事業化に関する用語集
この用語集は、事業化戦略並びに新技術の採用プロセスを考える場合に頻出する用語を収録したものである。しかしながら、個別技術の事業化戦略を練り上げる際に必要な、一般的な会計学、ビジネス、法律などの用語については、多くのものが収録されていない。そういった一般的な用語については、専門のテキストなり、公共図書館において専門辞書なりをご参照いただきたい。
純資産額: equity
独占的使用権: exclusive license
撤退: exit
撤退戦略: exit strategy
資金の調達: financing
自己資金による調達(bootstrapping)
借り入れによる資金調達(debt financing)
エクィティファイナンス(equity financing)
知的所有権: intellectual property
侵略的技術: invasionary technology
使用権: license
ライセンシー(被許諾者): licensee
使用許諾: licensing
使用許諾者: licensor
限定使用権: limited license
リンチピンテクノロジー: linchpin technology
市場障壁: market barrier
マーケット・ルート: market channels
マーケティング: marketing
市場調査とプランニング(market research and planning)
市場管理(market management)
営業と流通管理(sales and distribution)
モデル: model
マイナスのキャッシュフロー: negative cash flow
NIH: NIH
OEM業者: OEM
払込済みの使用権: paid-up license
プラスのキャッシュフロー: positive cash flow
製品: product
製品の定義: product definition
製作試作品: production prototype
限定試作製品: product qualification model
試作品: prototype
実動模型(working model)
技術試作品(engineering prototype)
製作試作品(product prototype)
限定試作製品(product qualification model)
使用料無料の使用権: royalty-free license
新規事業開始資本: seed capital
労働対価資本: sweat equity
テクノロジー(技術): technology
ノウハウ(実務知識、技術情報)(know-how)
プロセス(process)
製品(product)
ツール(tools)
10/5法則: 10/5 rule
20/30法則: 20/30 rule
投機資本: venture capital
冒険的投機: venturing
実動模型: working model
用語解説
アートテクノロジー(技能派生型テクノロジー): art technology
理論にのっとった科学的・技術的知見よりも、むしろ、実務知識や技能、技術力、経験などから創出される技術(もしくはその使用)を指す。
アートテクノロジーに基づく発明は、ほぼすべての分野において起こり得る。その性質上、多くの用途において受け入れられやすいからである。しかし、理論にのっとった科学的原理や技術理論に基づく産業分野においては、アートテクノロジーにより創出された新技術は、手強い市場障壁に直面する恐れがある。レントゲンの創案したX線写真技術は、放射能に関する科学的知識の確立に先立つものであり、新たな科学的知見の発見を導いた技能派生型の技術と言える。比較のためコンピュータ産業における例を見てみると、新しい技術を生み出せるのではないかというアートテクノロジー特有の欲求が、新たなソフトやソフトウェアパッケージの改良という形となって、アートテクノロジーそのものの市場を切り開いている。それはさらに、一見標準化されているかに見える技術を分割して、さらに局部的な別個のものとして使用するという実例につながっている場合が多い。これこそ、実務的な経験の力によるところが大きいと言えよう。
最高水準技術の適用: best available technology
(有害廃棄物処理のような)規制等の厳しい産業分野においては、行政は常に、現段階で適用されうる最高の技術基準に基づいて、それに見合う機器の購入やプロセスの導入を義務づけている。創出された技術がその基準を満たすことが実証されれば、それだけでその技術はすでに明快な市場戦略を持つことになる。逆を言えば、「最高」水準であるという実証が得られない場合、もしくは創出技術が判定基準そのものに逆行するような場合、この最高水準技術の適用規則により、ほぼ致命的な市場障壁が生じてしまうということになる。
一般的な説も、最高水準技術の適用基準がここまで細分化したのには、その他の非規制産業による拍車がその原因になっているとする意見が多い。発明家らの言うように、「規制業界は、見れば買わざるを得ない」状況になっているのである。実際には、最高水準技術の適用義務に頼っていては、それら数少ない高規制産業以外の分野でも通用するような、実際的な市場戦略を確立することは難しい。規制産業の分野においてすら、最高水準技術の適用義務に依存した市場戦略は、時間を浪費し、かつフラストレーションの多い、非常に危険なものとなる恐れがある。(20/30法則、市場障壁の項を参照のこと。)
ライセンス契約をはじめとするあらゆる契約や、多くのベンチャーキャピタル・投資などに関わる書類に登場する、一般的な法律関係条項。
資金の調達の項参照。
一般的な事業関係書類である事業計画書(通常25〜35ページ程度)は、書面上で事業目的を具体化し、読み手に事業の概要を知らせ、経営指針を明らかにするものである。融資を求める場合や資金調達においては、事業綱領としても使われる。一般的な事業計画書は、実施要項、事業の来歴と詳述に加え、自社による市場分析、市場戦略、資金計画、組織、投資状況などに関し細部を記載した項を含むものである。一般的には、補足資料として、特許取得、資金計画、特筆すべき問題点や将来的な可能性の概略、企業のキーパーソン履歴などを含む場合も多い。
該事業が所有、もしくは自由裁量で使うことのできる総資金・総資産を指す。小規模事業における事業化のプロセスの場合、様々な資本のうち、どの種類・どの資金源を、技術、マーケティング、事業開発のどの段階に適用していくのか、はっきりと認識することが重要である。
労働対価資本(sweat equity) ……知的財産の所有者が、事業化のプロセスにおいて傾注する無償作業と労力を指す。事実上、(個人及び家族の貯蓄資本に加え)事業化に向けての無償労働は、単なる技術概念を実動モデルへと移行させ、市場分析と事業計画への本格的な最初の道を切り開く資本として十分認識されうる場合が多い。ケースによっては、労働対価資本と個人貯蓄資本が、技術試作品の製作を通して、技術開発計画そのものとなる場合もある。
新規事業開始資本(seed capital) ……初期段階における少額の資本。(通常、ごく初期の段階で$25,000〜$100,000程度。若干進んだ段階で$100,000〜$500,000。) 新規事業開始資本は、通常、友人同士や非公式の投資家などのネットワークにより局所的に調達され、試作品製作のための技術開発計画に投入される。市場分析や事業計画なども、この資本において行なわれる。
予備投機資本(pre-venture capital) ……予備投機資本は、通常$500,000〜$1,000,000程度の投資であり、投資家がより積極的に事業に関わりを持つ形態をとる。普通は、限定試作製品の製作、限定生産、及び新製品・新プロセスの市場への初導入などに投入される。完成までにはまだ調整が必要な段階ではあるが、市場戦略と詳しい事業計画案は絶対に必要となる。
投機資本(ベンチャーキャピタル)(venture capital) ……正規の(もしくは金融制度上の)投機資本は、ほぼすべてのケースにおいて、事業化プロセスにおける払込資本の最終形態と言える。(証券取引委員会による株式公募を除く。) 投機資本は通常$1,000,000以上で、すでに市場浸透を果たし、損益分岐点に近づきつつある事業に対し投入されることが多い。正規の投機資本家が興味を示すのは、潜在的に急成長が見込める事業に集中する。投機資本を求める事業者は、常に10/5法則(基本的な基準概念として、正規の投機資本家は、5年後には事業開始時の投資に対し10倍の収益を見込める事業の創出を期待する。)を念頭においたアプローチを考える必要がある。投機資本を引き寄せるのは、フル生産の能力、実際の市場に基づいた明確な市場戦略、有効な経営構造などの要素なのである。
新技術を創出することと、それを所有するということは、別個の問題である。
所有権とは、本来、資産・財産にからむものであり、契約上の問題になりえる。従業発明者は、契約のもとに新技術の創出に取り組み、実際に考案された技術の所有権は他者に帰属する(多くの場合、雇用条件で既定される状況と言える)。新技術・発明の所有権を特定するのは、時として複雑な法律上の問題に発展する可能性があり、これまで実際に、考案した従業員発明者ではなく、雇用者に新技術の所有権を帰属させる状況を制限する法律の制定がされた。
いかなる事業においても最も重要となる、資金上の判断基準の一つである。キャッシュフロー(現金収支)とは、ある一定期間に入ってくる金銭の総額と、同期間内に出ていく金銭の総額との差異のことである。(期間設定は、月単位、あるいはさらに週単位、日単位の短期ベースで行なうことが多い。) 入ってくるお金のほうが多ければ、キャッシュフローはプラスである。逆に、支出が収入を上回ると、マイナスのキャッシュフローということになる。
苦境に陥っている小規模企業においては、プラスのキャッシュフローはことに重要になってくる。こういった企業は、現金の備蓄がなく、新規受注の受注残が大量にある上、現金収支 (キャッシュフロー)がマイナスになっている。少なくともこのような事業は、短期の支出をまかなう程度の実質的な信用貸しもしくは融資を求めなければならなくなる。最悪の場合、マイナスのキャッシュフローは、他の健全な企業に損害を及ぼすことになろう。
