術とは同じ意味で、技術の分野では、学問も技術と一体化しています。

6 資格総覧の内容

 日本の資格の総覧を作ってみました。こうすると、特権業務のありかがわかってきます。技術士では、シビル(部門や科目で異なる)に特権業務があります。
 国家資格・公的資格(国・都道府県等の公共機関、同指定団体実施)が数百、公共的民間資格(公共機関の後援あるもの)が数百、民間資格・私的資格(民間団体の実施)が数千あると言われています。また、学校の修了を認定するものが、国家・公的資格相当(文部科学省指定及びこれに準ずる学校)と民間・私的資格相当とがあります。また、公務員の採用資格試験(国家・公的資格相当)があります。
 日本では、技術と技能、また、技術と管理と事務の区別が曖昧です。しかし、弁理士が法務、技能士が技能であることは明らかです。装置の操作及び装置の整備は、その内容からして、技能です。ただし学位(学士、修士、博士)は技術者資格の議論はしていません。
 日本では、省庁別に決められていますので、そのように整理します。ただし、省庁の統合によりその由来がわかりにくくなっています。そこで、あえて昔の省庁の名前で分類してあります。
 技術か技能か不明確のものが含まれますが、技術者という名称がついているもの(無線技術士を除く)は「技術者」としました。なお、一級と二級あるいは士と士補がありますが、ここでは同一に取り扱いました。民間資格と注記のないものは国家資格です。名称はついていませんが、各省庁で指定している資格(指定と注記)があります。* 印は技術士に関連が深い資格です。
(1) 旧農林水産省:林業技士、治山・林業の設計・調査・測量等の受注者の資格* (指定)、森林土木の設計・調査・測量等の受注者の資格* (指定)、土地改良事業の審査のために委嘱する専門技術者の資格* (指定) 
(2) 旧経済産業省:公害防止管理者、高圧ガス製造保安責任者、液化石油ガス設備士、環境計量士、一般計量士、火薬類保安責任者、情報処理技術者、電気工事士、ガス主任技術者、ダム水路主任技術者、ボイラー・タービン主任技術者、エネルギー管理士、危険物取扱者、中小企業指導事業の技術指導者の資格* (指定)、中小企業技術アドバイザ−の資格* (指定)、中小企業診断士(技術関係者)
(3) 旧労働省:衛生管理者、衛生工学衛生管理者、作業環境測定士、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント、労働災害防止の建設工事計画作成参画者の資格* (指定)
(4) 旧自治省:消防設備士
(5) 旧建設省:建築士、木造建築士、建築設備士、インテリアプランナー、インテリアコーディネーター、下水道管理技術認定、建築物衛生管理技術者、建設機械施工技士、土木施工管理技士、管工事施工管理技士、造園施工管理技士、建築施工管理技士、電気工事施工管理技士、採石業務管理者、砂利採取業務主任者、測量士、ダム管理主任技術者、建設コンサルタントマネージャー* (民間資格)、宅地造成工事の技術的基準の設計者の資格* (指定)、都市計画設計図作成者の資格* (指定)、公共下水道・流域下水道の設計・工事の監督管理者の資格* (指定)、公共下水道・流域下水道の維持管理者の資格* (指定)、特定建設業の専任の主任技術者・監理技術者の資格* (指定)、建設コンサルタント業の登録者の資格* (指定)、地質調査業者の登録者の資格* (指定)、指定建設業者の営業所毎の専任技術者の資格* (指定)、特定建設業者の工事現場毎の専任技術者の資格* (指定)
(6) 旧厚生省:毒物劇物取扱主任者、浄化槽管理者、浄化槽技術管理者、浄化槽清掃技術者、浄化槽設備士、廃棄物処理施設技術管理者
(7) 旧運輸省:油汚防止管理者、有害液体汚染防止管理者、鉄道の設計管理者の資格* (指定)
(8) 旧郵政省:電気通信主任技術者
(9) 旧科学技術庁:技術士*、原子炉主任技術者、核燃料取扱主任者、原子力施設溶接検査員の資格* (指定)

7 おわりに

 「常につくる人でいようと思う」(新しいコピー)この立場をはっきりさせたことは、ものづくりだけをしてきた私にとって、大変ありがたいことだと思いました。つくる人は、「良い品を安く早く多くの人に」(別のコピー)使ってもらう立場です。高品質で安価な大量生産の技術そのものが日本の高度技術です。ただ、これは技術者個人の能力として表現しにくい内容です。
 世界各国の技術は、「技術者の能力」にあり、従って、技術者の基礎教育が非常に重視されます。しかしながら、日本の技術は、「故障しない製品」にあり、製品が良ければ、それで十分で、技術者の能力が表面に出ることは希です。従って、日本の産業界には、学校教育には、知力・体力・忍耐力の育成を期待し、「技術者の能力」育成は、企業自らが行う、という考えがあります。教育は結果論ですから、日本は「故障しない製品」で、世界の高い評価を得たという結果で、成功したと言えます。
 日本の技術は事実上世界最高、給料も事実上世界最高になり、外国に働きに行く者(日本企業や日本資金の仕事を除く)は殆どなく、技術者資格も外国に評価される必要がなくなってしまっています。


プロフェッショナルエシックスの意味(2005-6-18)

 プロフェッショナルエシックスは「ひとの道」の倫理とは意味が違います。例えば、「医師はもと聖職たるべきもので、医師の行為の根本は仁術である」「弁護士は社会に於ける自由の指導者であり、秩序の擁護者である」「技術士は、公衆の安全、健康および福利の最優先を念頭に置き」などがあります。
 この姿勢は、他人からは批判されることがあります。しかし、自らは批判を認めません。そのプロフェッショナルの共同利益を守るためです。資格の最大の利点は、同じ資格というだけで、優れた実績を持つ資格者と同等の可能性があると見られることです。そこで、プロフェッショナルエシックスには、必ず次の条項があります。「技術士は、相互に信頼し合い、相手の立場を尊重し、いやしくも他の技術士の名誉を傷つけ、あるいは業務を妨げるようなことはしない」。
 資格は良いことばかりではありません。資格のために行動が相当厳しく制限されます。例えば、自分が技術士と称することで、他の技術士の名誉を傷つけることにならないように、配慮しなければなりません。また、「技術士は秘密を守る」、これが安心して技術士に仕事を任せられる根拠ですから、顧客の名前さえも言えません。資格があるばかりに、正直に何でも話すことは難しくなり、仕事の実績が少ないように見えます。


プロフェッショナルエシックスの意味(2005-6-15)

 プロフェッショナルエシックスは「ひとの道」の倫理とは意味が違います。例えば、「医師はもと聖職たるべきもので、医師の行為の根本は仁術である」「弁護士は社会に於ける自由の指導者であり、秩序の擁護者である」「技術士は、公衆の安全、健康および福利の最優先を念頭に置き」などがあります。
 この姿勢は、他人からは批判されることがあります。しかし、自らは批判を認めません。そのプロフェッショナルの共同利益を守るためです。資格の最大の利点は、同じ資格というだけで、優れた実績を持つ資格者と同等の可能性があると見られることです。そこで、プロフェッショナルエシックスには、必ず次の条項があります。「技術士は、相互に信頼し合い、相手の立場を尊重し、いやしくも他の技術士の名誉を傷つけ、あるいは業務を妨げるようなことはしない」。
 資格は良いことばかりではありません。資格のために行動が相当厳しく制限されます。例えば、自分が技術士と称することで、他の技術士の名誉を傷つけることにならないように、配慮しなければなりません。また、「技術士は秘密を守る」、これが安心して技術士に仕事を任せられる根拠ですから、顧客の名前さえも言えません。資格があるばかりに、正直に何でも話すことは難しくなり、仕事の実績が少ないように見えます。


会社という言葉のイメージは大企業だが実態は家族経営の中小企業(2005-6-7)

 技術士の仕事のかたちは大別して3つあります。その第一は会社員、その第二は会社経営者、その第三は個人の技術コンサルタントです。
 独立自営と言っても、第二の場合はベンチャー企業の実業家、官庁や大企業の外注業者などです。第三の場合は中立の立場の個人です。
 技術士は殆どが大企業の出身者であるため、独立自営者でも、その客先が官庁や大企業と思われがちですが、それは、第二の場合(会社経営者)です。第三の場合(個人の技術コンサルタント)では、客先は、殆どが家族経営の中小企業です。
 日本の産業の主力は家族経営の中小企業ですから、これは当然のことなのです。
 さて、ここで、会社という言葉のイメージが大企業であることにご注目下さい。しかし、日本では、「名前は会社でも実質は一家」という企業が主力です。そこでは、例えば終身雇用などの議論はありません。家族をやめることもやめさせることもできないからです。


公私のけじめをつける利点(2005-5-23)

 日本の産業の主力が家族経営の中小企業であることは言うまでもありません。しかし、大企業でなければできないものもあります。また、ある程度長く勤めて大企業の責任ある立場(エンジニア)になってはじめてわかる、大企業の利点もあります。
 その重要な一つが公私のけじめです。中小ないし個人の企業は、家族経営(親分子分も一種の家族)ですから、会社(公)の形態をとっていても、実態は一家(私)です。
 中小ないし個人の企業では、会社の社長は一家の家長だからこそ、顧客は信用します。ただし、家長に事故があったときは、顧客にとっても危機となります。
 大企業では、会社の社長は組織の一部で、社長に事故があったときでも組織で対応し、顧客の危機とはなりません。家族関係(私)がないからこそ可能になる組織(公)の力です。
 大企業の会社員は上司の指示に従うばかりだとマスコミは面白おかしく言います。大企業の会社員はゴマすりの術には長けていますから、見かけ上はそう見えるかもしれません。しかし、本当は違います。公私のけじめをつけているからです。


技術士と技能士の違い(2005-5-4)

 技術士は技能士の一部だと思う人が世間には多数います。
 日本では技術と技能とは同じ意味で使われています。技術・技能の検定は多数あり、技術士はその一つと思われやすいのです。技能士は、3級から特級まであり、下級者は作業者ですが、上級者には独立して技術コンサルタントを行う者がいます。外国は、技術者と技能者とは別の階級ですが、日本は階級そのものがなく、技術士が技能士より上位ということにはなりません。
 しかしながら、技術士は、他の検定とは非常に異なり、技術部門についての専門的学識及び高等な専門的応用能力を有するかどうかの試験です。技術・技能そのものは検定されませんので、技術・技能に優れていることにはならないのです。このように、技術士は、技能士あるいは博士の類似資格では絶対にありません。この説明は何度もしているのですが、一旦思い込んでしまうとこれが理解できないようです。
 技術士の表示は、「登録を受けた技術部門」です。例えば、技術士の試験で、「専門領域」の表示義務があると答えると不正解になります。技術士は、「科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項」について業務を行いますが、登録を受けた技術部門に限るという制約はありません。
 また、技術部門を正しく表示すれば、専門領域は何でも自由に説明できます。もちろん、他の技術部門と紛らわしい名称や、技術的確信を持てないものは避けます。なお、技術部門を表示することは米国PEにない有利な定めです。高度の専門性が想定されるからです。さらに、これを基盤として多くの専門領域に進出するという構図が描けます。ただ、表示はイメージだけのことで、実際に仕事をするのは、内容であることに変わりはありません。
 なお、技術士には、技能士あるいは博士には全くないものがあります。それは秘密保持です。秘密保持契約をしなくても、技術士というだけで、秘密保持が保証されるのです。ちなみに弁護士法には、秘密を保持する権利を有し義務を負う、という条文があり、権利と言っています。従って技術士は、自分では役に立つと思っても、他社で得た情報は、些細なことでも口外することがありません。正直に何でも話すことは難しく、仕事の実績が少ないように見えますが、それが技術士の存在意義なのです。この説明も何度もしています。


技術士エシックスの基本(2005-4-4)

1.技術士の評価を高める努力をする
 漢字の「資格」には3つあります。DEGREE:学校修了証明、就職等の条件(別資格の取得もあり)、CERTIFY:試験合格証明、能力目印(専門的業務能力の保証もあり)、LICENSE:免許、業務独占権取得(地域の政治問題もあり)。
 資格の威力は、他人に対する世間の評価が、同じ資格というだけで、自分に準用されることです。例えば、評価の高い学校に行けば決定的に有利です。評価の高い卒業生と同等(可能性だけでも)であると世間が見るからです。評価の高い技術士はいますから、これを尊敬することが第一歩です。
 しかし、自分のアピールが他人には自己顕示欲にしか思えないことがあります。その結果、優れた人ほど目立つことを控え、知名度が低いように見えます。
2.技術士は品位保持に努力する
 技術士法第44条は、信用失墜行為の禁止です。これを受けて、技術士倫理要綱第1条は、品位の保持をうたっています。他の日本の資格(弁護士等)、また、外国の資格(PE等)にはない項目です。
 自分では本当に役に立つと信じていても、他人はそうは思わないこともおきます。名義貸しや口止め料に紛らわしいものは、法律上は正しくても、他人は厳しく見るということを認識しなければなりません。この結果、長期継続に慎重になり(終身雇用を除く)、仕事が長続きしないように見えます。
3.技術士は秘密保持契約をしなくても秘密を守る
 技術士法第45条は、秘密保持義務です。懲役1年の罰則付きです。他の日本の資格(弁護士等)、また、外国の資格(PE等)にはない条項です。一般に言う秘密保持は、個々の案件に限定されますが、技術士は何でも秘密を漏らせば処罰されます。これは、技術士の信用を裏付ける世界に類例のない特権とも言えます。
 自分では役に立つと思っても、他社で得た情報は些細なことも口外しないことです。この結果、正直に何でも話すことは難しくなり、仕事の実績が少ないように見えます。
4.技術士はエシックスに厳しい
 明治政府は、エシックスを倫理と訳しました。しかし、倫理は古代中国の文字で、エンジニアリングエシックスとは意味が違います。倫理が人のふみ行うべき道(個人的内面原理)であるのに対し、エンジニアリングエシックスは、プロフェッショナルなエンジニア同志の決めごと(一種の共通ルール)で、原理的に両者は同居しません(この定義は試験には使えません)。
 従って、個人の主義主張で正しいと信じることをすればよい、というわけにはいきません。共通のルール例えば著作権を尊重します。この結果、引用に慎重になり、知見の範囲が狭いように見えます。
5.日本技術の基盤は細かい気配り
 「細かい気配り」で品質のバラツキをなくする技術があって、今日の日本があると思います。今後さらにこの日本技術の重要性が増すに違いありません。弱点を突いて自分だけが利を得ることよりも、弱点に気配りして共存共栄をはかることができるのは、日本だけかもしれません。
 自分では素晴らしいことを言ったつもりでも、他人には自己中心にしか思えないことがあります。この結果、発言は慎重になり、声が小さいように見えます。 