事業化計画書(コマーシャリゼーションプラン): commercialization plan
新技術を、事業化に向けての導入プロセスに移行させる場合の基本計画書。また、移行過程における計画書も同義とする。事業化の計画過程とはすなわち、発明や新技術の創案に対し、実用の可能性を定義する過程であると言える。その目的とするところは、様々なオプションの可能性を探り、必要となる手段を明確にし、実用化選択権を確立するのに必要なデータ・資料を提示することにある。一方、成果としては、適用分野ごとの固有の展開計画において、オプションを選別し、優先順位を確定するという点があげられる。このような計画を練り上げることにより、有効な新製品の開発の着手に欠かすことのできない、明確な製品像が見えてくる。効果的な事業化計画書とは、投資戦略またはライセンシングに向けての戦略を選択するのに必要なデータを盛り込み、有効な事業計画の基盤をなすものであると言えよう。
相互実施許諾(特許の相互使用): cross-licensing
自動車、石油、機器製造、通信など多くの産業分野において、企業同士が、相互実施許諾契約により、相互に技術の交換を行なうことがある。このような契約の場合、企業は一般的に、技術やプロセスの無料使用権を互いに授与することとし、引き換えに、競争者同士である互いの技術を使用する権利を得ることになる。(使用許諾、使用料無料の使用権の項を参照のこと。)
デューディリジェンス(適正評価): due diligence
デュー・ディリジェンスは法律用語であり、株式の公募などのような、法の規制を受ける金融上の契約を結ぼうとする時に、当該事業が受けなければならない正規の調査手続きを指す。
より一般的には、創案者や小事業主の場合、投資者やライセンシー(許諾の使用者)として見込みのありそうな相手と交渉する際には、自分たち独自のデューディリ(評価)調査を行なうよう助言される。
新技術による製品、もしくは新しい技術プロセスから派生した製品の、実際の使用者を指す。 この用語が重要性を増してくるのは、エンドユーザーと購入者が異なる場合である。購入者(実際に製品を購入する人)とエンドユーザー(使用者)が異なるということは、よくあるケースである。例えば、産業用工具や供給品、工業製品などの場合は、極めて多くのケースがこれに該当する。さらに、OEM企業(他社製品を自社ブランドとして販売する企業)との取引においては、エンドユーザーと購入者は完全に異なっている。新しく創案された技術に対して、購入者とエンドユーザーが、常に同一の購入動機・購入意思を抱くとは限らない。新技術の採用に関して、双方の意欲に差異があると、致命的な市場障壁が生じることになる。有効な市場戦略を展開するためには、エンドユーザーと購入者とを別個に分析することが重要な鍵となる。
試作品 の項を参照のこと。
新規事業を興し、経営管理を行なおうと企図する人のこと。多くの場合、派生する資金上のリスクの大部分を負うかわりに、得た報酬の大部分を獲得することになる。新技術の事業化においては、起業家は、発明者・技術の考案者とは異なる場合が多い。
純資産額: equity
通常、事業の有する優先株・普通株の総価値を指す。ただし、「エクイティ」(“equity”)という用語は、事業における個人、もしくはグループの株の持分を指すものとして使われることも多い。
独占的使用権: exclusive license
使用権の項を参照のこと。
撤退: exit
事業における純資産(所有権)の売却のこと。
撤退戦略: exit strategy
所有権を有する人が、持ち株の清算にあたって用いる方法やその計画のこと。
資金の調達: financing
事業の設立、経理管理、拡張に必要な資本を獲得する方法を指す一般的な用語である。
資金戦略はかなり複雑に分化しているが、小規模事業が、持続的な事業化プロセスのために用いる戦略は、大きく三つのタイプに分かれる。
自己資金による調達(bootstrapping)……現在の収入の利用による自己調達資金。(キャッシュフローがプラスであることが前提条件である。)
借り入れによる資金調達(debt financing)……借入金による資金。
エクィティファイナンス(equity financing)……新株式の発行による資金調達
知的所有権: intellectual property
著作権、発明、技術情報、ロゴ、特許、サービスマーク、商標、商用名、企業秘密など、法的に保護されている所有権の総称。
侵略的技術: invasionary technology
事業化のためには、特定の市場にすでに浸透している他の技術と直接競争しなければならないような新技術、もしくは技術プロセスを指す。
使用権: license
知的所有権の所有者が、所有権によって保護されている対象について、第三者に、その製造、使用、販売を許可する契約のこと。独占的使用権の場合、ライセンシー(使用の許諾を受ける人)は、知的所有権を使用する独占権を獲得することになるが、一方で、このような使用権は、市場領域や使用分野、製品、時期などをせばめてしまう可能性もある。限定使用権や非独占的使用権の場合は、使用の許諾を与える側では、同一の知的財産に関して、同様の使用権を他にも自由に与えることができる。(相互実施許諾(特許の相互使用)、使用料無料の使用権の項を参照のこと。)
ライセンシー(被許諾者): licensee
ライセンス契約のもとで、知的所有権に対する使用権を獲得する個人、もしくは企業のこと。
使用許諾: licensing
知的所有権に対して所有権が与えられる、法的過程の総称。個人発明者の利用できる、二つの基本的な事業化戦略のうちの一つ。(冒険的投機、相互実施許諾(特許の相互使用)の項を参照のこと。)
使用許諾者: licensor
ライセンス契約において、知的財産の使用を許諾する側の人。
限定使用権: limited license
使用権 の項を参照のこと。
リンチピンテクノロジー: linchpin technology
事業化により、周辺技術や補助技術に対しても市場ポテンシャルを増大させるような技術のことを、複数の車輪につながっている輪止めにちなんでリンチピンテクノロジーという。ケースによっては、例えば白熱電球の発明が、新たな発電、送電、配電の技術を可能にしたように、リンチピンテクノロジーが、実際に新しい技術の発明を生み出す場合がある。リンチピンテクノロジーはまた、現行技術を再整理したり、活性化させたりする波及効果も持っている。自動車の技術開発が、石油精製産業を活性化させたのは、その代表的な一例と言えよう。 一般的に言えば、リンチピン的な発明は、克服が難しい市場障壁に直面することが多い。
市場障壁: market barrier
新しい技術の事業化プロセスにおいて、克服すべき障害を指す。ただし、事業化のための技術開発、市場分析、事業計画などの諸作業は、市場障壁には含まれない。 事業化の通常プロセスにおいて発生する諸作業(技術開発、市場分析、事業計画など)により、実際に予想される市場障壁の姿が見えてくる。それは例えば、膨大な資本コスト、ユーザーの反応、広範囲にわたる広告の必要性、販売、流通、ユーザー教育、メンテナンスの性能、NIH症候群(企業が、自社内で開発されたもの以外の技術を無視する閉鎖的態度)、 リンチピニング(複数の領域で技術を開発しなければならないこと)、20/30法則の達成の難しさなどである。すべて網羅することは明らかに不可能であるが、持続的な事業化を実現する前に、考えられうる市場障壁を特定し、すべてに対処するよう努めなければならない。
マーケット・ルート: market channels
事業化されようとする技術が、製造者からエンドユーザーの手に届くまでに辿る段階的な道筋。市場分析における基本的な第一段階の一つは、このルートを明確かつ詳細に描き出す(もしくは図表化する)ことである。
マーケティング: marketing
製品や技術プロセスの販売ポテンシャルを分析する際に付随する行動・手段を指す。また、顧客サービス、広告、流通、販売などに伴う行為も同義とする。事業化プロセスにおいては、マーケティングは、実際には大きく三つに分けられる。
市場調査とプランニング(market research and planning)……市場の分析と評価であり、具体的には、市場障壁、流通経路、市場規模、顧客層の特定などの作業を含む。市場調査は、コンセプトの開発段階から開始する必要があり、技術開発、市場戦略の立案や事業組織の構築段階に入っても、継続的に行なうべきものである。
市場管理(market management)……広告、販促、顧客サービスなど。これらはすべて、欠くことのできないサービス機能として、事業化プロセスを持続させるための中心的な役割を果たすものである。
営業と流通管理(sales and distribution)……流通経路と販売力の管理。定義上、営業と流通管理は、事業化において明らかな到達目標である。二次的には、製品の改良や応用開発、ひいては新たな技術の開発につながる有力な情報を提供する機能も持っていると言えよう。
モデル: model
試作品 の項を参照のこと。
マイナスのキャッシュフロー: negative cash flow
キャッシュフロー の項を参照のこと。
NIH: NIH
自社外開発技術(“Not Invented Here”)の略で、企業が、自社で行なっている通常のR&D以外のルートで開発された新技術を、あまり積極的に導入したがらない閉鎖的な態度を指す用語である。NIH症候群は、致命的な市場障壁となり得る可能性があり、自動車、鉄鋼、石油、冶金、運輸など、古くからの技術的伝統のある業界ほど顕著である。
OEM業者: OEM
“Original Equipment Manufacturer”(他メーカーの製品を購入し、ユーザーのニーズや好みに合うように組み立てたり、仕様変更して、自社ブランドとして販売する企業)の略。OEM業者は一般に、他メーカーから様々な部品、供給品、さらには組み立て品まで購入することがある。(エンドユーザーの項を参照のこと。)
払込済みの使用権: paid-up license
使用料無料の使用権、使用権 の項を参照のこと。
プラスのキャッシュフロー: positive cash flow
キャッシュフローの項を参照のこと。
製品: product
新規技術導入プロセスにおける製品とは、市場に投入される完成製品を指す。この意味で言えば、事実上、物としての製品と全く同義に、サービスや技術プロセスも製品に含まれることになる。
製品の定義: product definition
新たに考案された技術を、事業化に向けての導入プロセスに移行させるためのプランや必要な手段を講じる際の第一段階となる作業である。製品の定義とはすなわち、ユーザーのニーズに関する知見(市場データ)と、技術の潜在的な可能性とを結び合わせる作業と言える。製品の定義づけを行うことにより、開発し、改良し、強調するべき製品の特徴や機能が明確になる。製品の製作とマーケティングプランの立案の両方に欠くことができない作業と言える。
製作試作品: production prototype
試作品 の項を参照のこと。
限定試作製品: product qualification model
試作品 の項を参照のこと。
試作品: prototype
試作品とは、考案した装置や技術プロセスのモックアップ、模型、実動モデルなどを指す。試作品の製作により、設計上有意なデータが得られるばかりでなく、最終製造プロセスを完全なものにするのにおおいに有効である。
実動模型(working model)……技術コンセプトの実践と校正のための縮小版。多くの場合、実寸法より小さく、低コストで粗めな造りになっており、完全で完璧な可動を必要としない。最も基本的な作動パラメータをテストし、技術試作品の設計資料を得ることを目的とする。
技術試作品(engineering prototype)…… 製品や装置、プロセスの実動模型であり、可動状況、性能、製造方法などに関するデータを収集することを目的とする。多くの場合非定型で、特殊な計装装備に装着させたもので、手作業による製作であることが多い。ただし、製作試作品の製造が可能かどうか(もしくはその必要があるかどうか)を特定する必要上、常に完全に作動する技術レベルは備えていなければならない。
製作試作品(product prototype)…… 実寸大で、完全に作動する模型である。アイテムの実際の製造、製作に必要な条件を特定する目的で設計される。操作性能や耐久性に関する、製作前段階での最終データを得る目的もある。通常、手作業により製作され、フル生産にかけられる最終製品、最終プロセスの設計基準に、可能な限り条件を一致させなければならない。
限定試作製品(product qualification model)…… 実寸で、完全な動作性能を備えたモデル製品である。最終製品に可能な限り近似した条件のもとで、最初の限定生産により製作される。最終確定した生産ラインが、設計基準に見合った製品を製造することができるかどうかの確認を行なう。限定試作製品は、独立した第三者団体の検査・試験を受けることが多い。特に製品が産業基準や行政監督基準に適合しなければならない場合、この種の検査は必然である。 これら様々な試作品や構造模型の一連の製作過程は、全体として、全技術開発プログラムの中核を成すものであり、同時に、生命力の強い製品や製品プロセスをもたらすものであると言える。
使用料無料の使用権: royalty-free license
ロイヤルティの支払いを必要としない使用権のこと。払い込み済み使用権とも言う。時として、この種の使用権は、現金による一括前払いにより許諾される場合が多い。その他のケースとして、特に資金調達計画がなくても使用許諾を受ける場合がある。例えば、相互実施許諾契約や、公的ファンドにより開発された発明を行政が使用する場合などがこれに該当する。
新規事業開始資本: seed capital
資本の項を参照のこと。
労働対価資本: sweat equity
資本 の項を参照のこと。
テクノロジー(技術): technology
普通、単純に機械学的な、もしくは科学的理論をベースとした作業のやり方を指す語であると考えられているが、実際には、慎重に考慮し注目すべき言葉である。テクノロジーは様々な種類に及び、その規模もまた、小さな物では個人用消費アイテムから、大きい物では広大な工業団地まで多様である。より明確に定義するため、テクノロジーは、その規模に関係なく、すべて四つのカテゴリーに分けられるということを指摘しておく必要があろう。
ノウハウ(実務知識、技術情報)(know-how)……創案された技術に基づく製品やプロセス、ツールなどの、有効かつ経済的な使用を可能にするような知識や実務経験を言う。しばしばノウハウは、無形のもの、もしくは事業価値はほとんどないもののように誤解されがちだが、実際には、産業の分野によっては最も市場性の高い知的財産として、発案者らが実用化プロセスに適用できるものなのである。例えば、エレクトロニクスなどの分野が好例であろう。ノウハウは、投機かライセンシングのどちらかを通して、ただ事業化の基盤のみを提供する場合が多い。
プロセス(process)……物事を進めたり、製作したり、あるいは製造活動を管理する方法を指す。
製品(product)……製造され、使用され、消費される実物のこと。
ツール(tools)……製品を作ったり、プロセスを実施したりするのに必要とされる道具・手段。(製作し販売する側では製品と考えるものでも、エンドユーザーにとってはツールである場合もある。) これら四つの技術的実体は、知的所有権として法的に保護され、四つのうちいずれもが事業化の対象となりうる。実際に、発明によっては、これら四つのうち複数の技術カテゴリーを通して事業化することが可能な場合もある。その場合、該当する発明を、製品、プロセス、ツール、ノウハウのどの部分として商品化するかが、市場に向けての重要な第一段階となる。事業化を念頭に置いた時、これら四つのうち複数の形態で新技術を開発しなければならないような場合、その発明は、おそらくリンチピンテクノロジーであると言えよう。
10/5法則: 10/5 rule
正規の投機資本家は、5年以内に、投資に対し10倍の収益を得られる事業を求めるものであるという経験則。(資本の項目中の、投機資本の項も合わせて参照のこと。)
20/30法則: 20/30 rule
侵略的技術に対する市場ポテンシャルを評価するための、非常に一般的な経験則である。人によって説明はまちまちであるが、実際には20/30法則とは、市場で新規技術が成功するためには、従来のものより20%性能が良く、価格が30%安くなくてはならない(あるいはその逆)ことを説く法則である。(最高水準技術の適用の項を参照のこと。)
投機資本: venture capital
資本 の項を参照のこと。
冒険的投機: venturing
新規事業の創造に基づいた事業化戦略を指す一般的な用語である。時には、現行の小規模事業の大幅な拡張による事業化まで含めて言うこともある。個人発明者の利用できる、二つの基本的な事業化戦略のうちの一つ。(起業家、使用の許諾の項を参照のこと。)
実動模型: working model
試作品 の項を参照のこと。
付録2
有益な参考文献の一覧
この冊子で触れている話題に興味のある人ならば誰でも、それこそ山のような情報をすぐにでも得ることができる。しかしながら、経験を積んだ研究者なら言うであろうが、出発点では、限られた選りすぐりのものこそ、膨大なリストよりはるかに資するところが大きいのである。インターネットや図書館にはデータが溢れている。誰でも、データや助言を得るのにわざわざ遠方まで出かけたくはないであろうし、実際、最も大きな問題は、無作為に検索して得た山のような文献や、サーチエンジンによる「ヒット」を、いかに選別するかにかかっていることはすぐにわかるであろう。殻と小麦を選り分けるには、情報の専門家の助けがいることも、即座に気がつくはずである。インターネットの場合には、全くのでたらめや貧困な発想による素人意見、公共の資料から容易に得られる情報を並べて情報提供料を請求してくる詐欺師まがいの行為にも、十全な注意を払う必要がある。
以前にも増して、大方の人が情報を求めて立ち寄る最初の場所は、恐らく地元の公共図書館ではなかろうか。情報化世代は、図書館という由緒ある公共施設を様変わりさせつつあるようだ。参考資料担当の司書は、様々なデータベースや検索エンジン、資料などにアクセスして、いらいらするような時間のかかる個人作業を、ものの数分で完結させてくれる。図書館は、ただ単に書籍や定期刊行物、政府刊行物などを完備する場所ではなく、今ではほとんどが、オンラインによる検索を行なったり、情報をダウンロードしてフルテキストの形でプリントアウトする機能を持ち合わせている。規模の小さい図書館でもこういったサービスは利用することができ、手間のかかる詳細な調査仕事を大幅に軽減してくれる。最も良いことには、こういった信頼度の高い情報にアクセスするための料金を負担する図書館が増えてきており、その結果として、利用者は、無料もしくはきわめて安い料金でこれらのサービスを得ることができる。
緊急に情報を得る必要に迫られるほど、経験を積んだ情報の専門家に相談したいという要望が強まるようである。特に、技術関係の学部やビジネススクールを有する大学が近くにあればなおさらである。(学生でないとか、学部のメンバーでないとかの理由で躊躇してはならない。納税者はすべて、ほぼすべての公立の大学付属図書館を利用する権利があるのであり、私立大学の場合も多くが同様に一般利用を可能にしている。)気後れする必要はない。司書達も、自分たちの大学のテクノロジーを正当化する義務があるのである。彼らに調査を依頼すると、一回ごとにコストをきちんと明らかにしてくれる。多くの場合、彼らは常に喜んで助力の機会を待っているのである。
以下のページに、有益な情報源となりうる書籍・文献をいくつかリストした。それぞれ、この冊子において考察している主なテーマごとに分類して整理してある。
テクノロジーの事業化、総体的嗜好に関する研究、有益な事業の歴史
ゴードン・バティー “Entrepreneurship for the Nineties”(90年代の起業家精神) 1990年。1980年代の名著の改訂版。逸話を多く盛り込み、なお読み応えがある。
アルフレッド・D・チャンドラー・ジュニア『見える手』 1977年。チャンドラーは、アメリカンビジネスの成長に関する研究の第一人者であると考える人も多い。チャンドラーは、プロセスは、主としてテクノロジーにより導かれるものであり、そのうちいくつかは、個人発明家によってもたらされるものであると見ている。テクノロジーと現代型企業の開発を真剣に考える人には、貴重な情報源となろう。