 定年の意義(その3)(2005-3-17)

 定年(停年)制度は、日本独自の「雇用の安定」政策でもある。定年まで継続的に勤務することで、技術・技能を蓄積強化した。さらに定年で例外なく退任することで、古い体制を引きずらなくした。私は、これが日本に奇跡的な発展をもたらした原動力の1つだと思う。
 しかし、定年者にとっては、働く能力があるのに仕事がない、また、年金がないのに収入がない、などの問題を生じる。そこで、定年を60歳としたが、事実上労働組合員に限られている。
 幹部社員の定年(役職定年)は、55歳程度(50歳もある)である。かつては、定年後、関連会社や下請会社に再就職することが多かった。最近の情勢は、能力があっても定年者の再就職は困難になっている。一般の会社は、人手不足ではあるが、中高年社員に限れば余剰になったからである。
 それでは、定年者はどうするか。新たに事業を興す人は少数で、次の3つが大多数である。
(1) 居ようと思えば居られる人は居続ける。(2) 短期の臨時雇で再就職する。(3) その都度時間で雇われる。(つづく)


定職(2005-3-13)

 定職に就かない若者の存在は家庭や国家の将来に危機をもたらす、と断言して良いと思います。軽食や便利店その他いまどき流行の仕事をする者の大多数は、定職の意識がないようです。昔は生活のためでしたが、今は自由に生きるのだそうです。しかし、その自由とは、日々安易に過ごしているだけとしか思えません。
 ここで、親の重大な責任に気付きます。子は親の生活態度を長年にわたって実によく見ているからです。親は、定職に就いていることを子にはっきり見せる必要があります。会社では、子供達に親の働く姿を見せる行事があります。
 親の生活態度はいい加減だと子が見れば、子もそうなります。さらにその子は、と考えると、これが国家的な大問題であるとわかります。事態を非常に深刻にしているのは、実質的な定職に就いていない若者に、金銭援助する「いい加減な」親の存在です。


統計は実態を示さないことがある(2005-2-23)

 会社員が増えたという話には、個人の業者が税金の問題で会社にしたという背景があります。親戚の個人商店は、社長も専務もひら社員もいる会社になりました。統計上は、家族一同、会社員です。しかし、その内容は、個人の業者と何も変わるところはありません。
 一方、独立者が増えたという話には、定職についていない者が独立と称したという背景があります。親戚の孫は、会社を設立し、社屋もあります。統計上は、青年実業家です。しかし、その内容は、定職につかず、親の援助で生活しています。
 何れの場合も、外見では実態はわかりません。だから外見でレッテルを貼ったりしてはならないのです。


定年の意義(その2)(2005-2-5)
先に停年は、全員を退職させることが会社にとって有利だとして決めた年齢だと言った。
例えば、次のような大企業の事例がある。
昇格終了50歳、役職終了55歳、解用60歳。
なお、昇格終了では、処遇が2分(役員・准役員級への抜擢か、事実上の降格か)する。また、役職終了では、職場変更(関連会社への出向など)になる。昇格終了や役職終了になっても、解用になるまでは、「居ようと思えば居られる」という形式にはなるが、「自分の意志で居る」ことは殆ど不可能と言ってよい。この事例では、50歳で停年になると理解すべきである。
 さて、停年後、再就職できない場合でも、技術士には「技術士事務所を開く」という特権がある。この特権は収入を保証するものでは全くないが、技術士でない者から見れば、大変なメリットである。(つづく)


定年の意義(その1)(2005-2-1)
 もともと停年と言う。以下会社を事例にする。停年は、当然のことながら会社の都合であって、会社員の都合ではない。
 老齢化は個人差が非常に大きいが、停年は、全員を退職させることが会社にとって有利だとして決めた年齢である。早期退職の停年扱いはあるが、停年延長はない。
 なお、役職の昇格終了年齢や解任年齢を決めている会社がある。これは事実上の停年で、そこで早期退職になる者もいる。
 さて、多くの会社員は、停年後、別の会社に再就職することを希望している。自営も選択肢の1つである。しかし、いずれも、従来同等以上の体力を要する。ここは個人差が大きいが、体力的に無理かもしれない。その場合には、社会福祉問題として考えることも必要である。(つづく)


技術士の中立・独立についてFIDICの教訓(2004-12-14 青葉堯)

 エンジニアに限らず、世界のプロフェッション(プロフェッショナル)の存在意義は、個人が中立・独立で判断をすることだと思います。つまり、中立・独立は技術士全体の当然の主張で、特定グループだけの主張ではないということです。
 ここで、30年前のFIDICの教訓を思い起こします。1974年10月、日本技術士会の一部が、FIDICに加盟しました。しかし、技術士会会員には、中立・独立でない者がいるとの内部情報により、技術士会全体が加盟する交渉はできなかったと伝えられています。
 FIDICの会員は、職業倫理から、中立・独立でなければならないとされています。当時は、職業倫理の深い意味を理解できなかったのだと思います。技術士会では、会社に所属する(経営者を含む)会員を、中立・独立でない会員と分類しました。私は、このように「形式」で人間にレッテルを貼るのは、発展途上国の特徴だと思います。
 当時の日本では、民主集中制として有名な方法が一般的でした。それは、決まるまでは個人の意見を言えますが、決まった以上は、個人の意見は言えないという方法です。これは宗教に似ています。私は、政党や思想団体は宗教の性格があると思います。つまり、一旦指導者が決めたことは絶対としなければ組織の維持ができません。
 しかし、国家や自治体ではどうでしょうか。もちろん絶対君主の国はあります。現在の日本国では、各個人が宗教、政党、思想に入ることは自由ですが、他の個人に強制することはできません。このホームページの団体ではどうでしょうか。特定の宗教、政党、思想を持ち込む人はいないでしょう。会社ではどうでしょうか。
 日本の多くの人の会社に対する考え方は、昔の藩に似ています。つまり、社長は絶対君主ですから、会社に所属する者は、「技術士であってもなくても」、個人の中立・独立はありえません。世界の人の考え方は、これと全く違っています。技術士に相当するハイクラスのエンジニアは、「会社に所属していてもいなくても」、プロフェッションの社会的責任として個人の中立・独立を主張します。
 今日はここまでにします。現状分析して形式で分類し、結局は悪口になってしまうよりも、理想を画いてそれを実現するように努力することを考えましょう。


外国人には正しい日本語で(2004-12-6)

 試験で良い点をとったからといって、正しい日本語ができる証拠にはなりません。
 日本語には、試験に限らず日常生活に必ずしも必要でない敬語や謙譲語があるからです。
 ここで、非常にやっかいなことがあります。
 それは、日常の言葉(書き言葉も)は、すべて方言(東京弁も方言)だということです。方言は幼児期に形成されるので、自分で意識することができません。
 方言では、敬語や謙譲語も正しい日本語とは異なります。そこで、外国人が学んだ正しい日本語で解釈すると、外国人に対して「威張っている」ことになる方言があるのです。
 さすがに新聞(全国紙)にはそのようなことはありません。特別な校正システムがあるからですが、これは例外です。
 方言の修正は自分では困難です。しかし、外国人は正しい日本語を学んできますので、私たちも、正しい日本語を学ぶ努力をしなければなりません。
 この趣旨は、このページにたびたび出すことにします。


 資格の目的(2004-11-26 青葉堯)
 プロフェッショナルエシックスは、資格の目的によって大きく異なります。
 資格には、役所の機能を代行するものがあります。個人の資格であっても、役所の機能を一部代行する資格では、個人を主張すべきでありません。役所は国民全体に奉仕する特別の機関だからです。
 日本の技術士には、役所の機能を代行する部分はありません。役所に原則として技術士(登録者)がいないのには、このような理由があります。
 これは、技術士側の主張でもありました。戦争の焼け野原で、先輩達は、「国家の方針より個人のエシックスを優先する誇り高いエンジニア」が日本にいれば、戦争は防げたはずだと、熱く論じたと伝えられています。この先輩達が技術士を作つたという原点を決して忘れてはなりません。


 エシックス試験問題研究の限界(2004-11-16)

 私は、エンジニアリングエシックスを積極的に主張してきましたが、これが被害者を出すのではないかと少し心配になりました。
 法律に従わなければ、理由の如何にかかわらず、処罰されます。良心や倫理に従ったからだと言っても、相手が法律に反しているからだと言っても、免責されません。正当防衛が処罰されないのは、それを決めた特別の法律があるからです。
 さて、エンジニアリングエシックスに基づいて内部告発したとします(米国のテキストにはそのような記載がある)。
 日本の技術士は、他の資格(弁護士、医師、米国PEなど)に類例のない強力な秘密保持義務がありますので、理由の如何にかかわらず(ここがポイント)、厳罰(懲役1年)に処せられることがあります。
 米国では、その心配はありません。なぜなら内部告発者を保護する強力な法律が多数あるからです。米国の法律には、秘密保持義務免除の規定、報償の規定があります。
 日本でも内部告発者を保護する法律はあります。しかし、日本の法律には、秘密保持義務免除の規定も報償の規定もありません。
 日本の法律では、は内部告発者に不利益な扱いをしてはならないとしていますが、人事考課など自由裁量の範囲までは効力が及びません。つまり、内部告発とは無関係だとして、配置転換されることは防げません。ボーナスや退職金は恩賞ということになっていますから、もらえないこともおきます。
 エンジアリングエシックスの試験問題を研究しても、その通りに実行できないこともあります。試験は模範解答通りにするとして、実際に行動するときは、日本の実情を十分に考慮して下さい。


安全保障輸出管理に係わる技術士(2004-11-14)

 「安全保障輸出管理は、技術士の手で」は、日本の企業の実態を認識させる重要な記事である。
 ただし、東芝ココム違反事件として記されているが、これは東芝機械(一部上場会社)のことである。東芝は3分の1の株式を保有するが、東芝は事件に関係ない。また事件の内容も自由主義陣営の安全を脅かすようなことではなかった。(当時私は東芝で働いていた。)
 歴史が正確に伝わらなかった。
 だからこそ、今日、「日本は世界に対して申し訳ないことをしてしまった」と思っている国民は、多分いない。従って法律(国内法)の整備が不十分である。
 安全保障輸出管理は、良心や倫理では済まない。法律で厳しく取り締まらなければ効果がない。例えば、技術のことを人まかせにしてハンコだけ押すような輸出管理責任者を厳罰にする法律、また、安全保障輸出管理責任者は技術士でなければならないとする法律などは効果的だと思う。
 法律が未整備でも、技術士が経営層になり、自ら責任者になることはできる。
それができない場合には、技術士は、責任者にアドバイスする立場を主張することができる。
 しかし、国際問題は個人の良心や倫理が通る世界でないことを再認識することが必要である。口にすべきでないが、最後は武力であろう。この視点に立てば、国家は、利敵行為を極めて厳しく取り締まる。


協同組合の趣旨(2004-11-4)

 近代的協同組合の発祥は、1844年英国のロッチデール公正開拓者組合とされている。マルクスの資本論刊行(1867年)より古い。
 協同組合のアイデンティティに関する声明がある(1995年国際協同組合同盟)。
 定義:協同組合は、共同的に所有され民主的に管理される事業体を通じて、共通の経済的・社会的・文化的なニーズと熱望を満たすために、自発的に結びついた人びとの自治的な結合体である。
 価値:協同組合は、自助、自己責任、民主主義、平等、公正、連帯という価値を基準とする。協同組合の組合員は、協同組合創設者たちの伝統に基づき、正直、公開、社会的責任、他者への配慮という倫理的価値を信条とする。(以下略)
 さて、日本の協同組合は、生協、農協、信用組合など多数あるが、事務局が強大になったために、大きな問題が生じている。
 その第一は、特定の政党・宗教団体・思想団体に利用されることである。
 政党・宗教団体・思想団体は、党首・教祖・導師が居て、従わない者を排除しなければ成り立たない。協同組合は、これと正反対である。従って、組合にこれら他の団体の論理を持ち込む者には賛同しない、と自覚すべきである。
 その第二は、所属と考える者がいることである。
 強大な事務局には、多数の従業員がいる。事務局の論理では、組合に所属する者は、上司の指示に従うべきである。これは第一の問題を生じる原因でもある。
 協同組合では、事務局以外には、所属する者はいない。従って、組合で上司のような態度をとる者(部下のような態度をとる者も同じ)には賛同しない、と自覚すべきである。


 PEは外国では職業名(2004-10-20)

 米国PEは、会社に勤務する者多数ですが、会社に勤務するかしないかに関係なく、仕事がPEですから、職業名は「PE」です。
 ここで英語で、「資格は Professional Engineer だが、職業は会社員である」と説明したら、わけがわかりません。
 しかし、日本語で言うと、もっともなような気がします。その理由は下記です。
 「他の職業に就いたら解雇」としている会社があります。そこで、技術士になると解雇ではないかと心配する会社員もいます。技術士が職業名だからこそおきる心配ですから、「技術士は資格名で職業名でない」と言えば、心配なくなると考えたりします。
 そこで、前例として、米国PEは、会社に勤務する者多数だから、「PEは資格名で職業名でない」と日本語で説明したりします。
 英語では説明困難です。
 なぜなら、「組織に所属すること」を職業と言うのは、多分、日本だけの特殊事情だからです。どこの国に行っても、仕事そのものを職業と言います。
 ところで、会社から見れば、会社員の心配など見当違いですが、もし心配なら、こんな議論をするよりも、試験合格だけにして、登録をしないことです。ちなみに業務上の特典の多くは試験合格者に対するものです。登録をすると、他の資格(弁護士や米国PEなど)に類例のない強力な守秘義務(違反は懲役1年)を課せられます。
(この議論は試験には使えませんので念のため)