ロバート・G・クーパー “Winning at New Products: Accelerating the Process from Idea to Launch”(新製品における勝利―アイディアから事業開始へのプロセスを加速する)(第二版) 1993年。中規模〜大企業向けの「ハウツーもの」と考えられているが、クーパーの著作は、やはり一読の価値がある。段階入門モデルは複数の新製品を扱う経営者向けになっているが、技術開発、マーケティング、事業課題における同時進行の原則が色濃く出ており、大企業のみならず、個人発明家や小規模事業主にもお勧めの一冊である。
ピーター・ドラッカー “Innovation and Entrepreneurship: Practice and Principles”(技術革新と企業家精神―その実践と原理) 1993年。起業家精神の定義にとどまらない、卓越した著作である。初版は1985年に出版された。タイムリーで話題性に富み、読み継がれるうちにさらに円熟味を増しており、今なお一読の価値がある。
ハロルド・C・リブゼー “American Made: Men Who Shaped the American Economy”(アメリカン・メイド―アメリカの経済をつくった男達) 1979年。アメリカ史における技術革新と事業化プロセスにおいて、多くを語る一冊である。エリ・ホイットニーからエドゥイン・ランドまで、九人の実業家・発明家の伝記を通して話が進む。この本は、新製品の開発や事業化に関心のあるすべての人にとって、最も基本的な情報源となっている。
トーマス・P・ヒューズ “American Genesis: A Century of Invention and Technological Enthusiasm”(アメリカの起源―発明と技術的熱狂の世紀 1870‐1970) 1989年。エジソン、ベル、ライト兄弟ら、発明の歴史を紹介する。ヒューズはこの著作により、発明のプロセスと事業化における成功への道について、鋭い洞察を提供している。
ドナルド・A・ノーマン “The Design of Everyday Things”(日々の設計) 1990年。ノーマンは心理学者で、 (ビデオのプログラム機能のように)我々がテクノロジーをうまく使いこなせない場合に抱くフラストレーションについて書いている。使う人をいらいらさせるような設計に的を絞り、真に優れた設計とは何かについて力強く語りかけている。さらに、日常的に使用するものについて、良い設計とは何かに着目した意見を数多く述べている。新製品の開発に関心を持つ人が多くを学べる書である。
ヘンリー・ペトロスキー “Invention by Design”(設計による発明−エンジンは、単なる概念からいかにして現実のものとなったのか) 1996年。実際の発明から学ぶケーススタディ。ペトロスキーはこの書において、製品開発のプロセスを細かく紹介し、市場のニーズに合った技術的設計の重要性を説いている。
個人発明家のための自助書
新製品のアイデアを抱く発明家や小規模事業主にとって、自助となる書籍や情報は数多く存在する。それらはほとんどが、一冊読めばすべてがわかるよう書かれたものである。実際に、ベンチャリングかライセンシングかのどちらかに明らかに偏ったものが多く、非常に狭い視点から新技術の導入プロセスを論じているものが目立つ。一冊を選んで買う前に、図書館でいくつか眺めてみるとよいだろう。どれを選ぶかは、自分が開発したいと思っているものが製品なのかサービスなのか、消費者向けアイテムか工業用プロセスなのか、さらには独創的な一品ものなのか大量生産用のアイテムなのかによって違ってくる。常に言えることだが、自分にとって本当に助けとなるものを正しく選択することである。
ドン・デベラック “Bringing Your Product to Market”(あなたの製品を市場へ) 1977年。「アントレプレナーマガジン」刊行のブックシリーズからの出版。チェックリストや「ハウツー」アドバイス、情報資源などを紹介している。プロトタイピングや市場に関する知識の重要性を強調的に扱っている点が特筆される。
ハワード・ブロンソン、ピーター・ランゲ、ピーター・ラングラム “Great Idea! Now What?”(すばらしい思いつきだ! さて、どうしよう?(小規模事業のためのソースブック)) 1995年。個人発明家向けの一冊。読者の新製品のアイデアに関する評価に主眼を置く一方で、小規模事業を始めるにあたっての「ハウツー」的な助言を順を追って紹介している。
リチャード・C・レビー “The Inventor’s Desktop Companion: The Guide to Successfully Marketing and Protecting Your Ideas”(発明家の机上の友−あなたのアイデアを市場で成功させ、法のもとに保護する方法) 1995年。(改訂版) レビーは、玩具の発明家として大きな成功を収め、この書において、市場での成功するための現実味あふれる助言を提供している。傑出した本であり、動きの速い消費用アイテムを扱う業界におけるライセンシングについて、特に強調的に扱っている。
トーマス・E・モズレー “Marketing Your Invention”(あなたの発明をマーケティングする)(第二版) 1997年。モズレーの、公共分野の発明家援助プログラムにおける発明評価士としての経験を生かした一冊。読者のプロジェクトに対する評価に主眼を置き、精力的に厳しい評価を行なっている。有益な助言や示唆を多く含み、発明詐欺などの問題の特定を特に強調的に行なっている。アップスタート出版社からの刊行であり、同社は発明家や小規模事業主のための自助本の出版を数多く手がけている。
ハーベイ・リース “How to License Your Million Dollar Idea: Everything You Need to Know to Make Money”(100万ドルのアイデアをライセンスする−財を築くために知っておきたいすべての方法) 1993年。タイトルを見ればわかるように、この本は、ライセンシングと知的所有権を最重点的に取り扱っている。初期段階のアイデアを持つ人には、それが本当に開発を進めていく価値のあるものかどうかを判断するうえで、大きな助けとなるだろう。
様々な有用情報
まだインターネットを利用したことがない人も多いだろうが、やはりウェブサイトは絶好の情報源である。例えば誰かに助言や相談を求めようと思ったとき、その特定の人物の名前、住所、電話番号などを調べるには、ウェブが最適である。自宅でインターネットを接続していなくても、地元の図書館に出向いて検索してもらうか、あるいは自分で検索するやり方を教えてもらえば、時間も手間も省いて最新かつ正確な情報を得ることが可能である。特許商標庁(米国)など多くの行政機関が、電話帳やメールアドレスのリストをオンラインで運営しており、正確なコンタクト情報が入手できる。また、政府印刷局(米国)では、オンライン・ブックストアをサポートしている。
取っ掛かりとしては、米国エネルギー省産業技術局の「発明・技術革新計画」あたりが好適であろう。このプログラムは当冊子の発行を後援しており、特にエネルギー関係の技術を中心に該当する発明や革新的技術を調査しているが、「最新ニュースと関連リンク集」を覗くと、開発を試みる技術やサービスの種類に関わらず、有益な情報を得ることができる。「発明・技術革新計画」の運営管理するサイトは、特に個人発明家や小事業主向けに、プログラムに関する情報、最新ニュース、権益に関する告知などを提供している。忘れてはならないのは、公的な情報源の場合、情報の導入を制限し、リストされている製品やサービスが本当に自分のニーズに合ったものなのかを自分でチェックすることである。
産業技術局(OIT)の後援する「発明・技術革新計画」の公式サイトは、
http://www.oit.doe.gov/inventions
特に小規模事業向けの情報としては、連邦中小企業庁(SBA)が有益なものを提供している。ウェブ上の情報センターへは、下記のアドレスでアクセスできる。
http://www.sba.gov
このサイトでは、SBAの数多い地方支部への明確なコンタクト情報(電話帳にも載ってはいるが)や、リソース、資金調達、事業の立ち上げや教育機会に関する情報、小規模企業向けの行政請負契約情報、SCOREコンサルティングへのアクセスなど、有益な情報を提供している。
SBAのウェブサイトのうちでも特に役に立つと思われるのは、小規模事業開発センターのウェブページである。アドレスを下記に示す。
http://www.sba.gov/sbdc
地方支部の一覧(住所や電話番号を含む)に加え、オンラインリソースへのリンク集、指導書・専門論文、ワークシート、参考事項のリストなどを網羅している。
調査にかかる実時間と費用を軽減してくれる第三のサービスとして、米国政府印刷局によるオンラインリストがある。ここでは常に最新の情報を閲覧できる。印刷局ではさらに、独自にオンラインによるブックストアも運営している。サイトのアドレスは、
http://www.gpo.gov
米国特許商標庁(PTO)でも最新の情報を入手することができる。PTOではオンラインによる特許の検索ができるデータベースを備えた広範なサイトを運営している。特許の申請要項をダウンロードすることも可能である。特許の話になると、我々は常に専門家の意見を仰ぐよう勧めているが、ここでリストされている様々なサイトに関して言えば、それこそ有益な情報の海であると言えよう。例えば、特許に関わる統計資料、世界の主だった国の特許庁へのリンク、PTOのカスタマーサービスの番号(1-800-PTO-9199)など様々な情報の入手が可能である。PTOではまた、最新ニュースや公益情報の告知、関係方面を完全に網羅した電話帳、PTO支部の住所一覧などを発行している。
サイトのアドレスは下記の通り。
http://www.uspto.gov
市場分析
恐らく、マーケティングに関する情報を求める場合に理解しておかなければならない最も大切なことは、これは一箇所ですべて事足りるようなものでは絶対ないということである。必要な情報や資源は、戦略、市場分析、広告、営業、市場管理などに細かく分かれるということは、すぐにわかるはずである。