技術士の秘密保持義務は強力(2004-10-15)
 技術士法は、技術士の義務を定めています。
 信用失墜行為の禁止、技術士の秘密保持義務、技術士の公益公益確保の責務、技術士の名称表示の場合の義務、技術士の資質向上の責務です。
 ここで、秘密保持義務違反には、一年以下の懲役とあり、他の資格に全く類例のない厳しい罰則です。このような非常に厳しい法的義務が、技術士を他の技術者と明確に区別するのです。
 さて、技術士の本当の特権は、技術士という名前だけで「事務所が開ける」ことにあります。これは、技術士法による厳しい義務、また、技術士倫理要綱による厳格なエシックスが課せられているために、社会的信用がつくからです。またこれは、名称の独占が長く続いたことから生じた確固たる伝統でもあります。
 事務所を開くということは、独立自営に他なりません。しかし、将来これができるということが、会社員にとっては、会社への忠誠心を疑われるのでないかという心配にもなります。
 会社から見れば、会社員の心配など見当違いですが、しかし、登録の必要がないのにわざわざ登録してはなりません。
 試験合格者と登録者を混同しない注意が必要です。業務上の特典の多くは試験合格者に対するものです。
 登録すると厳罰の対象になります。技術士だけに課せられる厳罰は、技術士だけは信用できるという特権でもあります。
 一般に、秘密保持義務は、当該事案だけで、技術士のように、全てに適用されるようなものではありません。日本では軍事スパイでも一般人は捕まりませんが、技術士だけは捕まります。技術士だけは内部告発も処罰されます。正当な理由があれば「別」ですが、秘密保持義務は国会証人喚問の証言を拒否できる程強力ですから、普通に考える程度の理由では「別」になりません。


 技術者の就職環境(2004-9-26)

 最近の就職環境は昔と異なる大きな問題があります。
1.今の時代、大企業への就職は難しく、中小企業への就職は易しい、ということはありません。大企業をやめてから中小企業に行くことも難しくなっています。(注:天下りは例外)
 会社の大小は問題でなくなったからです。中小企業だから経営基盤が弱いとか、技術力が低いとかいうことはありません。(注:テレビに出る大企業は例外)
2.就職の形は多様化し、正社員とは限りません。ただ、1つの重要なポイントがあります。それは継続的に同種の仕事をしているかどうかです。私は、4年が目安と思います。つまり、技術・技能の習得に必要な期間です。(注:PEの参考事例)
 最近の若者での大きな問題点は、フリーターの増加です。フリーターでは、技術・技能の習得は困難です。実態がフリーターなのに、就職しているように、あるいは独立しているように見えることで、問題が隠れ、さらに深刻化しています。
(情報源は理工系大学の就職担当教員)


技術者の意味と資格の説明(2004-9-22)

 日本語では「技術者」と一概に言いますが、英語では「ENGINEER」が特別の言葉であることを説明しておきます。
 「技術者」には、「ENGINEER」に該当しない者が含まれます。その第一は技能者です。日本では、技術者の仕事に技能者が著しく進出し、事実上区別がつかなくなりました。その第二は経営者です。日本では、理工系大学出身の経営者が、自分ではENGINEERと認識していないことがあります。
 ENGINEERは、教育と経験により得た能力を用い、個人が責任を持って公共の福祉と安全を守り、創造的な仕事をするPROFESSION(PROFESSIONAL)とされています。
 世界史を見ると、科学技術の進歩には、PROFESSIONALだけでなく、AMATEURの果たしてきた役割が非常に大きいことがわかります。AMATEURは、公共の役に立たなければならないというという制約がなく、自由に活動できるからです(PROFESSIONALとAMATEURはLEVELの違いではなく立場の違いです)。
 PROFESSIONALは、公共の役に立つという重大な使命があります。世界のPROFESSIONALは、公共の役に立つ仕事をして正当な報酬を得、お金儲けはしないと、公言(PROFESS)している誇り高い人々です。
 欧州中世のGUILDでは、徒弟制度で後継者の育成をし、同僚審査(PEERS REVIEW)によってPROFESSIONALのLICENSEを作り、維持してきました。世界のENGINEERはその伝統によっています。その誇りは、国家の方針より個人の倫理を優先するほどです。
 現代では、徒弟制度を大学教育、同僚審査を国家試験(相当)としています。
 日本語では「資格」と一概に言いますが、英語では3つに区別されることを説明しておきます。DEGREE(修了)、CERTIFY(検定)、LICENSE(業務)です。
 日本では、技術士を応援するつもりで、学問を極めた人が博士、技術を極めた人が技術士と解説した人がいましたが、「技術士はDEGREE」と誤解する表現です。
 ENGINEERのLICENSEは、技術士以外にも多数あります。GUILDの伝統がない日本では、法律で多数のLICENSEを作ったという経緯があります。
 LICENSEには、基本的人権(職業の自由)を制限する「LOCALの政治問題」(議会で審議する)になるものがあります。例えば地域住民の職を確保するため、地域外の者にLICENSEを出さないなどです。
 技術者の国際化を総論では賛成でも地域各論になるとそうはいかないのはこのためです。ここでとくに米国と日本の立場について簡単に触れておきます。
 米国は世界唯一の超大国で、技術も最優秀です。技術者が国際化すると、外国の出稼ぎ技術者が地域住民の職を奪うことになり、一方、外国への出稼ぎ技術者はごく少数ですから、技術者の国際化事情は、ローカルの視点で進んでいません。
 日本は、経済力も技術力も米国に次ぎ、世界で強大なものになっています。従って技術者の国際化事情も、ローカルの視点で米国に類似です。
 なお、場所が外国でも日本企業まはた日本資金での仕事は国際化とは言いません。


技術士資格の理解(2004-8-25)

 1945年で日本の社会制度は大きく変わりましたが、それ以前(昔)の感覚も残っています。博士についても、例えば、昔は勲章、今は卒業証書。技術士も、昔だったら顕彰額、今は運転免許証でしょう。昔と今の違いは、権威や価値ではなく、立場にあります。つまり、昔は仕事を終わった人、今は仕事を始める人です。
 先進国では、仕事を終わった人への資格は必要ないと思います。昔の日本は先進国でなかっただけです。
 資格を得る目的は人によって大きく異なります。資格には、まず、デグリー(博士など)、サーテファイ(技能士など)、ライセンス(技術士など)の3つがあり、さらに、細分化されています。自分の目的を明確にし、目的にあった資格を得ることがポイントです。
 とくに、デグリーとライセンスを混同しない注意が必要です。デグリーは、職業にはなりません。デグリーはどこの学校かが大問題です。例えば、官僚になるには東京大学卒業は必要でないことになっていますが、実績を見れば、東京大学卒業は非常に強力だとわかります。
 ライセンスは職業に直結しています。技術士はデグリーでなくライセンスです。
 博士がアカデミックデグリーで技術士がプロフェッショナルデグリーと解説した人がいました。技術士を応援して言ったことで、結構役に立つ解説ですが、デグリーとライセンスを混同し、世間の誤解を招く議論です。しかし、これは会社員の技術士の間ではおおむね好評でした。その理由は次によります。
 資格名と職業名とが同じ名前のものがあります。その職業に就いている者にとっては、同じ(医師や弁護士など)であることが、世間でわかりやすく、有利だからです。
 技術士を職業名にするのはそのためです。技術士は資格名で職業名ではないとわざわざ断ったりすると、世間の人にはわけがわかりません。
 わからないものには関心を持てませんから、世間での技術士の知名度はあがりません。
 技術士が職業名ではないと言う理由は、技術士の大半を占める会社員が、自分の職業名は会社員だ(一般的に会社は兼業禁止)としているからだと思います。
 会社員の技術士の間でおおむね好評であったのは、デグリーであれば、職業にはならないので、会社ににらまれるおそれがないと思うからです。これも誤解であることは言うまでもありません。
 ちなみに、米国PEは、会社に勤務する者多数ですが、職業はPEだと明確に主張し、世間にわかりやすくしています。


下記は経済産業省からの通達ですが、ご承知されていた方が良いと思います。(3/25)
コンプライアンスの一環とも思います。
平成16年3月23日 経済産業省
個人情報の安全管理の徹底について(要請)
 民間事業者による個人情報の漏えい防止対策については、これまでにおいても、経済産業省として、指針の制定等を行ってきたところですが、個人情報漏えい事件が相次いで発生していること等を踏まえ、来年4月の個人情報保護法の施行も視野に入れて、別添1の通り、更なる安全管理体制の徹底を図ることを決定いたしました。
 また、IT関係省庁連絡会議幹事会においても、民間の保有する個人情報の情報管理の徹底について、別添2の通り、申し合わせが行われました。
 つきましては、貴団体におかれましても、漏えい等の発生時の連絡体制等について、下記の通り、貴団体及び傘下の企業等に対して徹底されるとともに、貴団体及び傘下の企業等における個人情報の情報管理の徹底を図るよう改めて周知及び指導いただきますようお願いいたします。

1.省内の業及び団体所管課に個人情報安全管理責任者を置きます。貴団体の個人情報安全管理責任者は、経済産業省産業技術環境局技術振興課長となります。
2.貴団体及び傘下の企業等において、個人情報漏えい事件等が発生した場合は、当該企業等から、上記個人情報安全管理責任者に即時に連絡を行うよう徹底をお願いいたします。
3.なお、近時の事案を踏まえ、貴団体及び傘下の企業等において、保有する個人情報のアクセス管理の徹底、個人情報の情報管理体制の整備、企業の内部関係者による個人情報の持ち出しの防止に係る対策、外部からの不正アクセスの防御等情報管理システムの堅牢化及び個人情報に関する従業者・委託先の監督体制の整備などを行うことにより、個人情報の情報管理の徹底を図るよう改めて周知及び指導いただきますようお願いいたします。
4.また、平成17年4月1日に個人情報保護法が施行されますが、経済産業省では、内閣府が定める基本方針に沿って、当省所管企業、業界団体が対応を行う場合の具体的対処方針を「個人情報の保護に関する法律に基づく経済産業省ガイドライン」として作成、公表することとしております。貴団体及び傘下の企業等が個人情報の安全管理体制等の整備を行う際には、当該ガイドラインを参照するよう周知及び指導いただくとともに、必要に応じて、貴団体における自主的なガイドラインの策定・見直しも検討いただくなど、常に十分な個人情報の情報管理の徹底が図られるようお願いいたします。
以上
別添1 個人情報の安全管理体制の徹底について
平成16年3月3日 経済産業省
民間事業者による個人情報の漏えい防止対策等については、これまでにおいても、当省として平成元年4月に「民間部門における電子計算機処理に係る個人情報の保護について(指針)」を制定(平成9年3月改正)し、かつ、商務情報政策局情報経済課を取りまとめ窓口として対策を講じてきているところである。また、個別に事案が生じた場合には当該企業、関係団体等に対して指導・通達を行ってきたところであるが、さらなる安全管理体制の徹底を図るため、以下の体制を敷くこととする。

1.省内業所管課に、個人情報安全管理責任者を置く。当該責任者は、原則として当該課の課長とする。
2.関係業界に対し、傘下の企業について個人情報の漏えい等の事件が発生した場合には、即時に当該企業の所管課の安全管理責任者に対し連絡を行うべきことを徹底する。
3.当該安全管理責任者が連絡を受けた場合、即時に商務情報政策局情報経済課長に報告を行い、事後措置について協議を行う。
4.省内の情報共有を徹底するため、各局等政策調整官からなる「個人情報安全管理連絡会議」を設置する。議長は、大臣官房企画課長とする。
5.平成17年4月1日に個人情報保護法が施行されるが、内閣府が定める基本方針に基づいて、当省所管企業について個別事案が生じた場合の対応を行う場合の対処方針「個人情報の保護に関する法律に基づく経済産業省ガイドライン」を作成する。かつ、消費者及び企業にとっての透明性を確保するため、当該ガイドラインを公表することとする。
別添2 民間の保有する個人情報の情報管理の徹底について(案)
平成16年3月12日
IT関係省庁連絡会議幹事会申し合わせ
近時、民間の保有する個人情報の大量漏洩事案が多数発生しているところである。このような事案の増大はIT社会の健全な発展にとって、憂慮すべき問題になってきている。
このような状況に鑑み、政府としては、IT社会の実現に向けて、これまで以上に国民の信頼を得ることが必要であるという認識の下、民間の保有する個人情報の情報管理を徹底するため、下記の対策を講ずることとする。

1. 関係省庁は、所管の業界等に対して、個人情報の情報管理の徹底を、改めて指導すること。
   特に、近時の事案を踏まえ、保有する個人情報へのアクセス管理の徹底、個人情報の情報管理体制の整備、企業の内部関係者による個人情報の持ち出しの防止に係る対策、外部からの不正アクセスの防御等情報管理システムの堅牢化などを行うよう指導すること。
2. 関係省庁は、民間の保有する個人情報の漏洩事案の再発防止のため、所管の業界等に関する個人情報保護ガイドラインについて、必要に応じて、その策定・見直しを検討し、または関係者に対して策定・見直しを検討させるなど、常に十分な個人情報の情報管理の徹底を図ること。
3. 関係省庁は、所管の業界等に対して、個人情報の漏洩の事実を把握した場合には、直ちに所管省庁に報告するよう、周知徹底すること。


「科学技術者の倫理」は誤訳かとの質問に回答(2004-1-4)
 「科学技術者の倫理」は「エンジニアリングエッシクス」を訳したものですが、皆さんからこれは誤訳かとの質問がありました。
 明治政府が誤訳したと思います。
 明治政府は、外国語を何でも日本語におきかえました。サイエンスを理科としたのは有名です。エシックスも倫理としました。ただし、倫理は古代中国の文字で、英語が伝わる以前から日本で使われ、意味はエンジニアリングエシックスとは全く違います。
 倫理が人のふみ行うべき道(個人的内面原理)であるのに対し、エンジニアリングエシックスは、プロフェッショナルなエンジニア同志の決めごと(一種の共通ルール)で、原理的に両者は同居しません。 私は、只今から、この議論では「倫理」の文字を使うのをやめ、「エンジニアリングエシックス」の文字を使うことにします。
 ここ迄の議論は試験には使えませんので念のため。次からは試験に使えます。
 まず、「科学技術者の倫理」の本を良く読んで下さい。誤訳もあることも承知の上で、熟読しなければ理解できない難解な本です。話題になる割には良く読んだ人は少ないのです。
 この本は、工科系大学の「エンジニアリングエシックス科目」の教科書で、そのポイントは、コードオブエシックスです。
 米国PE試験の第一次試験(FE試験)は、ETHICS問題として次の3つが出題されます。CODE OF ETHICS FOR ENGINEERSを理解しなければ解答できない問題です。
1. Relations with Clients
2. Relations with Peers
1. Relations with Public


科学技術者の倫理とエンジニアリングエシックスとの違い(2004-1-1)
 この議論は試験の解答には使えません。
 「科学技術者の倫理」の本(日本技術士会訳編)は、「ENGINEERING ETHICS」(米国の大学教科書)を翻訳したものです。
 しかし、「エンジニアリングエシックス」は日本にない概念で、日本語に翻訳不可能な概念とも言えます。「エシックス」(複数形)は、日本語の「倫理」とは非常に異なり、簡単に言って、職業仲間の取り決めといったものです。
 これが日本にない理由は、日本には成文化された詳細な法令があり(イギリスには憲法もない)、法の網は社会生活の隅々にまでかぶせられているからです。一時、大学の自治とか、民事不介入とか言われましたが、学内暴力や家庭内暴力に対応するため、法の抜け穴は塞がれています。
 さて、英語では、ロー、モラル、エシックスは別々の言葉です。広辞苑には、ローは法、モラルは道徳(倫理とも書いてある)とありますが、エシックスの項目はありません。広辞苑によると、倫理は、礼記(漢時代の書)にあり、「人倫の道」とのことです。これは明らかにローやエシックスとは違う意味ですが、井上哲次郎(1885生)がエシックスを倫理学と訳したために言葉の混乱を招いたものと思います。
 言葉の混乱は、国家公務員倫理法にも現れています。礼記伝統の倫理は、個人だけのもので、集団を対象とする法(規則、要項、マニュアル、コード、ルール)と同居しません。だから倫理法やコードオブエシックスで言う倫理は、ローやエシックスではあっても、倫理ではありません。


倫理(エシックス)の解説(2003-10-29)

 日本語の倫理には、モラル、エシックス、ローの3つの意味がある。まずこれを明確に区別することが必要である。
 さて、それはさておき、その何れも、社会の公序良俗の上に成り立っている。しかし、この公序良俗は、時代により、場所により、異なっている。ここで大きな問題は、国によって異なることだ。日本は、世界とくに欧米諸国に比べて、かなり特異である。
 これを端的に示す言葉がある。「日本の常識は世界の非常識」。その事例を挙げてみる。
1.議論はしても和を乱してはならない。
 決まるまでは反対しても、一旦決まったら、一致団結する。
2.和を乱す者は、江戸の仇を長崎で打つ。
 和を乱す者は、別のことで制裁する。
 さて、エシックスの問題は、試験問題に出るような簡単なものではない。ただし、欧米書を根拠とする試験問題では、日本の社会では、架空の世界になってしまうが、点を取るためと割り切って、根拠となる文献通りに解答すべきである。
 アメリカでは、ホイッスラー(一種の内部告発者)は賞賛されるが、日本では、江戸の仇を長崎で取られて制裁される。
 次の有名な課題は試験には出ない。正解を書いてある文献がないからだ。エッシクスは非常に重いテーマであることを理解して欲しい。
 命令されてしたことは、命令した者に責任があり、命令に従っただけの者には責任がないか。
 命令に従っただけの者が責任を取らされ、命令した者が責任を免れている事例数知れず。

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倫理(エシックス)の解説その2(2003-10-31)

 日本語の倫理には、モラル、エシックス、ローの3つの意味があると述べた。
 議論するときはこの3つを別々にしないと議論がかみ合わない。欧米では初めから言葉が区別されている。欧米のエンジニアはエシックスを基盤にしている。
 参考までに文献(ウエブスター)の記事を紹介する。色々な意味が書かれているが、エンジニアならこれだと思う。
・モラル(moral) principles or considerations of right and wrong action or good and bat character
・エシックス(ethics) the principles of conduct governing an individual or a profession
・ロー(law) a binding custom or practice of a community
 ちなみに広辞苑では、モラルは道徳とある。道徳は、人のふみ行う道で、外面的強制力を伴うものではなく、個人の内面的な原理とある。エシックスは項目がない。ローは法とある。法は、社会生活維持のための支配的な規範とある。
 広辞苑にエシックスの項目がないことで、日本にエシックスが普及していないことがわかる。倫理の項目はあるが、道徳と書いてあって、お手上げである。ただ、ここに、エシックスに井上哲次郎があてた訳語が倫理だとの記載があるのは興味深い。


技術者資格の理解(2003-9-18)

  漢字の「資格」は、英語のDEGREE、CERTIFY、LICENSEを混同していますので、少なくてもこれを明確に区別することが必要です。
 DEGREEは、学校修了証明で、就職の条件です。また、CERTIFYとLICENSEの取得条件にもなります。
 CERTIFYは、試験合格証明で、能力の目印です。一般大衆は、重要な専門的な仕事を初対面の他人に依頼しなければならないことがおきますが、そのときに能力を見分けることができる目印になります。
 LICENSEは、免許で、業務独占権です。LOCAL即ち国家または地域の議会が「この地域では他の者は何々をしてはならない」と決めたものです。他の人にとっては、公益のためとは言え、個人の自由即ち基本的人権が制限されるので、必ずLOCALの政治問題になっています。
 なお、ここで言う資格は、個人の資格に限ります。従って、資格者の仕事は、企業等で行うものであっても、資格者個人の責任になる前提です。
 世界の技術者資格の主流は、公益の立場から民間活動を制限するLICENSEです。しかし、中にはLICENSEでないものがあります。とくに理解が難しいのは、同じ資格に、LICENSE部分と、CERTIFY部分があることです。
 例えば、米国では、技術者資格をLICENSE と定義しつつ、INDUSTRIAL EXEMPTIONとしています。つまり、同じ資格でありながら、LICENSE部分とCERTIFY部分があります。ここで、LICENSE部分は、事実上、CIVIL(関連の機械・電気等を含む)です。
 しかしながら、先進国(日本も)では、CIVIL以外の産業が大きく発達しました。近い将来、先進国では、技術者資格も、LICENSEが事実上不可欠でなくなって、CERTIFYに移行する可能性があります。
(補足説明)
 技術士法には業務独占規定がなく、従って、技術士はLICENSEではありません。技術士のモデルであった米国PEが、LICENSEとしながらも、INDUSTRIAL EXEMPTIONでLICENSE部分は事実上CIVILでした。しかし、日本はINDUSTRIAL製品を外国に輸出して外貨を稼ぐしか生きる道がない状況でしたから、あえてLICENSEを外したのだと思います。
 その後、旧建設省関係で、独自に技術者制度を作り、そこに技術士試験合格者が無試験で登録できるようになったことから、CICILの技術士が激増したという経緯があります。
 現在の日本は、当時想像もできなかった技術先進国になり、製品の輸出で外貨を稼ぐ構造は益々大きくなっています。昔の先輩がそこまで見通していたとまでは言えませんが、少なくても先進国を目指したとは言えます。


就職情報の事前把握(2003-8-30)
 就職学と称して学生に言っていることがある。
 日本では、職業選択の自由があるが、誰もが希望する職業に就けるわけではない。例えば、医者になるには、医科大学に行く必要がある。中央の高級官僚になるには東大、北海道の高級官僚になるには、北海道大学に行く必要がある。
 医者はそのとおりだが、官僚にはそんな決まりはない。しかし、実績を見ると確かにそうだ。
 これほどはっきりしなくても、類似のことは世間に数多くある。公募に応じても、採用される見込みがなければ、時間の無駄にすぎない。
 採用される見込みがあるかどうか、事前に詳しく情報を得る必要がある。これは、就職情報誌やインターネット情報では得られない。わかりやすく言うとコネしかない。学生の場合、学校の紹介は1つのコネである。
 一流大学は一流企業にしかコネがない。二流大学は二流企業にしかコネがない。学生は、この状況を、就職活動を始める前から熟知しなければならない。
 なお、卒業した後は、学生の採用から社会人の採用に移行する。社会人は職歴が重視される。職歴とは、「定職」に就いた実績のことである。
 学生は、自分に合う職業を探すと言う。学生はそれで良いのだが、卒業したら、そんなことは言ってはいられない。生活しなければならないからである。就職浪人などは生活という基本原理を理解しない行動で、採用側から見れば、一番採用したくない人達である。
 なお、独立自営は、生活が成り立つものに限る。就職しない言い訳にするなどはもはや反社会的である。


独立自営の道具(2003-8-4)
 この討論に参加する人の大多数は、少年時代は頭が良く、難関校を卒業し、大企業に就職した少数のエリートだったと思います。その能力はとっくに失われたにもかかわらず、能力があったという記憶だけが残っていて、自分では立派な議論をしているつもりで、実はピント外れになっていることが非常に多いのです。
 この討論に参加する人は、まず、自分は何をしたいのか、本音を明確にする必要があります。本当の目的は人によって大きく異なります。その上で、視野を広げ、目的を実現する実行可能な具体策を考えるべきです。
 (税金の問題)
 必ず税金のプロフェッショナルに聞いて下さい。技術士が技術のプロフェッショナルを主張する以上、他のプロフェッショナルを尊重するのが根幹です。
 まず、わからないことがあったら、税務署の窓口に相談に行きます。税務署は、非常に親切ですが、税金を取るためですから、あわてて開業届など出さない注意は必要です。例えば、収益の見込みが立たない会社を作ったりすると、脱税工作と疑われるおそれがあります。
 (事務所や会社設置の問題)
 事務所や会社は、必要とする目的が生じたときに設置します。世間では詐欺を目的に事務所を設置する連中が多数いますので、不用意に事務所を設けると、その連中と誤認されるおそれがあります。独立当初は自宅を事務所にして、様子を見るのが安全です。
 (事務機器設置の問題)
 これは独立してから設置したのでは遅いのです。電話(FAX兼用)、パソコン(インターネット機能付)、などは、独立自営のかなり前から設置し、十分に習熟しておく必要があります。勤務先の会社で使えても不十分です。必ず自宅に設置し、個人メールも習熟して下さい。


倫理委員会の話(2003-6-16)
 この話は、新しい人にぜひしておきたい。(本ホームページに関連記事あり)
 ロー(法)とモラル(道徳)とエシックス(倫理)を明確に区別して議論しなければならない。倫理委員会の話で言う倫理とは、プロフェッショナルエシックスのことである。
 プロフェッショナルエシックスは、わかりやすく言うと、プロフェッショナルのキャッチフレーズである。つまり、あるプロフェッショナルの集団が、自分たちの優れた点を世間にアピールするものである。倫理委員会は他者からの苦情を受け付けるとしているが、これ自体が世間へのアピールである。
 某社団で、事務局を批判したとして倫理委員会にかけられた会員がいた。その時点では、技術者国際化の争いだと思った人がいたかもしれない。今になってみれば、国際化とは何の関係もなく、単に、事務局の統制に従わない者は倫理委員会にかけるという話だったと、誰にでもわかる。
 ここで、統制とはその社団の規則つまりローのことである。プロフェッショナルエシックスとは全く別物で、従って倫理委員会で議論する余地は最初からなかった。しかし、ロー、モラル、エシックスの区別さえも関心がなく、倫理委員会を統制委員会もどきに思ったのであろう。また、統制委員会となれば別の高いハードルがあることにも考え及ばなかったのでないか。詳細は省略するが、国家が国民を保護するからである。
 某社団では、今後二度と、倫理委員会を統制委員会もどきに使うことはできないであろう。ただし、この話を覚えていればのことである。だから新しい人が来るたびに言わなければならない。
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事情を知らない人に、補足します(6/18、森田、会員内のページには、詳細が出ていますが)
何年か前の技術士会総会で、私が天下りで技術士でない堀内さんという専務理事、事務局長を早く辞めてくれ、と提案し、清水君も別な側面から同様の提案をしました。
これをきっかけに、ホームページやビラまきなどで、技術士をPEもどきにすることに反対しました。
推進したい技術士が、倫理委員会に我々を提訴して、結果として、技術士会梅田会長から、注意処分(厳重だったかどうか忘れましたが)を文書で受けました。
清水君は、これに対して現在裁判を起して、梅田、堀内さんその他、我々を倫理違反とした連中と、戦っています。
私は、清水くんが戦ってくれるので、本当にありがたいと感謝しています。
なかなか、こういう重要だけど、お金もかかることだし、面倒くさいことを、これからの技術士会、会員のためにやってくれる人はいません。
実際の技術士会は、PEもどきに形式的には、改変されたので、我々は戦いに敗れたことになっています、しかし実際の世の中の動きから言えば、技術士=CEは、人数こそ少ないのですが、存在価値を増殖しつつあります。