まず知っておかなければならないことは、どこから始めるかである。製品のアイデアを、完璧な技術革新過程を経て市場に導入したいのであれば、マーケティングのすべての分野に精通しておく必要がある。しかし、発明家や小規模事業主の多くにとって最も差し迫った問題は、実際の市場において何が起こるのかを知っておくことである。誰が、どの製品を買うのか?この製品にいくら払ってくれるのか?その理由は?などについて、あらかじめ理解しておかねばならない。
こういった疑問の答えを出さなければならないということは、事業のスタート地点は、市場分析であることを意味している。しかもそれは、有用な製品を定義づけるために知っておかねばならない情報を得ることから始まるのである。製品の定義づけを行うことにより、戦略の具体的な姿や、実際に競争する相手は誰なのか、流通経路についてどの程度知っておけばよいか、価格設定はどのくらいにすればよいか、営業や広告、市場管理はどのようにするかといった問題の答えが自ずと見えてくる。恐らく、自分で考えている以上に多くのことを知らねばならないであろうし、それは、特許の許諾を考えている場合でも同様である。事実上、市場分析は、テクノロジー評価の鍵となる要素であり、ライセンスする相手先を探す場合には、最も正確な情報をもたらしてくれることが多い。
まず手始めに、下記の資料あたりからあたってみてはいかがであろうか。
ウィリアム・A・コーエン “The Marketing Plan”(マーケティングプラン) 1997年。ベーシックな「ハウツー」ものであり、自分で書きこむワークブック形式になっている。答えが書けないと、その部分についてより情報収集が必要であるということになる。この興味深いコーエン方式は、読者を、本格的なマーケティングプランの基本的部分へと導く結果となる。少し年代は古くなるが、同著 “Developing a Winning Marketing Plan”「勝利するマーケティングプランの立て方」(1987年)は一読の価値があり、そこで提供されているマーケティングのサンプルプランは、特に見ごたえがある。
ジョン・V・ガンリー “Data Sources for Business and Market Analysis”(事業及び市場分析のためのデータソース(第四版)) 1994年。市場の傾向や規模などの概観を知りたいときや、その他の統計的情報に初めて切り口を求めるとき、この本を読んでみるとよい。著者は、グローバルな視点から、できるだけ多くの領域や産業分野における市場情報の情報源を提供している。
マルコーム・H・B・マクドナルド、ワレン・キーガン “Marketing Plans That Work: targeting Growth and Profitability”(実効力のあるマーケティングプラン−成長と収益性のために) 1997年。マーケティングとその重要性を真に理解したいと望む人にとっては、この著作は、卓越したスタートポイントとなろう。定義や分析はやや型にはまった感があるが、著者は、なぜ市場の区分や位置付けを行なう必要があるのかを実にうまく説明している。マーケティングの原則の概観、詳細説明ともに優れた記述が見られる。
ジェフリー・A・ムーア “Inside the Tornado: Marketing Strategies from Silicon Valley’s Cutting Edge”(嵐の中で−シリコンバレー最前線に学ぶ市場戦略) 1995年。1990年代前半のマーケティングの名著 “Crossing the Chasm”(断層を越えて)の著者からの、最新のメッセージ。シリコンバレーのハイテク企業に焦点をあてながらも、新技術による製品事業の立ち上げのための市場努力に関する深い洞察は、シリコンバレーという地域性にとどまらない、より広いメッセージを投げかけている。多くの文章が、すでに定着した市場や実在の企業に沿って書かれており、主としてマーケティング活動の改善を真に意図したものである。新興市場において全く新しい製品を導入しようとする発明家や技術者にとっては、ムーアの著作は必読である。
サラ・ホワイト “Complete Idiot’s Guide to Marketing Basics”(超初心者による、マーケティング基礎ガイド) 1999年。タイトルを見て読む気を失ってはいけない。ホワイトは、マーケティングの基礎に対する総合的な全体像を提供している。中には、市場分析についてこの上ない重要なトピックも盛り込んでいる。新製品の開発に焦点をあてているだけではなく、マーケティングにおけるすべてのトピックをむらなくカバーしている点が、この書の最大の特徴である。
マーケティングのより本格的な段階に近づいたら、次の書物を試すとよい。
フィリップ・コトラー “Marketing Management: Analysis, Planning, and Control”(マーケティングの管理−分析、プランニング、そしてコントロール(第九版)) 1996年。これを読めば、書いてあることはすべて身につくという一冊である。さらに、ゲイリー・アームストロングとの共著による(マーケティングの原則)(第八版、1998年)も読んでみることをお勧めする。この二冊は、ビジネススクールで広く使われている教科書でもある。
特許、ライセンシング、及びその他の知的所有権について
残念なことに、知的所有権の獲得にあたっては、極めて多くのケースにおいて、所有権決定の決議と費用をまず秤にかけねばならない。しかしながら、いずれにしろ結果はあとあとまでついてくるのである。こういった状況は、多くの人が「ベストアドバイスを得られるなら、いくらかかっても安いものだ。」と口にすることからもわかる。自分で特許の書類を書くとか(可能ではあるが)、自分でライセンス交渉をするとかいった行為は、失策への下書きをしてしまうという状況に陥りやすい。いずれ知的所有権の決定には関わらなければならないのは間違いないが、もし自分のアイデアが、真にメリットを生む価値があると思うなら、遅かれ早かれ、専門家の助けを必要とすることになろう。この場合、「遅い」よりは「早い」ほうが、絶対にいいと言える。
知的所有権を創造し保護するのに、実際にいくらかかるのかは、ひとえにそのアイデアの真の価値いかんにかかっていると言えよう。自分のアイデアの真価を正確に把握することは、特許の取得、ライセンシング、商標の保護、そしてそれに続くステップという一連の戦略の方向付けにおける最初の第一歩なのである。まず手始めに、知的財産の様々な形態と、それらがどのように作用するかについて知る必要があるだろう。見落としてはならないのは、それらが往々にして一緒に作用するということであり、この点をふまえ、自分の知的財産を複数の形態で創造することを考える必要も十分生じてくるだろう。例えば、ライセンシング交渉においては、企業秘密やノウハウが特許の価値を高めるということがよくある。専門家になる必要はないが、少なくとも専門家と話せるだけの知識は備えておかねばならない。彼らと話すことによって、自分が本当に欲し、必要としている援助の姿が見えてくるものなのである。
まず、基礎から始めることである。政府刊行物から、豊富な情報を得ることができる。最も新しいパンフレットやニュース、指針書などから始める場合、特許商標庁の運営するウェブをあたってみるとよい。助けやコネクションが必要なら、地元の図書館の担当者が、情報の検索に一役買ってくれるはずである。特許商標庁のウェブは、下記の通り。
http://www.uspto.gov
産業技術局の「発明・技術革新計画」も、最新データの要約をウェブ上で提供している。
http://www.oit.doe.gov/inventions/links.shtml
フランクリン・ピアス・ロー・センターも、知的財産の基礎情報をカバーする、非常に有益なオンラインリソースを開設している。アドレスは次の通り。
http://www.fplc.edu/tfield/ipbasics.htm
コーネル大学のロースクールも、同様のサイトを運営している(検索も可)。
http://www.law.cornell.edu
特許商標庁では、基礎的な(しかも読みやすい)パンフレットやガイドブックを発行しており、米国政府印刷局を通じて入手が可能である。これらの資料は、頻繁に更新が行なわれている。読者が興味を持ちそうなものを2、3冊紹介しておこう。
・ Basic Facts about Patents(特許の基礎)
・ Basic Facts about Trademarks(商標の基礎)
・ General Information Concerning Patents(特許に関する一般概略)
これらの冊子は、近くの図書館でも見つけられる場合が多い。ただしその場合、置いてあるものが最も新しい更新版なのかどうか、政府印刷局のインデックスをチェックして確認することをお勧めする。図書館という資源を利用する場合には、入手した特許関係の書物や資料が1995年以降の出版物かどうか、必ずチェックする事を忘れてはならない。(特許関係の法律条項は、1995年に最も新しい更新が行なわれている。)
他に様々な組織が、特許を始める人が良いスタートをきれる、有益な指針書を発行している。アメリカ法曹協会(ABA)の特許、商標、及び著作権に関する法律部門の情報パンフレットは、多くの法律事務所を通じて、クライエントや見込客に配布されている。
特許とは?
近くの法律事務所や地元の図書館でこれといった資料が見つからない場合、アメリカ法曹協会(ABA)の地方支部をあたってみるとよいだろう。それでもうまく行かない場合は、ABAのウェブサイトで刊行物を探すことをお勧めする。
http://www.abanet.org
刊行物のサーチエンジンに直接アクセスしたいときは、次のアドレスへ。
http://www.abanet.org/abapubs
ライセンシング・エグゼクティブズ・ソサエティ(アメリカ及びカナダ)も、数多くの出版物を発行しているので、あたってみるとよいだろう。ここで得られる最も貴重な情報の一つは、「コンサルタントとブローカーのリスト」であり、これは二年おきに更新が行されている。ウェブサイトは次の通り。
http://www.usa-canada.les.org
もちろん、ライセンシング・エグゼクティブズ・ソサエティに、手紙や電話で直接コンタクトしてみる方法もある。
Licensing Executives Society
(U.S.A and Canada), Inc.