日本の会社員技術者の考え方(2003-5-3)
 最近、外国に旅行する機会が増え、かえって日本の姿が良く見えるようになった。世界には、「ジャパンアイランド」が中国にあり、それが米国の占領下にあると思っている人が結構いる。ただ、「メイドインジャパン」が故障しないという評判は、辺境の地まで浸透している。今年訪れたチリでは、滅多人が来ないようなところでも日本製の自動車が走っていたが、どれほど大量の魚と交換したのだろうか。このようにして、日本は、米国、全欧州に次いで世界の富を獲得しているのだ。日本が黄金の国という伝説は(今は黄金でなく米ドルだが)、本当にそうなったと思う(日本独自のものづくり技術の成果であるがその議論は別にする)。
 しかしながら、日本の歴史は、時間的には今が中世で、形だけ近代化したものだと私は思う。社会体制の形式は米国・欧州と同じだが、人々の考え方は同じではない。その典型的な事例が、日本の会社員の考え方である。例えば、日本の会社員技術者の殆どは、「責任は命令した者(上司)にあって、命令を実行した者(部下)には責任がない」と考えているであろう。このような現状では、日本の会社員技術者が、米国・欧州のエンジニアエシックスの議論をしても架空の議論にしかならない。


情報能力の向上(2003-3-9)
 下記は理工学部の学生に言っていることである。
 これからのエンジニアは、情報能力が決め手になる。ここで、情報能力とは、情報を集める能力、情報をかぎわける能力、情報を表現する能力の3つを言う。
 情報をかぎわけるとは、適当な日本語がないからそう言ったが、自分に役立つ情報かどうかを瞬時に見分けることである。
 この3つの情報能力の中で、日本のエンジニアは、情報を表現する能力が著しく不足している。普通の日本人は日本語しかできないこと、しかも、その日本語の使い方が難しい、という特殊な環境が背景にあるので、余程努力しないと改善できない。
 就職試験では、文系ではどうか知らないが、理工系では、玉虫色の答をすると不合格になる。少なくても私が試験官のときはそうした。(注:技術士の試験でも同様である)
 大抵は日本語の使い方が下手なだけであるが、20年以上も日本語だけで生活していて、そんなこともわからないようでは、仲間にするのは不安、と試験官は思う。


利益の確保(2003-1-6)
 個人は、利益だけを目的として行動することがある。しかし、会社は利益だけを目的として行動できるわけではない。つまり、会社には個人とは異なる公益性がある。
 このページで、会社事業と個人事業の立場の対比が議論されるが、公益性の少ない分だけ個人事業の方がコストが安く、市場競争力があるという一面がある。
 集団は会社とは限らず、公益性のウエイトは様々である。中には、利益を目的としないとわざわざ断っているものもある。それでも、公益性を確保するためには、利益が必要である。また、集団を構成する各個人は、集団利益の有無に関係なく、個人利益が要る。このように、いかなる集団でも利益確保の施策が必要である。
 しかしながら、この話が、その集団の事務局維持のために利益が必要だという議論になってしまってはならない。
 このページに、ある団体の話として、「事務局を喰わせるために、プロジェクトの開発をして、役員は稼いで下さい、と言われることに矛盾と本末転倒を感じている」という記事が出ているが、いかにも事務局の人が言いそうな話である。これは会社にもよくある。このような本末転倒の話は、決して見過ごしてはならないと思う。


COE=世界最高水準、JABEE=必要最低水準の話を技術士に応用(2002-12-30)

 COE大学=世界最高水準=少数大学=少数技術士=技術コンサルタント、JABEE大学=社会の要求水準(必要最低水準)=多数大学=多数技術士=資格を持った専門家、というわかりやすい解説です。
 国際化には、世界の最高水準を目指す方向と、世界の要求水準(必要最低水準)を目指す方向の2つがあります。
 日本の現状が、世界より低いと認識すれば必要最低水準を目指す方向になり、世界より高いと認識すれば世界最高水準を目指す方向になります。
 日本の大学は世界より高いレベルの少数の大学と、低いレベルの多数の大学があります。日本の技術士も世界より高いレベルの少数の技術士と、低いレベルの多数の技術士がいます。
 世界より高いレベルの少数の技術士は、高度の技術コンサルタントの仕事(資格は不要)をしていることが多く(全部とは言わない)、世界より低いレベルの多数の技術士は、資格を持った専門家の仕事をしていることが多いのです。
 ところで、世界より低いレベルの技術士でも、その資格を国際的に認めてもらう必要は現実には発生しません。なぜなら、個人の能力とは別に、日本の科学技術が、事実上世界の最高水準にあるため、実際に外国で仕事をする上では、資格の有無に関せず、日本の技術者を尊重せざるをえないからです。
 ここで、実際に外国で仕事をする上では、と言ったことがポイントです。外国で仕事をするとは、その国の国民(国籍とは言わない)として働くことです。
 日本の組織から派遣されてする仕事は日本の仕事で、これに当たりません。
 実際に外国で仕事をする日本の技術士は非常に少数で、殆どの技術士は日本国内(外国出張はある)だけの仕事です。世界の必要最低水準を議論する相手がいません。なお、国際化を名刺の肩書きレベルで議論することだけはやめましょう。
 さて、日本の大学は、少子高齢化の時代をむかえ、大学の生き残りをかけて、世界最高水準を目指すか、必要最低水準を目指すか、厳しい選択を迫られています。技術士の場合は選択しなくて済みます。今はできなくても、将来は世界最高水準を目指すという方向でよいからです。世界より低いレベルでよいのだと開き直っても技術士の評判が良くなるわけではありませんから、余計なことは言わないようにしましょう。

(解説)COE(センターオブエクスレンス)
*「世界最高水準」に注目21世紀COEプログラムは、我が国の大学が世界のトップレベルの大学と伍して、教育及び研究水準の向上や世界をリードする創造的人材を育成していくために、競争的環境を醸成し、学問分野ごとに世界的な研究教育拠点の形成を重点的に支援することにより、活力に富み、国際競争力のある世界最高水準の大学づくりを推進することを目的としています。(平成14 年度からスタートしました。)

(解説)JABEE(日本技術者教育認定機構)
*「社会の要求水準」に注目大学など高等教育機関で実施されている技術者教育プログラムが、社会の要求水準を満たしているかどうかを外部機関が公平に評価し、要求水準を満たしている教育プログラムを認定する専門認定制度です。(平成14年度から3大学の各1コースがスタートしました。修了者は技術士第1次試験が免除されます。)


難関試験の長短(2002-12-17)
 試験について興味深い話題がある。最近のことだが、工科系大学の難関校で、入学試験の成績と入学後の成績を比較する調査をした。同時に、高校時代の成績とも比較した。調査結果はマル秘となった。なぜなら、入学試験関係者は考えたくない結果だったからである。
1.高校時代の成績が良い学生は、入学後の成績も良かった(統計で有意差あり)。
2.入学試験の成績が良い学生は、入学後の成績が良い者もあり悪い者もあった(統計で有意差なし)。
 これでは、高校の成績で入学選考をすれば、わざわざ難しい入学試験をしなくて良いということになる。
 しかし、私は、もともと成績の良い者が受験したからそうなったのだと思う。
 難関校というタイトルが重要だった。難関だからこそ成績の良い者が受験し、また、合格率が低いからこそ難関になった。
 さて、技術士試験は、もともと優秀な人材が受験すれば、試験そのものは簡単で良いという話になる。実は、技術士試験の創設時代はそうだった。しかし、優秀でない者が受験するようになって、難関のタイトルが必要になったのだと思う。合格率を下げることで難関になる。
 ところで、難関校の卒業生が高く評価されていることは事実である。その理由は、本当に優秀だからだ。学校関係者は言ってはならないことだが、優秀な人材は、もともとそうだったので、難関校に入ったから優秀になったわけではないと思う。
 技術士が社会で高く評価されているのは、本当に社会に役立っているからだ。
 もともと優秀な人材が技術士になって、社会に役立てば、ますます高く評価される。
 さて、今、工科系大学は、JABEEかCOEかの正反対の方向があると議論されている。言うまでもなく、JABEEは最低の基準、COEは最高の基準である。難関校はCOEを目指している。
 技術士は最低の基準でなく最高の基準を目指してほしいと思う。(議論は「私の生活と意見」の掲示板で)


会社員の人数 (2002-11-6)
 諸外国に比べて日本は会社員の人数が異常に多いそうである。しかし、日本では、会社の大多数が中小企業である。さらに、その実態は、家族だけ(あとはパートタイムの従業員)で、個人自営業と言うべき内容の会社が非常に多い。
 日本では、諸外国では会社でない個人自営業まで会社にしていると言ったらわかりやすい。要するに、国家が税金を取りやすくするために(節税と誤解しないこと)、個人自営業まで会社にさせているのである。
 日本の税務署が個人自営業と認めるものは、作家、医師、弁護士、技術士(これは異論が出そうであるが)など「自由業」に限られると思った方がよい。昔は個人自営業であった個人商店などは、税務署が承知しない。
 ところが、個人商店が会社になったら、思わぬ効果もあった。社長、専務、常務などの名刺を作り、出世した会社員の気分になる。実際にはそんな人はいないだろうが、テレビドラマには良く出てくる設定である。
 技術士は殆どが大企業出身者で、会社と言えば丸の内に本社があるような会社をイメージするが、実際はごく少数である。


いつまでも会社に居られる法(2002-10-15)
  会社の後輩技術者某氏の事例があります。技術的能力は人並み以下、他もとく  に優れたものはなく、しかも「低」学歴(資格もなし)で、要するに目立つ存 在ではありません。
 上司に存在を印象付けることさえ困難な状況でした。そこで、考えたのは、日 本の習慣である盆暮れの挨拶です(きちんと挨拶に行くのです)。
 また、上司の指示には、異議を唱えることなく従いました。「上官の命令は朕が命令」これが、日本の会社で生き残る一つの知恵です(いやな方も多いと思います)。個々の事案について、上司の真の意向を聞き出したことが決定的に有利でした。これは、盆暮れの挨拶から築いた長年の「秘密の関係」があってはじめてできることです。
 某氏は、正直言って会社に役立っているとは思えませんが、最高幹部の一員としていつまでも会社にいます。この個人的成功の秘訣は、自分の能力(学歴も資格も実力もない)を自覚して、できる範囲のこと(上司にゴマするには技術的能力はいらない)をしたことです。それが嫌いだからこの記事を読むに至った方には誠に申し訳けない解説でした。


ヒラ社員がノーベル賞受賞 (2002-10-11)
 日本の技術系会社員に非常に元気が出るニュースです。
 ところで、日本では、名目上の地位でしか人間を評価しない感覚がありますが、これは日本だけの現象と思った方が良いと思います。
 中国でのあるセレモニーで、某氏(最近つきあっている)は、席の順序が日本国総理大臣より上でした。セレモニーに必要な順序という「ごく普通のこと」だったそうですが、日本では考えられない状況とのことです。
 欧米のエンジニアは、「会社員であるなしに関わらず」その技術問題について「個人の責任」でサインします。実は、日本でもそうなっているものがあります。しかし、日本では、それは形式だけで、「会社員は会社に所属しているため全て会社の命令に従わなければならない」と会社員自身が思っています。昔は「上官の命令は陛下の命令」と言いました。これには、「命令されて行ったことの責任は、命令した者にあって、命令された者にはない」という有名な論理があります。
 日本の会社内での評価は、業績重視ということにはなっていますが、実際には、業績よりも会社(具体的には上司への)への忠実度が非常に高く評価されて地位が上がります。
 さて、そのような日本で、世界から地位に関係なく高い評価を受けた人間を、どう扱ったらよいのか、会社の経営者の真価が問われる事態となりました。ここは大きな期待も持って見守りたいと思います。
 


日本の技術者資格制度の現状(2002-1-22)
1.日本語の資格には「デグリー」「サーテファイ」「ライセンス」の3つがあります。これを混同しない注意が必要です。なお、「処遇」は、当事者間の評価です。東京大学卒業者と平成XX大学卒業者とは資格上同格でも処遇は非常に違います。
2.技術者の統一資格は日本にはありません。今後も絶対ないと思います。
3.技術者の資格問題では、従来はシビル(土木建設関連)が中心でしたが、産業構造が根本的に変化し、今後はシビルは相対的に著しく減少します。シビル関係に特権業務が多い(技術士ではシビル関係だけに特権があり、その他は全くない)ので、技術者資格の特権が著しく衰退することが予想されます。
4.資格は全て地域(国家)の規制で、地域外では通用しません。例外は、自動車運転国際免許証位しか思い当たりません。
5.技術者の資格の国際的相互承認はありません。少なくても日本と米国の間では今後も絶対ないと思います。
6.PEは米国の資格で、米国以外では通用しません。しかしながら、覇権国の資格ですから、法的効力が全くなくても、世界中で尊重されるということがあります。
7.技術士は日本の資格で、日本以外では通用しません。日本は覇権国ではありませんから、これをPEと言い換えたところで、他国では無視されるだけです。
8.技術士法が改正されて、PEが試験免除で技術士になれる道ができました。
ただし、これは試験免除というだけで、PE資格が日本で通用するという意味ではありません。
9.JABEEは技術者教育のカリキュラムの認定で、技術者資格ではありません。ただし、JABEEコース修了者は、「技術士補」同等と認定されます。
このような特典を付けて、JABEEコースの普及を計ったものと思います。
10.JABEEは日本のものです。これをABET(米国のカリキュラム)同等だと主張して、工科系大学を国際的な基準に合っていると認めてもらおうという運動があります。しかし、ABETでは、例えば大学の講義は120分単位(日本では90分単位)なので、現実は非常に難しい状況です。
11.終わりに重要な解説があります。
 技術士制度が改正されて、技術者として必要な基盤資格になるという話がありますが、現実そのような改正は行われていません。
 また、技術士制度が改正されて、国際的に通用する技術者資格になるという話がありますが、現実そのような改正は行われていません。


会社員の独立自営の議論(2001-7-30)
 このコーナーは元々会社員のページで、今回はその観点でコメントします。
このHPを見る人は、少年時代は頭が良く、難関校を卒業し、大企業に就職した少数のエリートだったと思います。その能力はとっくに失われたにもかかわらず、能力があったという記憶だけが残っていて、自分では立派な議論をしているつもりで、実はピント外れになっていることが多いのです。その代表例が、サラリーマンに関する議論で、終身雇用、年功序列、独立自営に至るまで、大企業会社員間だけの議論になっています。日本の実態は、殆どが中小企業、それも実質は家内企業ですから、それでは、狭い視野にしかならないのです。
 大企業会社員間では、とくに、独立自営については、自由に憧れるだけでのことで、独立できない理由を挙げ、自分が自分を説得する議論をしてしまうことが多いのです。また、リストラや定年間近の人は、失業対策としての独立自営を論じることがありますが、常識的に言って、それは無理というものです。
別項にある森田裕之氏の議論は、大企業会社員の意見と非常に違うことに気が付くと思いますが、世間では、森田氏の方が普通なのです。
 このHPはとくに独立自営を目指す人達に役立つことを趣旨としていますが、まず、自分は何をしたいのか、本音を明確にする必要があります。本当の目的は人によって大きく異なります。その上で、視野を広げ、目的を実現する実行可能な具体策を考えるべきです。参考事例は、このHPに沢山出ています。不足であれば、掲示板などで質問して下さい。先輩は大抵のことは経験していますので、適切な答が見付かると思います。


 何でも会社のように考える大間違い(2001-6-11)
 「大臣は上司で事務次官は部下だから、上司は部下を使いこなさなければならないのだ」とテレビで言っていましたが、何でも会社のように考える大間違いです。大臣は政治家(国民の代表)、事務次官は官僚(事務方の代表)です。
「政治主導」の国家原則により、事務次官は大臣の指示に必ず従わなければなりませんが、上司と部下の関係とは異なり、対立しても当然なのです。これは政治家と官僚の関係の例ですが、公益法人の会員と事務局の関係も同じです。
日本の会社は、上司と部下の関係だけでできていますので、何でも上下関係に捉えてしまうのですが、世界には上下関係では説明できないものが沢山あります。プロフェッショナルがまさにそうです。また、クラス(階級と訳すと上下関係になる)もそうです。外国に観光に行くと、チップなど出しますが、全く同じサービスに、出す側のクラスで、金額が異なります。それでいて、クラスは上下ではないのです。日本の会社員(そのOB)には非常に難解ですが、技術士は、プロフェッショナルであり、クラスであることを主張したいのです。


 外国の資格者は無試験で技術士になれる(続編)(2001-5-30)
 わかりやすく説明せよとのご要望により続編を出します。今回の技術士法改正の目玉は、文部科学大臣が認めた外国資格者は、無試験で技術士になれるという条文です。「技術士と同等以上の科学技術に関する外国の資格」としていますから、どの外国資格が「技術士同等以上」なのかが問題で、ある人はAPEC-engineer、ある人は米国PEではないかと言っています。APEC-engineerとすると、一級建築士が登録できますので、「一級建築士は技術士同等以上」となります。米国PEとすると「PEは技術士同等以上」となります。ここで、建築士にしろ、PEにしろ、試験問題が技術士とは非常に異なることは承知しておかなければなりません。建築士の議論は省略しますが、PEの試験は択一式で、合格率は50%程度です(技術士は15%程度)。
 わかりやすく言えば、現在の技術士の試験のままでは、「PEは技術士同等以上」とすることはできません。そこで、技術士の試験をPEの試験と同程度(合格率50%)に変更すればよいわけです。この条文の原案を作ったときは、「試験問題をPE並にする」ことについて技術士から異論は出ないと思われていた模様です。ところが、国会審議課程(参議院)で異論が出て、「試験問題のレベルダウンをしない、論文を残す」と言う歯止めがかかり、「試験問題をPE並に出来ない」状況になっていることは皆様ご存知の通りです。しかし、既に「試験問題はPE並になる」と思い込んでいる人もいます。これから一体どうなるのかですが、対象とする外国資格は政令で決めることになっています。
政令は未だ出ていないので、ここで技術士はきちんと主張しておかなければなりません。


 プロフェッショナルデグリー(2001-5-29)
 国際的に通用する技術者資格として、教育界の大先輩が提唱しているものです。学者の仲間には、アカデミックデグリー(博士など)があります。それと同様に技術者の仲間には、プロフェッショナルデグリーはどうかということです。ただし、欧米にプロフェッショナルデグリーの概念はありません。欧米のプロフェッショナルは、デグリーでなくライセンスです。これは技術者自身が社会的責任を強く主張しているからに他なりません。資格の中で責任があるのはライセンスだけです。ライセンスは、言う迄もなく具体的な業務(一般には独占業務)を行うためのものですから、実際に業務を行わない場合にはライセンスになりません。少し難しい応用問題ですが、APECエンジニアに登録したとして、これが政府間協定などが整備され、どこかの国で、具体的な業務(独占業務)が行えることになってはじめてライセンスとなるわけです。ただし、具体的業務となると、他国の者に地元の仕事を取られることを防止する国家の自衛原理が働くことを承知しておかなければなりません。
 教育界では、このような国家の自衛原理に抵触しない、具体的業務を行うためのものでない技術者基盤資格を考えたのではないかと思います。つまり、独占業務のある資格の受験資格の1つにこの基盤資格を利用するなどです。アカデミックデグリーと同じようなプロフェッショナルデグリーであれば国際的に通用することも可能です。ここで、技術士制度を利用することになったのだろうと思います。「技術士は資格であって職業でない」と言う技術士が大勢いたからです。アカデミックデグリーは博士、プロフェッショナルデグリーは技術士(50年の実績ある名前)と言えば日本の万人が納得し、ライセンスに抵触しないデグリーとして、国際的に通用する、また、これを学校教育の一環に取り入れるという一挙両得の名案と思ったのでしょう。
 具体的には、大臣指定の課程修了者には無試験で技術士補になれる法律ができました。ここ迄は教育界の意図通りです。次に技術士ですが、「世界最低の技術者資格」の方向に迅速かつ強力に進んでいます。技術士自身がライセンスを主張しない以上は世界最低でも何ら支障なく、教育上最も有効な方式(原則として全員合格)が望ましいからです。


 国境の壁を理解しよう(2001-5-28)
 外敵から身を守るのが国家の原点です。他国の者が地元の仕事に割り込むのを防ぐことも同じです。2つの実例を挙げますので国際化とは何かお考え下さい。ただし、ここで言う技術者資格とは、実際に仕事をするものです。以前に「技術者資格の相互承認の実績は全くない」と書きましたが、これも業務(独占業務など)の話です。技術士の議論の中には、名刺に書く程度の話がありますから注意を要します。
1.日本企業が外国に工場を建設した。その外国の町には、地元の技術者を使わなければならないという規則はなかったので、東京から技術者を派遣し、地元の技術者にお金を払わなくて済んだ。しかし、その町に工場を建設する企業は、必ず地元の技術者を使っていたのである。そのような社会で、地元の協力なしに何ごともできるはずがなく、結局は余計にお金がかかっただけのことであった。しかし、デメリットだったにもかかわらず、東京の評価は違っていた。
日本の技術者が国際的に通用した「嬉しいこと」として報告され、誤解を増幅した。
2.日本企業が外国に建設した工場で、設備を修理する必要があった。その外国の町では、地元の資格を持つ技術者を使わなければならないという規則があった。地元の資格技術者は能力は高いが賃金は安かった。東京から技術者を派遣するより安上がりで、迅速適切な対応ができた。しかし、メリットだったにもかかわらず、東京の評価は違っていた。日本の技術者が国際的に通用しなかった「悔しいこと」として報告され、誤解を増幅した。


 外国の資格者は無試験で技術士になれる(2001-5-27)
 今回の技術士法改正の目玉は、次の条文です。国際化のためと理解されています。最初の項目が、文部科学大臣が認めた外国資格者は、無試験で技術士(技術士同等ではなく技術士そのもの)になれるというものです。次の項目が、文部科学大臣が認めた指定した課程を修了した者は、無試験で技術士補になれるというものです。
 第30条の2 技術士と同等以上の科学技術に関する外国の資格のうち文部科学省令で定めるものを有する者であって、我が国においていずれかの技術部門について、我が国の法令に基づき技術士の業務を行うのに必要な相当の知識及び能力を有すると文部科学大臣が認めたものは、第4条第3項の規定にかかわらず、技術士となる資格を有する。
 2 大学その他の教育機関における課程であって科学技術に関するもののうちその修了が第一次試験の合格と同等であるものとして文部科学大臣が指定したものを修了した者は、第4条第2項の規定にかかわらず、技術士補となる資格を有する。
(参照)第4条第2項 第一次試験に合格した者は、技術士補となる資格を有する。第4条第3項 第二次試験に合格した者は、技術士となる資格を有する。
(説明)外国の資格のうち文部科学省令で定める者となっていますが、この政令が未だに出ていません。「技術士と同等以上の科学技術に関する外国の資格」としていますから、政令が出れば、その外国資格は、技術士と同等以上とはっきりするわけです。
(意見)国際化のためと理解されていることについて、ツーレイトと思います。
日本がアメリカのパートナーとして尊重される理由がなくなったから(米ソ冷戦時代にはあった)です。「アメリカの技術者資格が世界に通用する」ことはあっても、「日本の技術者資格が世界に通用する」可能性はもうないと思います。他国の資格者が地元の資格者の仕事を奪うことなど、軍事力の背景がない限り(アメリカにはある)事実上不可能です。ただし、現地の仕事を奪うような強力な資格でないとすれば話は別です。技術士については、技術士自身が強力な資格でないと思っているふしがあります。「偉いですねえ」と世界に通用するというレベルの話になっている可能性が大いにあります。なお、世界の富を独占する先進国(具体的にはアメリカ、イギリス、EU一部、日本)には、各国から出稼ぎが大勢来ます。それをどの程度認めるかはそのときの政治的な判断で、技術者資格の国際化にもその一面があります。もちろん、世界一給料が高い日本から出稼ぎに行ける国はありません(ODAや日系企業は日本の仕事なので混同しないこと)。他国では技術者資格が相互承認されていると技術士が言っているという話は、技術士の権威を認めない話です。調べればすぐにわかることで、少なくても先進国ではそのような実績は全くありません。


会社員の兼業禁止問題(2001-5-17 青葉 堯)
(このコーナーは元々会社員のページでした。会社員の皆さんに興味あるテーマを出します)
 2001年5月15日の日経朝刊に「日本IBMは兼業禁止規定を見直し、廃止して全社員に兼業を認める方向で検討中」とあります。公務員は兼業禁止ですが、これは国民の奉仕者(実は支配者)という特別の立場のため、特別に法律で定められているものです。それ以外で、日本IBMのような有力な会社が兼業禁止規定を設けていたということは、かなり多くの会社員が兼業禁止状態にあると推測されます。
 兼業禁止について、独立自営の海崎技術士(故人)は、アブセンスフィーと表現していました。同技術士が活動する業界は非常に狭いために、「たとえ仕事がなくても」一社専従(兼業禁止)でなければ、ライバル会社に情報が漏れてしまうという主張です。これで、一社としか仕事をしないからと言って多額の報酬を得ることができ、先輩はお金を取るのが上手だと思いました。
 兼業禁止の会社員は、このアブセンスフィーの状態にあります。「たとえ仕事がなくても」高い給料を貰いましょう。アブセンスフィーだから遠慮することはありません。しかしながら、会社が実績主義などと言い出したときは、これが破綻しかかっています。日本IBMの方針転換は、会社員のアブセンスフィーの消滅です。これは会社に余裕がなくなったからに他なりません。休まず遅れず働かずで、毎日会社に行きさえすれば十分な給料がもらえた時代は、もう終わりです。これからは、いくら会社に忠誠を誓っても実際に利益を与えなければ給料がもらえない「実績主義」の時代になり、兼業禁止などしていられないのだと思います。


APECエンジニア問題のフォロー(2001-5-11)
 月刊技術士5月号にAPECエンジニア登録分野の拡大についてのアンケート調査が出ています。ここに、「APECエンジニアが活躍するには二国間交渉による免除協定が必要」と記されています。これは、二国間交渉がなければ活躍できないという意味です。日本は未だどことも交渉していません。
 現在、登録開始が認められている国は、オーストラリア、カナダ、香港、韓国、マレーシア、ニュージーランドですが、これらの国のエンジニアが日本で活躍することはあっても、日本のエンジニアがこれらの国で活躍することは事実上ないと思います。権利は現地のエンジニアと同格、従って給料も現地のエンジニアと同格ですから、「日本の仕事(ODAや日系企業)」以外ではわざわざ行く人はいないでしょう。
 また、今後登録が想定される国(想定とは実現しないかもしれないということ)は、インドネシア、フィリピン、タイ、アメリカですが、アメリカが実現の見込みがないことはだれにでもすぐわかります。アメリカは、事実上50ヶ国で、交渉するだけでも非常に時間がかかるからです。また、アメリカのエンジニアは外国で現地エンジニアと同格になってもメリットなく、相互免除協定は一方的にアメリカ市場を開放するだけなので、アメリカローカルの工事業者などから反対がおきるのは必至です。
 なお、これに関連して、国際化の大きな誤解を指摘しておきます。例えば、日本企業が外国に置いた施設の補修は、現地の免許がない日本のエンジニアはできないから現地のエンジニアに依頼するということがあります。これを、「日本のエンジニアは免許がないので不利だ」と考えるのは日本人の自分勝手です。国家というものは地域であって、人ではありません。「現地の仕事は現地の人がする」のが国家の原理だからです。
 現地に住み着いて仕事をすることは、もともと現地にいる人の仕事を奪うことになるので、どこの国でも非常に厳しく規制しています。