1800 Diagonal Road, Suite 280
Alexandria, VA 22314-2840
Tel: (703) 836 3106
Fax: (703) 836 3107
ライセンシング・エグゼクティブズ・ソサエティはまた、米国エネルギー省(DOE)産業技術局の「発明・技術革新計画」と協力して、「ライセンシングの決断」(1998年)という、有益なパンフレットを製作している。ライセンシング・エグゼクティブズ・ソサエティ、または「発明・技術革新計画」のどちらかを通じて入手することができる。
最後になるが、知的所有権の明るい面を扱ったデータや資料を数多く見つけることはそう容易ではないが、図書館で次の本を探してみるのもよいだろう。
マージョリー・スティリング “Famous Brand Names, Emblems and Trademarks”(有名ブランド名、標章、商標名) 1980年、ロンドン。せっかく図書館にいるのだから、少し楽しんでみてはどうだろう。これを読むと、イギリスの大手ビール醸造会社、バス社はいかにしてイギリスの商標登録の第1号、2号、3号までを獲得したのか、よく遊べ(LEGO GODT:デンマーク語)が、LEGO社の商標になった経緯などを、楽しく知ることができる。
事業計画書を書く
数多くのデータや資料が溢れているし、どれもが皆、同じようなことを書いている。事業計画書に関して現在利用できる多くのガイドブックのうち、一読の価値があると思われるものを挙げてみた。
デビッド・H・バングズ・ジュニア “The Business Planning Guide”(事業計画ガイド−自分の事業で成功するプランを練る) (第八版) 1998年。「フォーブズ」は、このガイドブックをお勧めの一冊に挙げている。改訂版数が示すように少し前の時期に書かれたものではあるが、この最も新しいバージョンにおいては、情報も最新のものに更新され,事業計画にインターネットを活用する方法などについても盛り込んでいる。
ジョセフ・R・マンクーソ “How to Write a Winning Business Plan”(勝利する事業計画書の書き方) 1992年。名著の改訂版である。著者の別の著作にもあたってみることをお勧めする。かなり大衆向けの文章になってはいるが、事業計画書の模範例や情報源のディレクトリなど、卓越した補足資料をそろえている。
リンダ・ピンソン、ジェリー・ジネット “Anatomy of a Business Plan: A Step By Step Guide to Starting Smart, Building the Business and Securing Your Company’s Future”『ビジネスプランの分析−賢いスタートをきり、事業を築き、自分の会社の未来を守るための、ステップバイステップガイド(第三版)) 1996年。小規模事業のためのガイドブックや自助マニュアルとして、その価値を広く認められているもののうちでも、最も広く受け入れられているビジネスプランの書き方指南書である。アップスタート・パブリッシング社からの出版。州の小規模事業開発センターに行って事業化計画に関する資料を求めると、勧められるリストに必ずと言っていいほど、この書の名前が出ているはずである。
エリック・S・シーゲル、ブライアン・R・フォード、ジェイ・M・ボーンスタイン、G・ヤング・エルンスト『エルンスト&ヤングのビジネスプランガイド』 1993年。定期的に情報の更新が行なわれている有益なガイドブックの一冊。著者らは、(起業家としてよりもむしろ)投資家の目でビジネスプランを解釈することの必要性を力説している。
すぐにアクセス可能なオンラインキット(チュートリアルを含む)が必要なら、連邦中小企業庁(SBA)が、小規模事業開発センター(SBDC)のウェブページにおいて、そういったものの提供を行なっている。
http://www.sba.gov/starting/indexbusplans.html
資金調達に関する新制度
昨今、「起業する」ということに一般の関心が集まっている。近くの図書館や本屋を覗けば、起業関係の本がずらりと並んでいるのを目にするだろう。ウェブを検索すれば、膨大な量のヒットが得られる。常に言うように、精選された情報をもとにスタートした方が、山積みのデータをかきわけて進むより、はるかに得るところが大きい。
オンラインでアクセスするならば、やはり手始めは連邦中小企業庁(SBA)のウェブサイトが最適であろう。
http://www.sba.gov
SBAへのアクセスにより、多くの情報資料を閲覧することができる。代表的なものとしては、ニューハンプシャー大学がSBAのために運営している、エンゼル投資家のオンライン電子ネットワーク「エースネット」が挙げられよう。アドレスは以下の通り。
https://ace-net.sr.unh.edu
(ここでは、エースネットのURLに、httpsとsがつく。httpsというアドレスは、秘匿対策を取っているサーバーであるという意味であり、暗号化によるセキュリティシステムに対応できるネットブラウザが必要になる。利用はすぐにでも可能である。)
エースネットのリストを転記するのは有料で、しかも誰でもできるというわけではない。それでもやはり、エンゼル投資家と接触をはかりたいなら、SBAで貴重なサービスを提供しているので利用するとよい。ただしその場合、SBAとSEC (米証券取引委員会)のインフォメーションページを良く読み、本当にこのサービスが自分にとって必要なのかを判断してからすることである。
他に、地方の図書館や本屋で入手できそうな、この分野の名著や基本的なものを挙げておこう。
“Entrepreneur Magazine Guide to Raising Money”(アントレプレナーマガジン 投資ガイド) 1997年。アントレプレナーマガジン社刊行。投資の獲得に加え、個々の資金調達戦略の是非について、有益で全体的視点に立った概略的意見を述べている。
ダニエル・R・ガーナー、ロバート・R・オーエン、ロバート・P・コンウェイ “The Ernst & Young Guide to Financing for Growth”(エルンスト&ヤングの、成長する起業のための資金調達ガイド) 1994年。エルンスト&ヤング起業サービスグループによる資金調達戦略ガイドであるというだけでなく、税金面まで含めた対策や、株式による資金調達に対する証券取引委員会への報告規定まで事細かに説明しており、非常に有益な一冊である。州及び国家ベースの資金援助プログラムについても紹介している。
デビッド・J・グラッドストーン “Venture Capital handbook”(ベンチャーキャピタルハンドブック) (第二版) 1988年。名著としての地位をすでに確立しているとはいえ、いまだに強い説得力を持つ一冊であり、資金を調達する際に生じる問題をすべて検証している。正式なベンチャー投資家をいかにして探し出すか、またその結果得られるシビアな現実についても語っている。読むと泣きたくなるような話もあるが、そこからしっかり学ぶことである。「ハウツー」材料を多く取りこみ、事業提案を行なうことの重要性について強調的に取り扱っている。
セス・ゴディン “The Boots trapper’s Bible: How to Start and Build a Business With a Great Idea and (Almost) No Money”(自己資金で事業を始める人のためのバイブル−すごいアイデアで(ほとんど)お金をかけずに事業を始め、大きくするための方法) 1998年。融資の専門家は、自己資金調達についてほとんど注意を払っていないのが現状である。著者ゴディンは、経験豊富な起業家として、いくつかのベンチャーの起業に関わり、成功を収めている。「自己資金で事業を始める人のバイブル」は、1986年の創業当時の自己体験をもとに数多くの示唆や助言について語り、自身がスターバックスやボーズ社、デルコンピュータなどから得た深い洞察を提供している。
ケイト・リスター、トム・ハーニッシュ、キャサリン・E・リスター、トーマス・D・ハーニッシュ “Directory of Venture Capital”(ベンチャー資本家人名録) 1996年。始めようとする事業が投資家を惹きつけることができるか、その判断のための指針書としてかなりお勧めの一冊である。600人を超える意欲的なベンチャー資本家(1996年当時)の氏名と住所が載っている。発行者であるジョン・ウィレー父子は、意欲的なベンチャー資本家人名録のコンピュータ用ディスクも宣伝販売している。
スタンレー・E・プラット(編) “Pratt’s Guide to Venture Capital Sources” (プラットの、ベンチャーキャピタル情報源ガイド)
(第23版) 1999年。プラットの情報ガイドは定評があり、定期的に最新情報への更新が行なわれている。高価な本でもあり、ビジネス関係の書物が多く揃っている図書館で探してみることをお勧めする。
付録3
法的側面の考察
知らなかったでは済まされない
他のどこよりも、アメリカ社会は、私事を整理し論争を解決するのに、法律に依存している社会と言える。(イリノイ州だけで、実に日本の総数よりも多い弁護士がいる。)法律は、アメリカの社会生活のすべての側面においてそうであるように、ビジネスにも深い関わりを持っている。
発明家も、実業家と同じように、自分たちの活動における法的な側面の最新情報に常に精通し、適切なところで情報に基づいた判断を行なう必要がある。徹底して法律に固着し、自らの利益のために利用しようとすれば、当然時間も費用かかり、厄介なものにもなろう。さりとて、法律面をおろそかにすれば、キャリアを失うような破滅的な失態を招くこともある。アンブローズ・ビアスはいみじくも言ったものだ。「訴訟は、機械のようなものだ。豚として入っても、吐き出されるときはソーセージになっている。」
考えられうる問題点のリスト
法的助言を与えることができるのは弁護士だけである。弁護士が必要になるような状況が起こり得る分野・領域を次に挙げておく。
特許、著作権、商標、企業秘密
自分の利益を守るのが第一である。素人にはほぼ扱えない領域と言える。
賠償責任
作業場で、もしかしたら従業員が突き錐で手を突き刺すかもしれない。工場を所有していれば、従業員の一人がけがをするかもしれない。配達員が、荷物積み下ろし用のプラットホームから転落するかもしれない。自社製品でけがをする人がいるかもしれない。こういった場合、欠陥設計や不良製品、あるいはその両方に対し、賠償責任を問われる可能性がある。
事業構造
法人化を考えているだろうか?もしそうであれば、その形態は?場所は?恐らく合資会社が、利益に資するところが大きいであろう。
社内持ち株制度についてはどうだろうか?(なによりもまず)証券取引委員会(SEC)の担当者に会うことである。
法規と規制
国家、州、あるいは地方自治体ベースで定められている規制や法規、安全性や健康、環境に関するものなど、法規制のリストは限りなく続く。リストは頭に入っているだろうか?これらを遵守しているか?必要なライセンスはすべて取得しているだろうか?
労働力
気に入った人だけ雇用するというわけにはいかないし、賃金・労働時間など、労働者の望む通りにするわけにはいかない。ある日突然に、どこかの労働団体の職員がやってきて、そちらの被雇用者を組合に組織したいと言われたら、どうすべきであろうか?
税金問題
税金は企業にとって大きな問題である。財産税や地方、州、連邦の(対企業、対個人の)各所得税、物品税などの支払いが派生する。また、適用した時、場所に応じて、それぞれ一連のライセンス手数料を支払わねばならない。さらに、州や地方によって、売上税をも掻き集めて支払わねばならない場合もある。
人を雇えば、従業員に対する社会保障や所得税の分も考慮しなければならない。それからもちろん、働く人々の給与もある。
一方で、やり方を知ってさえいれば、これらの義務をいくらか法的に免除、もしくは軽減されるよう取り計らうことも可能なのである。ある種の労働者を雇い入れたり、機器を購入するなどの方法により、税金負担を軽くすることができる。
税法はまた、投資家に対して動的な影響を及ぼす。例えば、キャピタルゲインや税金逃避の手段に関する法規制が変わると、投資家たちは企業家のもとへ引き寄せられる。一方、マイナスの方向に動けば、彼らは一夜にして去ってしまうこともある。現状の法規制はどうなっているのか知っておくだけでなく、近い将来にどういう方向に動いていくのか、その予測についての感覚も十分養っておく必要があるだろう。
結局は、初期段階にある企業において資金調達する一般的なやり方は、主な幹部に創始株を持たせる形にすることである。うまく行けば彼らもともに潤うが、だめな場合は、彼らに、生きたまま食われるような思いの納税書のみを残してしまう結果となる。
ライセンシング
「ライセンシング」の項を参照のこと。
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自分で製品の特徴をアピールしても説得力はない。証明してみせろと言う人もいるだろう。
これで十分か?