 PEの名前と技術士の名前の取り扱いは慎重に(2001-4-11 青葉 堯)
 (社)日本技術士会では、平成13年3月から、英文表示を、The Institution of Professional Engineers,Japan(IPEJ)としました。ちなみに、それまでは Japan Consulting Engineers Association(JCEA)でした。
 英文表示は定款にありません。上記英文表示も総会で決めたものではありません(その時期に総会がなかった)。理事会で決めた形跡さえも見当たらないのです。従って、事務局が勝手に決めた形になっています。しかしながら、PEの名称は、役所(旧科学技術庁)が強く求めていたものです。
 なお、役所では、役所が英文表示を必要とする場合には、「昔から」 Registered Engineer を用いていました。これを熟知した上での行動です。日本技術士会幹部は、「役所がPEと決めた」と言っています。ただし、役所が決めた証拠はなく、役所は責任を負わずに、主張を通しているわけです。
 ここで、なぜ、役所がPEの名前を使うことにこだわるかが疑問です。同様に、基本的技術者の資格に、なぜ、役所が技術士の名前を使うことにこだわるのかが疑問です。私の想像では、役所(高等「文官」)は、もともと技術者の資格にさしたる興味はなく、ごく単純に、技術者の名前として「国際的に通用するPE」の名前、また同様に、技術者の名前として「国内で通用する技術士」の名前を使うと言えば、多数に喜ばれ、万事うまくいくと思ったのではないでしょうか。
 JABEEがリンクする基本的技術者資格は、PEの名前や技術士の名前を使わなければならないものではありません。しかし、「使えば多数に喜ばれる」と考えたのだと思います。実際、日本技術士会幹部は、大喜びしています。現在、技術士の間では、JABEEがPEの名前と技術士の名前を収奪するとの説が有力ですが、実は、技術士側が使ってほしいと平伏しているとの説も有力です。


国際化とは給料が下がることだと判っていますか(2001-4-7)
 文化と経済、サイエンスとエンジニアリングを区別して下さい。 日本のエンジニアリングは欧米の模倣との批判がありますが、リスクを少なくして新技術をいち早く取り入れ、個人の生活を犠牲にして休日返上で働き、事実上世界最高の技術力を作りました。また、日本のエンジニアは会社に忠実なだけとの批判がありますが、家庭を顧みず遅くまで残業して働き、会社を発展させ、事実上世界最高の高給取りになりました。
 欧米のエンジニアは、もともと高給取りではありません。それ以外の世界のエンジニアは低賃金です。
 国際化とは、日本の市場を、世界のエンジニアに解放するという話です。日本の市場に、安い外国のエンジニアが進出するという話です。これを全く逆に考えて、国際化すると日本のエンジニアが国際的に認められると喜んでいる人達がいます。欧米のエンジニアリングが日本より高度で、欧米のエンジニアが日本より高給を取っている時代が懐かしい人達です。
 さて、技術士の国際化即ち日本の市場開放によって、技術士の仕事に外国の安いエンジニアが進出します。それに対抗するために、技術士は、技術レベルを外国なみに下げ、給料も外国人なみに下げるという方法があるのです。これを科学技術学術審議会委員は、実にわかりやすく説明しています。技術士を「世界でも非常に低いレベルの資格」にするのだと明快に言っています。
 国際的に認められる代償は、給料が下がることなのです。だからこの議論は給料が下がっても差し支えのない60歳以上の人達でしてはならないのです。


 「エンジニアはクラス」の意味(2001-4-3)
 クラスは日本語にない言葉で、社会的優位性を主張する仲間というような意味合いです。会社内の地位には関係なく、社会横断的に、自分たちの優位性を主張します。学校仲間(東京大学卒業生はそれだけでクラス)、職業仲間(医師はそれだけでクラス)などがあります。欧米のエンジニアは、社会横断的に自分たちの優位性を主張しているクラスです。
 技術者資格は、クラスの根拠になります。ただし、欧米では、普通の技術者の資格(工科系大学卒業2−4年程度でほぼ全員が合格する)しかありません。
欧米のエンジニアのクラスはそれほど高い地位にはありませんが、クラスを作って主張しなければもっと下がってしまうので、社会横断的クラス活動にはきわめて真剣です。
 技術者資格の国際化とは、この欧米のクラス同等にすることなのですが、日本では相当に困難が予想されます。困難の第一は、日本では社会横断的にならないことです。日本の一般の会社では、資格者を特別扱いすることがなく、クラスの根拠が薄れます。困難の第二は、欧米には普通の技術者の資格しかないことです。日本のように技術が進んだ国では、欧米の普通の技術者資格程度では、日本国内で高い評価が得られず、クラスの効果が弱まります。
 さて、技術者資格の国際化で、技術士が国際的に認められるといって喜んでいる人が多数いますが、普通の技術者の資格として認められることを意味します。ここで、あえて当たり障りのある言い方をすると、兵隊の位で下士官になれることです。これまでは二等兵にしか見られなかったのだから喜ぶわけですが、技術士はもともと技術の士(中国語の兵ではなく日本語の侍)で、上級士官です。もっと当たり障りのある言い方ですが、レーバー(労働者)クラスの上位にあるエンジニアのクラスに入れてもらわなくても、ジェントリー(准貴族)クラスの下位にあるジェントルマン(&レディ)のクラスに入れてもらうように社会横断的クラス活動をするのが技術士の存在意義だと思います。


JABEEが技術士制度を利用する(2001-4-2)
 JABEEに関する個人的情報の続きです。米国PEに整合する技術者基盤資格は、JABEEコース卒業後2年程度でほぼ全員合格するもので、JEBEE民間資格(ジャパンプロフェッショナルエンジニア)とする方法、また、既存の技術士制度を利用する方法を先に説明しました。ここで重要なポイントは、JABEE側では、技術士側が「技術士を利用して頂きたいと熱望している」という理解です。JABEEに是非とも利用して頂くために、「世界でも非常に低いレベルの資格」にすると「技術士側が決めている」ということです。
 技術士の表示は、日本語しか有効でなく、英文はGIJUTSUSHIでよいのです。それを技術士会ではわざわざPEとすることに変えました。JABEEに利用してもらいたいと熱望しているサインと見られています。
 JABEE側は、技術士側がそれほど熱望するなら、考えてやってもよいという立場です。技術士側は、JABEEに利用してもらえさえすれば、APECに整合し、米国PEに整合し、国際化するとして、「世界でも非常に低いレベルの資格」にすることに全力を挙げています。


JAPAN PEはJABEEが作る模様(3-30 青葉 堯)
個人的情報ですが、JABEEがJAPAN PEを計画している模様です。
米国PEと同じ方式で、教育に直結した新しい技術者資格「JAPAN PE」あるいはカタカナで「プロフェッショナルエンジニア」です。米国PE及び類似の世界の技術者資格と整合することを目的としたものです。JABEEは文部科学省の大きなエージェンシー(建前上は民間団体)になり、JAPAN PEは、有力な公的資格(建前上は民間資格)となります。国家資格ではありませんから法律は必要なく、JABEEの一存ででき、しかも文部科学省の強力なバックアップで、国家資格以上に通用する現実的な名案です。
 これまでのJABEEの考え方では、技術士資格は、会社の評価を高める程度の実質「休眠資格」であり、これをリサイクル活用して、「JABEEカリキュラム卒業2年程度でほぼ全員が取得できるPE」にすることでした。しかしながら、本当に技術士だけで生計を立てている人がおり、「レベルダウンしない」などの政府公式見解が出たりもして、JABEEの考えるPEとは整合しそうにないことが明らかになりました。そこで、これ以上技術士にかかわることは得策でないと見て、自分で作ることを計画したものです。なお、技術士は試験免除でJAPAN PEに登録できるようにJABEEと交渉することはできるでしょう。
 ところで、技術士側は、世間のペースにワンテンポ遅れています。文部科学省が、旧科学技術庁の国家資格「技術士」より本格的文部勢力JABEEの民間資格「プロフェッショナルエンジニア」に肩入れするのは当然のことです。
技術士制度は、既得権があって根本的な改正ができなかっただけで、新たな振興などしてはもらえません。技術士法が廃止にならないことだけでよしとしなければならない客観情勢です。今更試験を易しくしたところで、JABEE新資格には対抗できません。技術士はその特徴(コンサルティングエンジニアなど)を活かした主張をするしか生き延びることは不可能なのです。


公益法人は目的を逸脱してはならない(2001-3-14)
 公益法人(協同組合を含む)と会社は目的が違います。その違いを税務署に聞いても、税金を取られるだけのことで、答はありません。当組合でも、この目的の違いを理解しない人、具体的には、組合を会社の代用と考える人が皆無ではありません。
 最近とくに、公益法人が目的を逸脱して厳しく批判されています。しかし、これを良く見ると、事務局が独断専行しています。事務局員は普通の会社員と区別がありません。事務局に任せておけば、公益法人も会社と同じようになってしまうのです。
 公益法人の目的を逸脱しないためには、まず、会員と事務局員の立場の違いを認識することです。会員の立場はボランティア精神で成り立っています。
 つぎに、会員による事務局のコントロールです。これには非常に大きなエネルギーが必要です。当組合では最初から事務局を設けていません。従って、会社のように運営されるおそれはありません。これは、会社の代わりにはならないということでもあります。


 技術士資格の国際化(2001-3-2)
 掲示板で若手技術士が討論している状況は誠に頼もしい限りです。皆さんもこれに参加しましょう。
 ところで、技術士に限らず資格の意味を考えてみました。皆さんがいやがる言い方ですが、資格はクラス(階級)を作るものです。資格には医師など、生命の危険のために規制するものがありますが、技術士は規制の必要がありません。従って技術士の資格は元々クラスの効果だけです。それでも、クラスのメンバーはその中での最も優れた人と同格とみなされるという非常に大きなメリットがあります。技術士はこれを大いに活用すべきです。技術士には非常に優れた人がいるからです。もちろん、これは、自分で「努力して」アピールするのであって、誰か(例えば役所)がアピールしてくれるなどの「うまい話」はありません。
 技術士の国際化の議論も、本当に仕事をする人達ではなく、「名刺に書く」程度の人達が議論していることが大問題なのです。その人達の議論では、相互承認とは、平成XX大学同窓会と東京大学同窓会が提携して、同じクラスだと宣言するようなものです。自分が平成XX大学同窓会メンバーだとして、「努力なしに」東京大学同窓会メンバーと同格になるということですから、もっと「うまい話」と思うかもしれません。
 国際的(ODAや日本の会社以外)に本当に仕事をしている人達は、日本人は「ずるい」という評判で非常に困っています。
 上記掲示板に「国際相互承認は絶対にできない」とありましたが、それに限らず「うまい話は絶対に実現しない」と自分に言い聞かせましょう。うまい話は大抵はずるい話です。


 CPDとは何か(2001-2-23)
 改正技術士法では、「技術士は常にその業務に関して有する知識及び技能の水準を向上させその他資質の向上を図るように務めなければならない」とあり、これがCPDの根拠となっています。ただし、技術士の場合は更新がない(米国PEあるいはAPEC Engineer には更新がある)ので、自主努力になります。
 CPDは Continuing Professional Developement で、継続教育とか自己研鑽とは意味が違うと思います。CPDは米国PEなどにあり、その基本は実務による能力向上で、CPDLog は実務の従事記録です。学会や見本市も実務の一環ですが、放送大学以外の一般テレビ視聴学習などでは世間から見識を疑われます。
 CPDは各学会で計画しています。これは米国PEあるいはAPEC Engineerの更新に対応する程度の専門技術の内容です。大学で社会人向け講義として行うなどの計画があります。専門的に絞ることができ、適切な費用で行えます。
しかし、技術士会で行う場合には、会員外の技術士も対象になること、また、技術分野が非常に広い(選択科目でも学会より広い)ので、同時に多数の活動をしなければならなくなり、莫大な費用がかかります。といって部会の講演会程度では世間から見識を疑われます。
 CPDの議論の中で、国際的整合と言われていますが、欧米では「更新」が必要です。技術士は整合しません(APECは明確でない)。元々エンジニアの資格は、エンジニアとして「最低」のレベルを表示するものですから、更新もCPDも当然のことなのです。しかしながら、技術士は「最高」のレベルですから、他人に強制されてCPDを行うものではなく、自分で「より厳しく」行うものなのです。
 多くの皆さんは、技術士は「技術者最高の資格」と主張しながら、「米国PE(あるいはAPEC Engineer)同等の資格」とも主張しています。ここで、多くの皆さんが非常に嫌がる言い方をあえてすると、社会にはクラス(階級)というものがあります。米国PEは高いステータスがあるミドルクラスですが、技術士は「最高」と言うからにはエリートクラスでなければなりません。技術士の先輩は名実共に「本当に」エリートクラスでした。後輩はその伝統を守る義務があります。まず、エリートクラスは自己犠牲が基本です。米国PEあるいはAPEC Engineerの仕事は、その方々におまかせして、自分が割り込むのは遠慮しましょう。
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JABEEの最新情報(2001-2-20,青葉 堯)
 JABEE推進者の1人から個人的に情報を得ました。元々外圧で始まったことで、ABET(米国)同等として2001年に実績を作り、ワシントンアコードに加盟申請したいという計画です。しかしながら、ABETは2000年に基本方針を転換し、それについていくことは相当困難の模様です。
 米国では、少数の必修科目を4年間で学びますが、日本ではこれは2年間で、あとはより高度の選択科目を学びます。ABET相当のコースは日本の大学には存在しません。そこで、少数ですが特別にABET相当のJABEEコースを作る計画です。
 問題は、この特別コースの卒業生に何か良いことがあるかどうかです。現在の日本の大学関係者の意見では、産業界が評価するとは思えないそうです。ワシントンアコードに加盟すれば、相互認証で国際的に認められるという大義名分がありますが、平成XX大学は東京大学と名目上は同等でも、産業界は同等に評価しないという現実は覆せません。
 なお、ABETは、エンジニアに不可欠な教育ですから、履修科目は最少で、成績が悪くてもよいのです。ここで、クラス(階級)の考え方に注意を要します。
米国のエンジニアは、高いステータスがありますが、いわゆるエリート階級ではありません。日本の有名大学は明らかにエリート階級の育成を目指しています。
 JABEEコースに何か良いことはないかと考えたとき、技術士試験の一次試験免除という名案がありました。米国PEは30万人、技術士は4万人ですが、技術士を米国並みに増員すれば魅力的と思ったようです。ところが、米国PEは建築士を含みます。日本では建築士は技術士ができる前からありました。建築士を含めれば米国も日本もほぼ同数ですから、技術士だけを増員するにはどうしたらよいのでしょうか。簡単な解決策は試験を易しくすることです。
 JABEEでは、試験を易しくして技術士を増員することにどこからも反対は出ないと見たようです。技術士は休眠資格(会社の技術力評価に1人5点という程度の資格)に見え、既存の技術士は、総合監理部門で一段上だとか言えば済むと思ったようです。
 しかしながら、技術士法改正の国会審議で、「レベルダウンしない」ことが明確になり、技術士の試験が易しくなるとは言えなくなりました。今後の試験次第ですが、もしレベルダウンしなければ、成績が悪いJABEEコースの学生は、一次試験が免除になっても合格の見込みがなく、成績が良いエリートコースの学生は一次試験もパスするでしょうから、技術士試験の一次試験免除がJABEEの名案でなくなってしまったのです。
 なお、技術士についても、相互承認されれば国際的に認められるという大義名分がありますが、ライセンスの仕事は地元の人がするのが大原則で、ODAや日本の会社の仕事を別にすれば、外国に行って現地ライセンスの仕事に日本人が割り込むことなど現実にあるとは思えません。仮に米国PEと技術士が名目上同等と言ったとしても、実際の仕事で同等に扱われることはありえないのです。
 ここで再び平成XX大学と東京大学は名目上同等でも実際は同等に扱われることはないという話になります。