答えはノーである。事実、これまで述べてきた事項だけでは、これから起こりうる法律上の不測の事態をすべてカバーしきれているとはとても言えない。ご存知のように、「自由企業」とは、何でもしてよいという意味の自由ではない。ここで言う自由とは、法の束縛を受ける自由な選択の権利のことなのであり、やはり他の人々と同じように、適切な法の拘束のもとで生き残っていかねばならないのである。
弁護士を雇おうと決めたら、人選は慎重に行なうべきである。自分の必要とする業務領域に豊富な経験のある人がよいだろう。よく評価を聞き、紹介してもらい、その上で、自分の選んだ人と面接をして、知りたいことを聞いてみるとよい。返ってきた答えに満足がいかなければ、別な人にも会ってみることである。よくできたパンフレットの類に惑わされてはならない。それらの印刷物が伝えようとしていることは何なのかを、直接聞いてみるのである。当の本人なら、それらの美辞麗句をわかる言葉で的確に言いなおすことができるはずであるし、強く求めれば、きっとそうしてくれるはずである。
特許のみに関して言えば、弁護士にすでに相談しているというのは大きな強みである。まだであっても、自分の専門家チームに弁護士を一人入れることが必要であるということは、恐らく自明のことであろう。慎重に、的確な人を選ぶことである。そうすれば、きっと選ばれた人は、チームの最も大きな強みの一つであることを、自ら証明する働きをしてくれることだろう。
付録
4
事業化計画書
事業化のためのプランニングを行うということは、新技術や新製品のアイデアが、どれだけ事業的なポテンシャルを持っているかを評価するための道筋を作っていくということである。正式なプランニングにおいては、自分のアイデアの事業的な可能性を評価し開発していくのに必要な技術面のデータや、市場に関する情報、組織作りのための資料などを整理していくことになる。正規の書類として計画書を作成してみると、思考を整理するのに役立つだろう。また、自分のプロジェクトへの関心を惹きつけるための資料として活用することもできる。
事業化計画の第一歩は、まず整理するということである。事業目的を明らかにする声明書を草案し(実施要項)、現時点で推定される作業を明らかにし(プロジェクトの概略)、利用できる資源について詳細に検討する(内的要因)という作業が必要になる。これらの基礎作業により、自分の製品アイデアを詳しく検討することができ、さらには、自らの発想に基づいた、全く新しい製品やサービスにつながっていく場合が非常に多い。こういった基本的な正しい道筋をたどることにより、自分のアイデアを活用する場合に必要となる新たな資源や協力体制を獲得する(外的要因)こともできよう。
計画のプロセスにおける最終ステップは、可能性のある製品形態を選別し優先順位をつけて、アイデアごとに、実効力のあるプランを練ることである(展開計画)。展開計画を作成することにより、真に事業化プロセスに導入していける製品の定義が明らかになってくる。この事業化における計画の最終段階が、そのまま正式な事業計画書へと直接に発展していくことがきわめて多い。
上で述べた事業化計画の基本概要をうまく使っていくことにより、必要な情報を互いに結び合わせ、リソースにおけるギャップを確認することができる。プランニングの初期段階においては、この概要のために必要な情報がすべて入手とは限らない。
事業化計画書概要
実施要項
実施要項は、きわめて短くまとめなければならない(2ページ以内)。その中で、鍵となるテクノロジー、市場、組織関係などについて、自分の思い描く概観を広い視点から盛り込む必要がある。自分のプロジェクトに必要なもの、そしてプロジェクトの長所に重点をおいて書くことである。ただし、長所の方を先に書くことを忘れてはならない。プロジェクトの持つ利点さえ明らかになれば、必要とするものについては、おのずから基礎的な理解を得られるであろう。
経営管理の要約を書くにあたっては、どの書式形態を用いてもよい。ただし、次にあげる四つの質問に対する直接の答えとなるものを、必ず内容として盛り込まねばならない。
・技術や製品をどのようにして開発していくのか?技術の移転やライセンスについてはどう考えているか?また、事業的な成功をいかにして確保していくか?
・プロジェクトの核となる技術や製品の事業的価値と可能性について、見こみのある相手に、どうやってアピールし興味を持ってもらうのか?
・ プロジェクトのタイムテーブルはどのようになっているか?
・ 自分と組織は、どのような理由でこのプロジェクトに関わっているのか?
プロジェクトの概略
自分の視点から、事業化に関する全体像を明らかにしてみることである。チームとしてこれまで何をやってきたのか?資源や目的という点に関して、このプロジェクトは今どういう状況にあるのか?どうして、特定の研究開発分野において、このプロジェクトに焦点があてられているのか?撤退する場合、考えられうる時点はどこになるのか?
内的要因と製品用途の分析
組織上の到達目標、事業の目的や使命を明らかにすれば、新しい製品や技術を社内で開発したほうがよいのか、ライセンスを考えるべきか、もしくは他の協力形態をさがすべきか、その答えがはっきりしてくる。多くの場合、新しい製品や技術は、複数の形態に対してオファーできるだけの質は備えているものである。従って、最も優れた事業化戦略を実現することができるかどうかは、技術そのものよりも、選択した製品の形態に大きく左右されることがきわめて多い。
もしも自分のプロジェクトが、親組織(例えば、親企業、ジョイントベンチャー、研究機関)に大きく影響されるような状況であれば、プロジェクトの到達目標や使命、目的を、より広い組織的観点からもう一度じっくり考えてみなければならない。自分のプロジェクトやプランが、親となる組織の持つ企業使命とどのように結びつくのか、はっきりと提示する必要がある。どのような係わり合いや資源をすでに得ているのか、親組織に求めるものは何だろうか?
一人でのスタートであれ、ファミリービジネスや企業の形態での事業立ち上げであれ、組織における内的要因については、いくつかの製品用途の可能性に照らして、じっくり考えてみる必要がある。計画におけるこの段階において、ベンチャリングかライセンシングか、あるいは他に協力を求めるのか、その判断の答えが出てくることになるだろう。
外的要因
事業化計画において、資源や協力先などの問題を考える段階である。目的は大きく分けて二つある。まず、新技術に関して見込みのある製品形態を定義し、選別すること。次に、それらの形態ごとに、個別に適切なパートナーを特定することである。
技術の用途ごとの個別展開計画
事業化計画の最終段階として、製品の形態ごとの技術開発及びマーケティングプランが個別に必要になる。前項で述べた選別プロセスにより、必要になるプランの数と優先順位ははっきりしているはずである。
プラン例の簡単な概略を下に示す。
A. プロジェクトの概観(例えば、製品の用途、市場ポテンシャル、事業ポテンシャル、競争上のメリットなどの概略)
B. 市場分析
C. 製品の定義(例えば、ユーザーのニーズに関するマトリクス)
D. パートナーの評価(必要であると思われる場合)
E. 知的所有権
F. 事業的展開に関する分析
G. 展開によるリスクの分析
H. 次に何をすべきか
付録 5
事業計画書
現実的に言って、多くの仮定や思考を繰り返し、幾度も判断を重ねることによって、初めて本格的な事業計画に着手することができる。自分のアイデアを厳密に検討し、向かうべき方向を定めなければならない。ここまでは、事業化計画の段階で行なうべき仕事である。どういう事業を展開していきたいのか定まった時に、初めて計画の段階で集めた資料を事業計画の枠組に投入していけるのである。事業計画としてベストなものは、説得力を持つ書類の形態をとる。計画書という書類形態をとることにより、計画における前提条件、事業の目標や目的、リソースなどについて詳しく述べることができるのである。それらを適切に配置したら、今度は数値をあてはめて考えるという重要な作業を行なうことになる。その結果、自分のプロジェクトが現実に適ったものであるかどうかがわかってくるだろう。プランニングの第一のルールを忘れてはならない。「ガラクタを入れ、ガラクタを捨てよ。」
事業計画の指針書については、図書館や書店、オンライン、ディスクなどで、多くのものが入手できる。当冊子の参考文献の項でも、いくつか有効なものを見つけることができるだろう。事業計画のために多額のお金をかけるのは(指針書の購入であれ、コンサルタントの費用であれ)、全体的なフォーマットについて基本的な考えがまとまってからにするべきである。頭の中に全体的な構造がまとまったら、小規模事業開発センターの地区のオフィスへ足を運ぶと(電話帳の州の官公署欄で住所、電話番号をチェックのこと)、一定の時間内で無料相談を受けられる。SCOREアソシエーションの地方支部でも同様のサービスを行っている。これらの組織が後援する、事業計画のためのワークショップやセミナーもよく行なわれている。
しかしながら、まずしなければならない仕事は、事業計画書の基本的なアウトラインをよく知ることである。下に、一般的な書式形態を示す。
事業計画の概要
表紙
表紙の重要性を見落としてはならない。表紙には、最も重要な情報である連絡先を記載する必要がある。事業名、住所、電話番号、代表者氏名、計画の日付などを漏らさず書くことである。企業の目的について簡単な(1〜2文程度の)要約をつけてもよいだろうし、企業や事業プランに関して、何かこれと思う情報を簡潔に加えておいてもよいだろう。
実施要項