技術士登録手続きに注目せよ(2001-2-11)
 4月1日技術士法の改正施行により、技術士登録の手続きも変更になるものと思いますので、とくに会社員諸氏は強い関心を持って下さい。
 その注目点は、登録申請書に「会社の印」が必要かどうかです。
 昔から技術士会には、「技術士を職業ライセンスと誤認し勤務先の誤解を生じた不幸な歴史」と言う人がいます。「会社の印」がその大きな原因です。会社の印が不要になるのが多くの会社員の「悲願」でした。
 この悲願を実現するために、「職業ではなく資格と言おう」とか「CEは職業名だから資格名であるPEと言おう」(注:米国PEは実際は職業名です)
という運動をしてきた人がいました。
 私は、会社の印は不必要であると主張してきました。なぜなら、技術士は、会社に勤務していようといなかろうと関係なく技術士という個人の職業だからです。
 会社員諸氏の多くは、この悲願が実現する技術士法改正があったと信じているようです。しかしながら、改正法律案を良く読んで下さい。そのような内容は一切ありません。
 それでも、この機会に、もともと不必要な「会社の印」を不要とする改善を期待したいものです。


 技術士はCE(2001-2-1,青葉)
 テレビドラマに出てくる会社は、丸の内に本社がある大企業で、就職できるのは、事実上難関校の卒業生に限られています。
 難関校同窓生は一種のクラス(階級)です。こういう言い方は非常に嫌がられますが、イギリスが典型的です。これは国家が決めたことではないので、修正も困難です。
 専門職業もクラスになっています。また、資格もクラスです。ただし、難関校、専門職業、資格の順で、上のクラスにはなかなか入れてはもらえません。
この厳しい現実を認識することがポイントです。ここで、資格は国家が決めることができますので、一番評価されそうですが、日本以外ではそうはいきません。
 さて、これからの時代、大企業は会社の数も社員の数も減る方向で、そこへの就職は益々狭い門になります。でも、社会全体が就職難になるわけではありません。他にいくらでも就職先があるからです。ただし、就職の考え方は大きく変わります。即ち、「就職とは入社すること」から「就職とは職を持つこと」になります。
 日本では若い人のフリーターが急に増えました。入社はしていませんが就職はしています。しかし、昔の人にはこれが理解困難です。
 技術士会の古老が欧米のコンサルタント事情について何かに書かれたことで、「職業としてではなく、臨時にコンサルタントが行われていて、会社員や大学教授も参加する」とあります。職業を所属と考えるとこういう説明になります。
欧米では、職業は所属でないので、臨時であろうが常時であろうが関係なく、コンサルタントをするときは、コンサルタントが正規の職業なのです。
 さて、技術士について一言記します。技術士はコンサルティングエンジニア(CE)を育成するために設けられた制度で、世界に類のない法律(CEを国家資格にした国はない)を作り、政府(当時科学技術庁)に技術士の振興課を置くという手厚い保護策がとられました。振興課はなくなりましたが、法律はまだあります。今回の法改正でも「レベルダウンしない」と決まり、部分的な修正に留まりました。
 古老が言われることに、「PEは資格として高いステータスを持つが、職業としてのCEは私的なものである」というのがあります。つまり、会社員が職業だからPEは職業ではない、PEという国家資格が評価される、CEは職業で国家資格でないから評価されない、という説明です。上記クラスの説明のように、欧米では国家資格より専門職業が上位です。実際に米国ではPEは職業ライセンスで、会社の命令より個人の判断を優先するという姿勢、専門職業だからこそ評価されているのです。技術士制度を作った当時の日本では、会社の命令より個人の判断を優先することができるのは中立的な立場のCEという日本では新しい専門職業しかなかったのです。今でも日本ではそうです。だから技術士はCEと言い続けなければならないのです。
 なお、国際化についても厳しい現実を言っておかなければなりません。米国PEが評価されるからといって、技術士がPEと言えば評価されることにはならないことです。米国PEは主としてシビルの若い技術者向けのもので、日本国内で受験できます。いい年をした技術士が名刺に職業でない資格名のPEと書くのだというレベルの話を米国に行ってする状況はとても想像できません。
 国際化の状況は今後益々厳しくなります。米国の利権に触れるようなPEと言ったりすれば余計風当たりが強いでしょう。日本技術士会が略称をJCEAからIPEJにしたそうですが、国際化の厳しい状況がわかってきて、まもなくJCEAに戻るだろうと思っています。


 PEは職業ライセンスである(2001-1-29)
 中国の入国書類 Occupation 欄は次のようになっています。1 Legislators & Administrators 2 Professionals & Technical 3 Clerk 4 Commerce 5 Service 6 Farmer 7 Worker 8 Others 9 Jobless 日本の書類では、会社員、会社役員と書く人が多いのですが、それに相当する欄がありません。中国に限らず世界ではこれが普通で、日本が特殊なのです。
その特殊さは、「職業に就くとは所属することである」という日本の古い概念にあります。
 米国PEは、どこに所属しようと(しなかろうと)関係なく、PEという職業で、PEは職業ライセンスそのものです。米国では誰でも知っているようなことですが、日本ではこれが理解されず、「PEは職業でなく資格である」と言ったりしました。
 昔から技術士会では、「技術士を職業ライセンスと誤認し勤務先の誤解を生じた不幸な歴史の日本」「PEは職業ライセンスでないから勤務先の誤解もない幸せな歴史の米国」などと議論したものです。
 そのような議論ができた古き良き時代、それは技術士が会社から独立することを会社がおそれた時代でした。今や会社は、現時点で役に立つ者以外は、直ちにリストラする時代です。技術士だからPEだからと考慮する余裕はもうありません。
 今更会社に忠誠を尽くすと言ってみたところで、また、高い能力を持つと国家が保証したと言ってみたところで、会社はそんなことを聞くひまはなく、実際に会社の役に立ったかどうかだけで人事考課するようになってしまいました。
 技術士のことを、CE対PE、独立対企業内、職業対資格などと内部で議論しているどころではありません。「色々な事務局」に、「実際に役に立たなかった技術士」が存在することを察知され、在来の技術士資格をスクラップして、「大学卒2年程度の技術者資格」としてリサイクルするという動きになったからです。今回の法改正では、「レベルダウンしない」ことになり、これは実現しませんでしたが、技術士内部でもめている場合でないことをご理解下さい。
別項「倫理審査規則」など内部にもめごとを誘発するようなことをしている時間はありません。


 懲戒規則はもめごとを誘発する(2001-1-26)
 弁護士会の懲戒規則は、本当に悪いことをする人が出たので、やむをえず作ったに違いありません。会を作る第一の目的を考えてみて下さい。わざわざ言わなくても、仲間が仲良くするため、もっとあからさまに言えば仲間で宜しくやるために決まっています。
 世間では、懲戒規則は、外部にアピールするために、見かけ上ある程度のものです。実際に運用可能な懲戒規則は、仲間うちのもめごとをわざわざ誘発するだけで、誰も何の得にもなりません。本当に悪いことをする人が出たら、それに対応する規則を作るのもやむをえませんが、技術士は、まだそこまで「レベルダウン」してはいないと信じます。
 ここで、くどいようですが、指揮命令で成り立っている組織の話と混同してはなりません。
 なお、本当に悪いことをする人の事例を挙げると、弁護士では法の知識を悪用する法匪、米国PEではPE名義を悪用するラバースタンプです。


 懲戒には外部の監視が必要(2001-1-25)
 本日の読売新聞朝刊に、弁護士に関して「懲戒委外部委員増」の記事が出ています。委員の過半数が弁護士という規則を改め、国民のチェック機能を強化するという内容です。懲戒とは非常に面倒なものなのです。
 ところで、論理審査規則についてですが、これを作った動機は、「大きな組織の公平・公正な運営のため」と明言されています。さらに、「外部者に依存すると労力や費用ばかりでなく審査が長期化する」とも明言されています。これで、倫理審査規則が、労力・費用・時間を節約して会員を懲戒する規則だということが明確です。
 多くの日本人は、法(ロー)と倫理(エシックス)を混同し、統制(法の問題)に倫理の名を使います。審査規則は、組織の統制維持のための懲戒規則と認識して、もう一度読んで下さい。そうすると良く理解できます。
 良く理解できますが、だから良いということにはなりません。主張提言に「倫理審査に関する質問」が出ています。審査小委員会は3人、それも倫理委員長が任命、倫理委員会委員についても選出基準は何もないという状態、3人の協議は秘密、3人の議決は公表(公表すること自体が懲戒)ですから、この規則の最初の紹介記事に「執行部が必要と思えば何でも審査請求ができ、また、執行部が任命する審査委員会によって、執行部が必要と思えば何でも倫理違反と裁定することができるという規則です」とあるのはもっともです。


 執行部批判者を倫理審査にかけた問題(2001-1-23)
 多くの会員は、この問題を、CE対PE、あるいは、独立対企業内と捉えている気配があります。しかし、他の勢力(具体的には「色々な事務局」)に、技術士制度を取られるところだったということを切実に思えば、そのような内部問題(コップの中の嵐)を論じている場合ではありません。
 色々な事務局は、技術士は休眠同様の資格だと思ったのではないでしょうか。
そこで、「大学卒2年程度の技術者資格」としてリサイクルし、色々な事務局の仕事にしようと考えたのだろうと思います。
 この状況について、一般会員の理解を妨げる最大の壁は、組織では指揮命令に従うのが組織に居る者の倫理だという思考です。ここで、偉い人(立派な人だから出世して偉くなった)の言うことをきかないヒラ(変な人だから出世できなかった)がいたとしたら、その者は理由は何だか知らないが倫理違反に違いないと思ってしまうのです。

 APEC ENG とIPE の動向(2001-1-23)
 「技術士は APEC ENG になれる」という話で、なにかうまいことがあるのでないかと漠然と考えていた一般会員は、「だからどうした」という現実に直面しているのではないでしょうか。
 今度は「技術士はIPEになれる」という話が出ています。また同じことになるのですが、もっと困ったことがあります。グローバルスタンダードとは実はアメリカのことで、これも米英が、世界の技術者の資格を支配するという意味なのです。技術士は米国PEの下に付くと言えばわかるでしょうか。
 日韓技術士会議というのがあり、韓国の技術士は、米英に支配されないためには、あえて国際的基準を設定せず、各国の自由にまかせるべきとの主張をしていました。ちなみに日本側はそのような政治的発言はなく、事務局の説明しか出ませんでした。


 時代遅れの倫理意識(2001-1-15)
 会員コーナー横尾純郎氏の記事を参照して下さい。同氏と私は青年技術士懇談会のメンバーです。ただし、同氏は現在ですが、私は四半世紀前です。その年代差を意識して読んで下さい。
 日本の歴史でおそらく最大の革命は1945年です。それ以前と以後では考え方が根本的に違っています。しかし、技術士会の老人会員の殆どには、昔の考え方が深層に固着しています。若い人には何のことだかわからないでしょうが、「上官の命令は朕が命令と心得よ」と、「ぶん殴られて」教え込まれたものです。朕(天皇陛下などと恐れ多いことを口に出してはなりません)は現人神(あらひとがみ)におわします。神様を批判するなど人の倫理にもとる行為に違いありません。技術士会でもヒラ会員が、会長や専務など上司を批判するのは許し難い倫理問題であるわけです。
 主張提言の記事にある倫理審査問題とは、要するに「総会での発言が何故倫理問題になるのか」ですが、その理由は上記のように簡単明瞭です。しかし、これを世間また一般会員に理解してもらうのは非常に困難です。なぜなら、難関校を卒業し、一流企業に勤め、難関試験に通った頭脳明晰な技術士が、いまどきそんな「時代遅れの倫理意識」を持つはずはないと、好意的に思うからです。
 好意的に思われているうちはありがたいのです。昔は頭脳明晰であった方々、時代遅れの倫理意識に早く気が付いて下さい。(これも好意的な発言でした。)