実施要項は、きわめて短くまとめなければならない。1ページ以内に収まるのがベストであり、2ページを超えるべきではない。なおかつ、短い中に、プロジェクトの純粋な概観を盛り込み、読み手に、計画書の他の部分において期待されるものを伝えなければならない。アイデアの長所に重点を置くことは言うまでもないが、プロジェクトにとって必要なものや障害となりうるもの、その他取り組んでいかなければならない問題点などを要約して記述することを避けてはならない。経営管理の要約に絶対に盛り込まなければならないのは、事業の主要目的、開発しようとする製品やサービスの詳述、マーケティングの目的に関する記述、さらに、読み手が資金関係の項に移ったときに予期するであろうものについて、多少の示唆を含ませるような記述をしなければならない。どんな厄介なものであろうと、抱えている問題があれば、できるだけ率直かつ誠実に打ち明け、それらをどのように解決していくのか明らかにするよう努めなければならない。事業計画書においては、主要なセクションについての概要をまず決めてから、経営管理の要約を書いたほうがよい場合が多い。
目次
目次は、1ページ以内に収まることを原則とし、優れた事業計画書となるには欠かせない要素である。読み手が、見たいページをすぐに見つけられるように、内容を明瞭に表わすものでなければならない。目次が次のページに渡ってしまわない程度に、できるだけ副題をつけるようにする。事業計画書を読みなれている人は、まず最初から最後まで通しでは読まない。すぐに資金の項目に目を通す人もいるだろうし、経営陣やマーケティング戦略から読む人もいるだろう。自分が真に望むものが得られないことがわかれば、たいていの人はそこでやめてしまうことになるのである。目次は、多少の注意を払って作成すべきであろう。
事業の来歴
事業(またはプロジェクト)の来歴は、事業計画書において、きわめて重要な部分となる。新しく立ちあがったベンチャーとして、またはすでに存在する企業として、必要に応じるよう、工夫しながらこの部分をまとめていく必要があろう。事業の歴史が浅い場合には、どのようにしてこのベンチャーが実現したのか、現在の組織の状態、創立者らの履歴などについて、読み手に説明することだ。もし、すでに企業となっている組織におけるプロジェクトであれば、これまでの主な業績について、短く、必要に応じて詳しい補足資料などを付録の部分で交えながら説明する必要がある。
多くの場合、読み手の信頼を勝ち取るのは、これまでの業績である。自分のプランに対して投資をしてもらおうとする時は、特にこれはあてはまる。事業計画を読む人々は、書いた本人とその背景について知りたがるものである。経験が大きくものを言うのである。
事業の定義
これから行なおうとする事業またはそのプランは、どのようなニーズに合うものなのか?ニーズの主体はどのような人達なのか?計画している事業を、これらのニーズにどうやって合わせていくのか?このセクションにおける答えへの質問は、いたってシンプルである。この部分の作成においては、友人や信頼できるアドバイザーらの意見を求めるとよい。計画の輪郭がかなりはっきりしてくるだろう。
マーケットの定義
見込まれる市場の規模や位置付け、目標とする市場シェア、どのようにそのシェアを獲得するかについて、記述する箇所である。さらに、ターゲットとする顧客層についても、詳しい輪郭づけを行なわなければならない。また、製品の競争力についても、この部分で述べる必要があろう。率直に真実を述べることである。競合者がいるということは、適切な対抗策を打つことができないということではない。どのようにして、競合者に並び打ち勝っていくのか?どうやって市場に進入していくのか?これらの点について、考えを明らかにしていかなければならない。やはり、事業化のために何らかの方法で広告や販促が必要になる場合には、自分の計画しているところを簡潔に述べることである。事業計画を読む人々は、プロジェクトの市場戦略やその計画について、細心の注意を払っているものなのである。
開発しようとする製品またはサービスの詳述
この部分は、マーケティングに関するセクションの前でも後でも、どちらに置くこともできる。どちらにするかは、プロジェクトの内容次第である。ここでは、製品の定義を明らかにする必要がある。売ろうとしているのは、いったいどんな製品もしくはサービスなのか?今、研究開発段階のどの辺りにいるのか?製作能力、もしくは組立て性能を確立するために、これまでどんなことを行なってきたか?適切な知的所有権の保護手段はとられているのか?さらに計画しているものはあるか?製品やサービスについて詳しく述べる他に、こういった疑問に対する答えもここで提示しなければならない。ただし、技術的なデータや資料については、補足資料に属するものである。この部分で述べるべきものではない。
実施要項の構造
事業計画書を読む人にとって、多くの場合、これが目次で真っ先に探す(そして最も重要な)項目である。事業計画書を提示する相手は、常に、責任者は誰なのか、物事はどのように処理されるのか、どのようにして成長しようと考えているかなどについて知りたがるものである。プロジェクトの鍵となるスタッフは?有能なプロジェクトチームが適切な位置に配置されているかどうかを示す、なんらかの証拠資料はあるか?
すでに企業として立ちあがっている場合、代表者、組織の構造、従業員の配置、雇用方針、報告経路などの、主要な背景資料について、その概略を明らかにする必要がある。ここでも、組織図、従業員方針、またはそれに準じる書類などの詳細については、補足資料の項に入れるべきである。こういった基礎的な事項について触れない限り、ここでの作業は終わらないことになる。事業計画を読む人は、こういった事項をいかにしてまとめていくかに興味があるはずである。新製品をプロセスに導入していくのは、チーム作業であり、プロジェクトに関わっているチームやその役割分担、将来的な構造について、ここで詳しく述べておく必要があろう。
目的と到達目標
ここは、この事業において自分が本当にやりたいことを明らかにする部分である。自己資金による事業を考えているだろうか?もしそうであれば、ここは、自分にとって最も重要な部分となるはずである。自分自身に、正式なブレインストーミングの機会を与えるのである。急成長を見越して、株式による資金調達(もしくは多額の資金の借入れ)やその先のライセンシング契約まで考えているならば、この部分に盛り込む内容がそのまま、希望する相手に自分の事業について提示する機会となろう。
どの程度まで詳しい内容を盛り込むかは、プロジェクトの計画と戦略とによって異なる。忘れてはならないのは、あまり簡単にならないよう、またあまりにも内容過多にならないよう、ここでバランスを取らなければならないと言うことである。自分の計画を明示してしまう前に、必ず、信頼できる友人やアドバイザーに草稿を読んでもらうことである。ここで間違いのない作業を行なうには、必ず何らかの援助が必要になるはずである。(事業の目的に加え)適切と思われる時間の枠組みや、最もターゲットとなり得る層、短期間における主要な目標などについて、必ず触れておかなければならない。最後に、自分の考える戦略や戦術が、企業にとってなぜベストであると言えるのか、必ず説明を行なうことである。
資金に関するデータ
事業計画書を提示すると、実施要項を最初に読まない人はここに目をとめる。ある意味では、この部分は事業計画のクライマックスと言えるだろう。その他の項で、実際の数字を考えてみる基礎となる理論的根拠や調整されていないデータは提示した。では、近い将来の作業に要する資金はどのように調達しようと考えているのか?ここでは、バランスシートの予測、キャッシュフローの分析、収入の概算、予想される資金調達方法の変更、損益分岐点分析(CVP分析)などについて、予測されるところを述べなければならない。小規模事業の場合、ほとんどのケースにおいて一番肝心なのは、企業自身が予測する損益分岐点である。経験の豊富な投資家や分析者は、この項を、特別な注意を払って読むはずである。でき得る限り詳しい分析を行ない、それを報告するデータをつけることである。経理方針や、計画上の主な前提条件などについて、明らかにしなければならない。
仮予測が出揃ったら、すぐにも、仮の資金計画書に実際に数字をあてる作業を始める必要がある。我々は常に、最初の計画は自分で立てるよう勧めているが、この項は、遅かれ早かれ専門家の意見やアドバイスが必要になってくるのは目に見えている。準備が整ったら、専門職である会計士に相談することである。彼らは、資金計画を明確に、かつ首尾一貫した専門的な手段で提示することにかけては、それこそ値千金の働きをしてくれる。いろいろ情報を集め、それでもなおアドバイスが必要な場合には、小規模事業開発センター(SBDC)やSCOREアソシエーションの地方支部に足を運んでみるとよい。資金計画をまとめるにあたって、どの段階で、より費用をかけて専門的な助言を導入していったらよいか、的確な意見が得られるだろう。
補足資料
必要であれば、補足資料や補助的なデータについては、計画書に付け加えて構わない。ただし、計画書のメインの項目において読み手の関心が得られなければ、この部分まで目を通す人はまずいないだろう。従って、まず計画書の主要部分を、できるだけ簡潔に、理論を整えて記載することである。それだけで読み手の関心を得られる自信に欠ける場合、補足事項に有効な資料をつけるとよい。小規模事業に分厚い計画書では、大言壮語であるとか、明白な失敗という印象を残す。それだけが、この箇所において留意しなければならない点である。
計画全体を通して見た場合、真に読み手を惹きつける鍵は、情報や理論の整理の仕方にあると言えそうである。適切なものを適切な箇所に配置し (すなわち、これまで述べてきたアウトラインの順序に従うということである)、それらを、自分だけでなく読む人もすぐに見つけられるように、はっきりと表示することである。各項目の内容や、読み手がそれをどのように活用したらよいかについて、簡単な説明をつける必要もあるだろう。首尾よくハードルを越えたら、すなわち、自分の計画に関心を示す人が現れたら、そこで初めて、計画書の詳細な検討に入るのである。整理の仕方、プレゼンテーションの仕方には、十全な注意を払ってしかるべきである。補足資料の項において、整理の仕方がまずいためにずさんな資料となり、それによって必死に勝ち取ってきた話をだめにしてしまったら、それこそ多いに恥じ入る結果となろう。